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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.13 過去を繰り返す事なく

 目が覚めると知ってる天井が視界に映る。

 頭が少しクラクラして今置かれている状況がわからない。

 ゆっくりと上半身を起き上がらせると、どうやらベッドで寝ていたようで丁寧に布団も被せてある。


「ここは……」


 声を出すと同時に倒れる前の事を思い出し、状況が理解できた。


「お前の部屋だよ」


 理解した時のと同時に教えてくれる声があった。

――キル。

 腕を組んで椅子に腰掛け、珍しく足も組んでいる。

 いつも1番会いたくて、今1番会いたくなかった。


「キル、怪我は?」


「ない」


「ならよかった……えっと」


「なんだよ」


 淡々を答えられ、次に出す言葉の候補がもうない。

 眉間に皺の寄った顔に真っ直ぐ見られ、思わず視線を外す。

――今日はこんな事ばかりだ。


「……怒ってる?」


 それで絞り出した言葉がこれだ。

 情けない。

 怒ってるに決まってるだろ、とキルは静かに答える。

 何言ってるんだろ。

 怒ってるのは当たり前なのに。

 悪魔型と契約してるのを知られて、反転目も見られて、敵を撃退した。

 あの時と一緒だ。

 あの時の光景が頭から離れない。

 センがいないから心の声が聞こえる事はないけど怖い。

 何を思ってるのかわかるのは怖い。

――わからなくても怖い。


「やっぱり僕が悪魔型と契約してたから? ……怖かった? もしかして軽蔑した? だったら――」


 言葉が止まらない。

 キルの口から何が出てくるかわからなくて話すタイミングを与えないように自分が話し続ける。

 不意にキルの方から大きいな音がする。

 その衝撃で言葉が止まり、やっとキルの方を見る。

 突然立ち上がったようで椅子が倒れている。


「――ッそんな事思うわけないだろ!!!」


 堰を切ったように、声を荒げる。

 顔を見ると乱暴な口調とは裏腹に思い詰めたような表情をしている。

 そしてそんなに離れてもいない距離を少しずつ詰めてくる。


「何年一緒にいると思ってる! そりゃお前の方が先に孤児院を出たから何年か会ってない時期もあったが、それでも……俺が怒ってるのはお前が俺のこと信頼してくれてなかったからだよ! ……困ってる事があるなら言えよ。お前の、ソルの事教えてくれよ……ソルは自分のことを何も話さないから、俺は出会ってからのソルしか知らない。なぁ――」


 ついにベッドの真横まで来られ、悲しそうな顔のままじっと見られる。

 キルにそんな顔させたくなかった。

 キルはそれ以上何も言わずただ立っている。

 よく見ると拳は強く握られ、僅かに震えている。


「……ごめんね。キルがそこまで言ってくれるなら話すよ。センと会ってからキルと会うまでの事――」


 キルに座るように促すとベットに座る。

 椅子に座ってと言ったつもりだがまあいいか。

 一息ついて話を始めた。

 途中、口籠る事もあったがキルは静かに話を聞いていた。

――怖い。

 怖がられるのが、拒絶されるのが。

 たまにキルの顔を気づかれないように見るがずっと変わらず真剣に聞いていた。


「――それからはキルも知ってる通りだよ」


 話が終わり、深呼吸をする。

 次は何を話そうか。

 沈黙が耐えられない。

 そんな事を考えている内にキルの方から口を開く。


「辛い話させて悪かったな。だが何でお前が他人と関わるのを拒絶するのかがわかってよかった。話してくれてありがとう、ソル」


 キルの顔が緩む。

 その顔は今日初めて見たかも知れない。

 こんな最低な話でそんな顔してくれるなんて。

 キルは嘘をつける子じゃない。

 特に顔は正直だ。


――キルは僕の事を拒否してない。


 これは話さなければ一生気づけなかった。

 気づいてても自分で否定して一生あのままだった。


「いつかは言わないといけなかった事だったんだよ。でもキルがきっかけくれなきゃ僕はきっと一生言えなかった。ありがとう。キルの事も信頼してないんじゃない。僕を助けてくれるのはいつだってキルだから。昔も今も」


 ソルの顔も緩む。

 この話を話してよかったと思う日が来るとは思わなかった。

 忘れたい過去でしかなかった。

 センにも今度ちゃんと謝っておこう。

 そんな事を考えているとキルが突然俯いた。

 そして何かを呟いたように見えた。


「俺はソルに何回も救われてる」


 その声はソルに届きはしたものの意味を理解できるほど聞こえてはいなかった。

 さっきまで喋っていた人とは別人に思えるようなか細い声。


「何か言った――待って、キル何してるの」


 何か呟いたと思ったら次の瞬間、徐ろに靴を脱ぎベッドに上る。

 そして掛け布団越しだがソルの足の上に座る。


「抱きしめてやろうと思って」

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