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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.12 平穏のち暗転

 混乱が混乱を呼び混乱しか残らないこの惨状を一体どうしてくれるんだろうか。

 センがあの金髪と兄弟と聞こえた気がする。

 センがレイに近づいていく。

 ジリジリ後退りをしているがセンから逃げられるわけもなくすぐに詰め寄られる。


「えっ。セン兄が前言ってた契約者ってあれ?! だいぶ前に『可愛げがあった契約者が俺のせいでグレた』って落ち込んでた奴でしょ? 確かにグレてて物騒だけどマジで――」


「余計な事をいうな」


 センがレイの頭を殴り、そのお喋りな口を閉じさせる。

 心の声が聞こえるソルにとっては口が塞がっていようがいまいが関係ないのだが。


「それよりどうやって現世(うつしよ)にきたんだ。俺みたいに契約者がいるなら呼び声に同意すればすぐに転送されるが、それができないお前がどうやって……契約者のいない奴が自分の意思で現世(うつしよ)に行こうとしても現世(うつしよ)の門の番人に止められるというのに」


「えーっと……こうやって」


 レイの体は偽キルから戻った時のようにジャギーに包まれ、センの姿に変わる。

 センの顔に似つかわしくなく困り顔で情けない。

 そしてその姿を見たセンに再び殴られる。

 先程より強めの音がする。


「いっ〜〜たぁ〜。だって試しにやってみたら通してくれたんだもん!」


「馬鹿が! 魔術使って門番を騙すなんて……バレたら実刑だぞ!」


 一瞬ジャギーに包まれレイの姿に戻っている。

 殴られた拍子に元の姿に戻ってしまったようだ。


「なんだあれケイル……じゃないよな? 魔術って聞こえたが」


 キルに突然話しかけられ肩をビクつかせる。

 ソルの横に立つ態度は以前と変わらないようで、キルに分からないように胸を撫で下ろす。

 心の声も話している事とほとんど同じ。

 怖がられると思ってた。

 もう話してくれない事も覚悟してた。


「……うん。悪魔型は1人1つ能力を持ってて魔術って呼んでるみたい。猫型だったら夜目が効いたり、身軽だったりするでしょ? 悪魔型はそれが飛行能力と魔術なんだよ。センの魔術は行ったことある場所ならどこにでも行ける『空間移動』、あの金髪は『変身能力』みたいだけど」


「そういうことね」


「ミル! 大丈夫か?」


 キルの反対側にミルが現れる。

 伸びをしながら兄弟喧嘩を見つめている。

 心の声は何やらごちゃごちゃしていてよく聞き取れない。

 こんな事は初めてで少し戸惑う。

 こんな性格でも戦闘力の高いミルの事だ、魔術とかの事で考えを巡らせてるんだろう。

 そう自己完結してミルの方を見る。

 ミルはそれに気づいていつも通りニコっと笑う。


「やっと薬が抜けてきたよ。フォミとフィーももう動けるみたい」


「よかった……」


 キルが浅くため息を吐いて肩の力を抜く。

 後ろを見ると2人は一緒に地面に座り込んでいるものの意識ははっきりしているようだった。

 本当にただの麻痺毒……麻痺薬? でよかった。


「ソル」


 センがソルを呼ぶ。

 右手で涙目のレイの服の首根っこを持っている。

 そのままズルズルと引きずっていくようだ。


「俺は愚弟を連れて帰る。もう戻るぞ」


「うん。お願い」


 センが左手を前に出すと黒い空間が現れる。

 魔術の空間移動。

 レイは不正に現世(うつしよ)に来たから正規の方法では戻れないのであろう。

 初めてセンに可哀想という感情を向けた。

 久しぶりの再会で少し名残惜しい気もするが、あの弟にここにいられたら困るのでしょうがない。


「あ、言い忘れてたが俺を呼ぶのが久しぶりだから、忌力がオーバーヒートして倒れるかも知れないから気をつけろよ。じゃ」


 閉じかけたゲートから一瞬だけ顔を出し足速に要件を伝えるとゲートは消えてしまった。

――ん?

 なんでそんな大事な事を帰り際に言うんだ。


「え、ちょっと待っ――」


 ゲートが消えたと同時に耳の雑音は消え、左目の反転も元に戻る。

 そして視界が揺れ、体の力が抜けていく。

――駄目だ、倒れる。


「ソル!」


 キルの声だけははっきり聞こえたが、もう立ち上がる事はできなかった。

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