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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.5 無力感に浸る間も無く、はてな

 眩しい。

 顔に光が当たってうっすらと目を開ける。

 ぼんやりとしてる意識の中で誰かの声が聞こえる。

 知らない女の声だ。

 少しずつ頭が冴えてきて声も正確に聞こえるようになる。

 そして手足を縛られているに気付き、目だけ動かして辺りを見回す。

 声の主は木箱のような物を挟んで少し向こう側にいるようでお互いの姿は見えないはず。


 ……ここはどこだ?

 桃源郷じゃないな、壁は木っぽいしどこかの小屋に運ばれたか。

 何でこんな事に……

 あいつに負けたからか。

 あいつに近づいた瞬間首筋に何かが刺さって気づいたらこの状態だ。

 毒の類を受けたんだろう。

 やっぱり俺はまだ弱い。

 また皆に、ソルに迷惑をかけてしまった。


 手足を縛っているのはただのロープ、千切ろうと思えば簡単に千切れる。

 しかし行動に移る事が出来ないほど自分が情けなくて仕方がない。

 負けた上に捕まるなんてただの足手纏いだ。

 顔向けできない。


「はぁ、もう嫌になるわ! レイが契約者欲しいって言うから手伝ってあげたのに、結局連れてきたのは女の子じゃない!」


 近くにいる女、おそらくあのコウモリみたいな男の仲間だろう。

 その子の声が聞こえる。

 契約者……? というのはよく分からないが俺が女だと言う事は敵方にバレているらしい。

 悔しさで口を真一文字に結ぶ。

 手に力が入りロープが悲鳴をあげる。


「まあそうよね……あの女たらしが男の子連れて来るわけないわ。それに何も説明してくれないし……私は一体どうしたらいいのよ、もう……」


 敵にも何か手違いがあったようだ。

 そういえばあの男、レイか?

 あいつがいない。

 もしかして皆の方に行ってるんじゃ。

 どれくらい寝てたかわからないが早く皆に相手が毒系のケイルだと伝えないと。


 気絶した振りをやめ、ロープを引き千切る。

 起き上がろうとした時、足元に柔らかい感触がした。

 まずい、敵がまだ潜んでいた。


 ピャ


 小さな鳴き声が聞こえ足元を見ると、柔らかい感触の正体はハクだった。

 再び一声鳴き、足に擦り寄るとそのまま肩の上に飛び乗る。

 ハクがいるということはソルが帰ってきているということ。

 急がなくては。

 問題はどうやってここからでるか。

 まどろっこしいのは得意じゃない。

 ハクを一撫でし立ち上がる。


「おい、そこのお前」


 俺にできるのは正面突破の一択。

 立ち上がってみると、小屋にいるのはローブを被った声の主ただ1人だった。


「え。な、何で起きてるの? 私あなたみたいな子とは部が悪いんだから! ちょっと待って」


「お前に構ってる暇はないんだ。ここから出させてもらうぞ。邪魔するなら――」


 相手が何か仕掛けてくる前に詰め寄る。

 俺には近接攻撃しかできないからそうするしかない。


 何の躊躇いもなく近づいていくキルにローブの女はあたふたと右に行ったり左行ったりしている。

 そして動きを止め、こちらを向く。

 くるか。


「待って! 私弱いから! あなたを止めるの無理だから! レイに隙を見て逃げたって言ってくれるなら邪魔しないから! 私が引き下がったの言わないで!」


 止まってと言わんばかりに両手を前へ突き出す。

 一体どういうことだ?

 武器は持っていないようで、ハクの方を見るとハクも頷く。


「おお……じゃあ行くぞ……?」


「どうぞ!」


 ご丁寧に出口の扉の方へ手を向けて誘導してくれる。

 キルは頭にはてなマークを浮かべながら扉へ向かう。

 途中、奇襲を警戒して何度か後ろを振り返ったが本当に何もしてこない。

 小屋から距離を取ると、ハクが肩から飛び降りキルの前に立つ。

 そして一鳴きし走り始める。

 着いてこいということだろう。

 キルもハクの後に続いて走り出す。


 小屋から出てきた女は立ち去るキルを見送ると盛大にため息をついた。

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