No.2 あの子はそんな顔しない
みんな馬鹿みたい。
こんなのがキルだっていうの?
冗談もほどほどにしてほしい。
「ソル?! どうしたの?!」
「ソル?」
ミルとフィーがソルを止めようと近づいてくる。
「みんなわからないの? これ偽物だよ。キルじゃない」
「おいソル何言ってんだよ。俺はキル――」
イラつく。
話し方が、癖が、動きが、仕草が、反応が。
姿形がキルでも全部がキルじゃない。
それなのにまだシラを切ろうとしてる。
「それ以上その姿で喋ったら何するかわからないよ」
ほらすぐに黙る。
半端な覚悟でキルに化けるなんて許せない。
壁に刺さっている固有武器はそのままにもう1つ固有武器を出し、握りしめる。
そんなソルの様子を静観していたフォミが口を開く。
「……さっき言おうとした事なんだど、匿名で連絡があったの。正体不明のトートが桃源郷を狙ってるって」
いつの間にかフォミの手にも固有武器が握られている。
その様子を見てミルは身構え、フィーは固有武器のジャマダハルを出す。
「みんな何言って――」
「何回も言わせないで。黙って」
壁に突き刺さっている固有武器を消すと同時にキルの首に刃を当てる。
少し力を入れれば出血してしまう程近くに。
「……あーあ。こんなに早くバレるなんてつまんないなぁ」
ため息混じりに話し出すキルの顔はいつもの見慣れた表情とは似ても似つかず、ニヤリとふざけた様に笑う。
「……キルはどこ」
これが偽物だって事はわかってた。
でも本当に今目の前にいるのが偽物だという事実。
そしてキルがどこにいるかわからないという事実。
その二つにソルは耐えられそうにもなかった。
「そんなに殺気出さなくても大丈夫だって! ちゃんと安全な所で見てもらってるから」
固有武器を持つ手に力が入る。
今こいつを殺してしまえばキルは出てくるかな。
そんなソルを遮ったのはフォミ。
2人の間に入り込む。
「あなたの目的は何なの? まずは本来の姿に戻りなさい」
「まあまあ待ってよ。ちゃんと順を追って説明するから。下手なことすると今すぐ殺されちゃいそうだし?」
首に突きつけられている刃を人差し指で軽くつつく。
これを退けないと話さないということだろう。
フォミに目で合図をされ、仕方なく固有武器を消す。
偽物は刃が当たっていた場所を撫で、わざとらしく安堵の表情を浮かべる。
「早く話しなさい。今度は私が何するかわからないわよ」
こわいこわいと呟くと偽物は話を始める。
「まずオレの目的は契約者になってくれそうなトートを見つけて契約してもらうこと。どうせだったらむさ苦しい男じゃなくて可愛い女の子がいいなって思って」
まるで学校の先生が生徒に教鞭を執いているかのように壁際を歩きながら話す。
「そこで目に止まったのがここ桃源郷。あんたたちがアブナイお仕事してるのをたまたま見てね。ここの子なら可愛いし強いからちょうどいいと思って。でも獣人と契約するとのちのち厄介だから女の子の中で唯一獣人じゃないフィーちゃんと契約しようと思ってたんだけど、普通に頼んでも了承してくれないだろうから人質とったの」
足を止め、満面の笑みでフィーの方を向く。
契約。
契約者。
そんな言葉に他の人たちは返答に困っている。
「……あなたが何を言ってるのかわからないんだけど」
「あ、そっか大事な説明がまだだったね。オレは悪魔だよ。本当は現世に来たらいけないんだけどね」




