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たださみしかっただけ  作者: 朝月
二章 レイ
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No.1 ご乱心

 時刻は昼前。

 食事処のカウンターではキルが1人うなだれている。

 朝から客も少なく、今は人っ子1人いない。


「みんな仕事で俺だけ1人店番……せめて客がいれば暇しないんだがなぁ」


 本当はもう1人いるはずだったっていうのに。

 何で夜逃げなんかするんだよ。

 確かこの前、フォミとミルが連れてきた?

 スカウトした?

 とにかくあいつ。

 確か名前はダリル。

 就職した時に話したっきり避けられててあんまり話してないけど。


 桃源郷は人の入れ替わりが激しく、逃げた事自体は誰も咎めない。

 そしてそれを誰もおかしいとは思わない。


「1週間も持たないのは別にいいけど、なんでわざわざ今日なんだよ……」


 客のいない店内で心の声が漏れる。

 当然誰からも返事が返ってくる事はなく、テレビの音だけが店内に流れている。

 暇を持て余し、興味もないテレビを見つめている。

 そこへ待望の来店者を知らせる鈴がチリンと鳴る。


「いらっしゃい!」


 キルは嬉しそうな顔で客を迎える。






「ただいまー」


 ミルが帰ってきたのは昼を少し過ぎた辺り。

 本来なら夜まで帰れない予定だったが、聞かされていた内容より簡単な仕事ですぐに終わってしまった。

 昼食を食べる為に自室に帰るより先に食事処に足を運んでいた。

 他の客と同じ様に扉を開け、チリンと鈴を鳴る。


 あれ、今日はキルが1人で店番をしていたはずなんだけど。

 キルどころかお客さんもいない。


 軽く見渡すと店内端っこに誰かが座り込んでいるのが目に入る。

 こちらが気が付いたことに気が付いたのか、ゆっくりと振り返る。

 キルだった。


「キル? そんな所でどうしたの、大丈夫?」


「は、早かったんだな……」


 キルはこちらを向いたまま立ち上がり歩き出す。


「思ったより簡単な仕事だったから早く終わっちゃった。さっき通信で報告したらフォミ達ももうすぐ帰ってくるみたい。リルは予定通り遅くなるらしいけど」


 そう言いながらミルはカウンターから飲み物を出し、そのまま席に座る。

 キルは何やら焦った様に扉の方に向かっていく。


「そうか、ならちょうどよかった。俺はちょっと用事が出来たんだが店番頼めるか?」


「いいよ、いってらっしゃい」


「じゃあ行ってくる」


 足早に扉に手をかけようとする。

 キルがこんなに焦ってるのは珍しい。

 余程大事な用があるのだろう。

 心配そうに少しおかしな様子の同僚を横目で見る。


「あら、どこかに行くの?」


 キルが食事処を出る前に扉が開く。

 フォミが帰ってきた。

 一緒の仕事だったソルとフィーも一緒だ。

 キルは慌てふためき、後退りをしてそのまま壁に背を預ける形になってしまった。


「本当に早かったね。早くても夕方くらいかと思ってたのに」


 椅子から立ち上がり、フォミの方に近づいていく。


「ええ、ちょっと気になる事ができたから急いで帰ってきたの。今いいかしら?」


「でも俺ちょっと用事が……」


 壁に背中をつけたまま横歩きで扉へ向かおうとするキル。

 ゆっくり動いているが、やはりどこか急いでいるように見える。


「ねえ」


 突然、張り詰めた声が店内に響く。

 一瞬音がなくなる店内。

 静寂を破ったのは壁に何かが力強く突き刺さった音。

 ソルの固有武器だった。

 キルの進行方向目掛けて投げられたそれは顔の横の壁に突き刺さっている。

 それでやっと進むのをやめたキルの頬には冷や汗が流れている。

 もう少し進んでいたら死んでたかもしれないんだから無理もない。

 それにしてもソルがキルに武器を向けるなんて只事ではない。

 そしてソルの口から思ってもみない言葉が放たれる。


「キルをどこにやったの」


 その場の全員が凍りついた。

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