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たださみしかっただけ  作者: 朝月
一章 桃源郷
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No.9 損害賠償はいつものこと

 何を言っているんだろうこのお嬢様は。


 耳を疑う前に即答をしたソルは戸惑いを通り越して呆れた様子でメニィを見る。


「法律なら私どもが改変いたしますから!」


 そういう問題じゃないって事を気づいて欲しい。


「法律とかそれ以前に嫌だから……はぁー……というか、トートとレーベンじゃ子供できないでしょ。いいの? 名家のお嬢様として後継残さなくても」


 ソルから断ってもメニィに折れる気が無いのは誰が見ても見てとれる。

 なら正当な理由で向こうから無かった事にして貰えばいい。

 予想していた通りメニィは顔を真っ赤して「こ、こど……っ」と繰り返している。

 トートの精子はレーベンの卵子を破壊し、トートの卵子はレーベンの精子を溶かしてしまう。

 つまりトートの生殖細胞にレーベンの生殖細胞が耐えられない。

 それにしてもセクハラで訴えられたらどうしよう。

 別の心配が頭をよぎった所でメニィは咳払いをする。


「子供の事は大丈夫です。私にはお兄様もお姉様もおりますし、それに――」


 平常心を取り繕っているメニィの背後で壁が爆音を立てて崩れた。

 壁の破片だと思われるものと砂埃で廊下は少し視界が悪くなる。

 あと数十歩後ろに立っていたら巻き添いをくらっていたであろう。

 驚いて崩れた方を向くメニィは砂埃の中から呻き声が聞こえてくる事に気がついたようだった。

 砂埃が落ち着き、声の主は案外近くにいた事が判明する。

 声の主は壁が壊れた衝撃で出てきた砂埃を被り横たわっていた。

 壁を突き破って出てきたのは人だった。

 その人を追うようにもう一人人影が出てくる。


「悪い、壊さないように気をつけてたんだが大穴開けちまった」


 ぴゃー


 壁に空いた穴からキルとハクが出てくる。

 弁償する、と言いながら服についた砂埃を払う。


「4人いたの?」


 驚愕からか声が出ないメニィとは正反対にソルは毅然とした態度でキルに問いかける。


「ああ、ミルが手を振った回数が俺たち2人で倒す人数。4回振ったから4人。ミルもよく場所まで分かるな」


「伝え方が分かり易すぎて敵にバレないか心配だったけどね」


 全部キル任せになってしまったのが申し訳ないけど、本人の護衛もしないといけないんだからしょうがなかった、と自分に言い聞かせる。


 気がつくとメニィも少し冷静さを取り戻していたようだった。

 手で口を覆い、倒れている暗殺者だと思われる男を心配そうに見つめている。

 キルもその様子に気づき声をかける。


「大丈夫だったか?」


「は、はい、私は大丈夫です。えっと……」


 倒れている男とキルを交互に見る。


「あ、キルだ。遅くなったがよろしくな。こいつはハク、俺じゃなくてソルが飼ってるんだけどな」


 メニィの方に足を進める。

 ハクもキルの横にぴったりとくっついている。


「こちらこそよろしくお願いしま――」


 メニィもキルの方に歩み寄ろうとしたその時、先程まで倒れていたはずの男がキルの背後に揺らめいているのが見えた。


「キル様危ないッ!!」

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