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たださみしかっただけ  作者: 朝月
誰かの記録
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独白 この世界の記録【ネタバレ注意・随時更新】

 様々な世界を渡り歩いてきた。

 何年も何年も一人で渡り歩いてきた。

 私はいつまで一人で頑張らなければならないのだろうか。

 正気を保つ為、置いてきた仲間の為、私が壊れてしまった時の為、この世界の事を記録する。

 周知の事柄だとしても私の思考を整理する為には必要な事だろう。

 もし記憶が混濁しておかしな事を記入していたとしても許してほしい、私には長すぎる旅路だったのだから。




 この世界では常識とされている知識を以下に記す。


・レーベン

 人間の種族の一つ。

 戦闘能力は無いが個体数が多く、群れることを好む。

 髪色は大抵の者が、黒、茶、金となっている。

 大多数の者がトートを人間として扱わず蔑んでいる。

 この国ではその思想が根強くなっている事が判明しているが、原因は不明。


・トート

 人間の種族の一つ。

 戦闘力、自然治癒能力共に長けており戦闘に特化している。

 血の気の多い輩が多いとされている。

 身体の成長はレーベンより早く、大体一・五倍とされている。

 そして身体が全盛期となる十五才前後で成長が止まり、老化することはない。

 トートには型が存在し、通常型と獣人に分けられる。

 獣人にはその名の通り獣の特徴が見受けられ、瞳孔の形が菱形となっている。

 また性別問わず、月に一日だけ発情期がある。

 型にもよるが獣耳と尻尾を持つ者が多い。

 稀に新種が生まれるが、様々な理由で十五才の成人を迎える前に亡くなる可能性が非常に高い。

 最も特徴的な、ケイルと固有武器、そして忌力については後記する。


・ケイル

 忌力を消費することで使うことのできる、トートの持つ力の一つ。

 能力は様々なものがあり、似ていることはあっても全く同じことは無いと言われている。

 先天性ケイルと後天性ケイルがあるが、発現時期以外に大した差はない。

 強いて言えば、後天性ケイルが発現する時はそのトートの精神が大きく揺さぶられ時であり、発現した能力はその時に強く求めていた事に由来すると言われている。

 発現時には激しい痛みと血涙を伴う。

 予兆としては疼きや目の奥の違和感といったものがあるが、予兆無く突発的に発現する場合もある。

 ケイルの宿った瞳の下には紋章が現れる為、第三者から見てもケイル持ちだということがわかる。

 ケイルを使用する時はいかなる場合でも瞳が赤くなり、その能力を象徴する文字が一文字だけ浮かび上がる。

 瞳、または紋章が塞がれると使用不可能になるが、原理は未だ不明。

 メガネや薄いサングラスなど、自分からはもちろん相手からも視認できる程度の物ならケイルの使用は可能である。


・固有武器

 忌力を消費することで使うことのできる、トートの持つ力の一つ。

 何もない場所から武器を何個でも生成できるが、生成する度に忌力を消費する事になる。

 出生時に作り出せる武器は決まり、それは例外なく一種類だけである。

 ケイルと違って他人と全く同じ固有武器を有する事もありえる。

 武器は従来品である事が多いが、稀にこの世に存在しない武器である場合がある。

 その武器は『オリジナル』と呼ばれる。

 固有武器は剣や槍などの持続品と、銃や弓などの消耗品に分類される。

 消耗品は使用する度に銃であれば弾、弓であれば弓矢を生成し続ける為、忌力の多い者でしか上手く扱えない。

 固有武器は生成した者以外が使おうとすれば消滅する。


忌力(きりょく)

 トートの能力の源。

 ケイルを使うにも固有武器を生成するにも忌力を消費する必要がある。

 消費した忌力は時間経過や休息により回復する。

 総忌力量は生まれた時に決まり、鍛錬等で増減することはない。

 忌力を一定の量以下になるまで消費すると忌力枯渇症になり、酸欠と同等の症状を引き起こす。

 それでも消費し続ければ死亡する。

 詳細は解明されていない。


・異名

 力のあるトートに与えられる通り名のようなもの。

 城の関係者にスカウトされる、もしくは定期的に開催される大会で優勝すると異名を与えられる。

 異名保持者は法律を多少破っても許される等、他のトートより優遇されるが城からの招集命令には必ず従わなければならない。

 異名を持つトートを異名保持者と呼ぶ。

 異名は表記と読み方が異なる。

 異名保持者は誰でも閲覧可能な異名保持者リストに異名、性別、型、ランクが記載される。


四獣(しじゅう)

 異名保持者の中から王が選別した四人のトートには『朱雀』『玄武』『青龍』『白虎』の称号が与えられる。

 四獣となった者たちは何をしても大抵の事は許される、逆らおうとする人もいないだろう。

 今は『白虎』が不在とされている。

 異名保持者内でのヒエラルキー構造を作る為に作られた制度だと思われる。

 決闘制度を助長させる目的もあるのではないかと個人的には思っている。


(みかど)

 四獣と同じく異名保持者の中から王が選抜した一人のトートであり、四獣をまとめる存在だと噂されている。

 誰もその姿を見た事がない為、存在しているのかさえわかっていないようだ。


・ランク

 元は奴隷階級だったが、そこから流通してしまい一般的にも使用されるようになった。

 その為、トートはランクをあまり好いてはいないようだ。

 図にして表記する。


SS 獣人 ケイル ケイル

 S ケイル ケイル

 AA 獣人 ケイル

 A ケイル

 B 獣人

 C 通常型


 ↓ それに加えて


 Z 異名保持者

 ZZ 四獣


・決闘制度

 異名保持者や四獣を殺せば殺した者が異名や四獣の称号を与えられる。

 決闘制度による殺人は罪にはならないが、そもそも異名保持者ではないトートが異名保持者に勝つ事は稀であり、返り討ちにされて命を落とす事の方が多いので決闘制度を利用するトートはほとんどいない。


 以上が現時点で判明している事柄である。




 トートの型として現在確認されているものを性質と共に記しておく。


・通常型

 特に身体的な特徴はない。


・犬型

 身体的な特徴としては、垂れた獣耳と毛の長い尻尾が挙げられる。

 性質としては聴覚、嗅覚が鋭く、力も他より強いとされている。

 夜目も効く。


・猫型

 身体的な特徴としては、立った獣耳と細長い尻尾が挙げられる。

 性質としては身軽に動く事ができ、足音を立てずに動く事ができる。

 聴覚が研ぎ澄まされており、犬型には劣るが嗅覚も鋭い。

 夜目も効く。


・虎型

 身体的な特徴としては、少し丸みがかった立ち耳と、縞模様の細長い尻尾が挙げられる。

 猫型の性質に加えて、力が強いが犬型には劣る。


・悪魔型

 身体的な特徴としては、二枚のコウモリのような翼と先が鋭い逆三角形の形になっている細い尻尾が挙げられる。

 血の気が多く、犯罪を起こす傾向が高いと言われている。

 性質は五感は通常型と変わらないが、飛行能力があり魔術を使う事ができる。

 多くの悪魔型は魔界に住んでおり、現世のトートと契約した者だけが現世に行く事ができる。


・天使型


・天使型

 身体的な特徴としては、二枚の鳥のような翼と長髪、そして頭の上には黄色い輪っかが浮かんでいる。

 自尊心が高い傾向にあり、内向的で天使型以外との関わりを嫌う場合が多いらしい。

 性質は五感は通常型と変わらないが、飛行能力があり使役を使う事ができる。

 全ての天使型は天界に住んでおり、自分から進んで魔界や現世に行く事はない。


 例外として以下のものも存在する。


・ハーフ

 両親が異なる獣人だった場合、両方の特徴を持って生まれる事がある。

 受け継ぐ特徴の割合には個人差がある。

 トートからも迫害される場合があり、新種と同じく、成人まで生きられない可能性の方が高い。


・混血

 トートとレーベンの間に子供ができる事はない。

 それがこの世の理だが、それをくぐり抜けて生まれる子供がいる。

 見た目はレーベンと瓜二つだが、体内に忌力を有しており、ケイルと固有武器のどちらか、もしくはどちらも使える。

 しかしケイルが使える場合でも紋章が現れる事はない。

 忌力を使うと寿命が短くなるほど身体にダメージを被う。

 存在がおとぎ話とされており、混血の存在を知る者は極めて少ない。


 以上が現時点で確認されている型である。


【追記】

 悪魔型、天使型、両型の性質については詳しく記述する必要があると判断。


(悪魔型)

・魔術

 悪魔型が生まれつき一人一つ持つ能力であり使用するには忌力を消費する必要がある。

 能力は様々で、全く役に立たないものからケイルと差異ない程強力な物までピンキリである。


・契約

 トートが特定の魔法陣を描き、自身の願いを捧げる事で魔界から悪魔型を呼び出す事ができる。

 原理は不明だが、願いに共鳴するような悪魔型が選び出される。

 契約をすれば願いは叶えられるが代償を課せられる。

 代償の内容は契約する悪魔型の力量で変わる。

 さらに契約の利点として、その悪魔型のケイルと魔術を使用する事ができるようになる。

 この際のケイルには紋章を伴わない。

 また、名前を呼ぶ事で悪魔型を現世に呼び出す事ができるが、悪魔型が拒否する事もできる。

 ケイル、魔術、呼び出しには忌力を消費する必要があり、さらに左目が反転目になる事がわかっている。

 契約には不明点が多い為、突き詰める必要がある。


・ツノ

 総忌力量がずば抜けて多い場合、二本ずつ生える。

 力の象徴として恐れられる事が多い。


(天使型)


・使役

 忌力を分け与える事で自分の分身のようなものを作り出せる。

 大きさや力は自由自在だが、スペックの高い物を作るにはそれだけ忌力が必要になる。

 小さくて弱いが長時間存在できる、大きくて自身に近いがすぐ消える等。

 逆に弱いがすぐ消える個体を沢山出し撹乱したり、強くて持続する個体に自分の代わりに戦わせたり等、自分の総忌力量によって戦略は様々。

 自身と瓜二つの分身体も忌力さえあれば作り出せる。

 作られた時に分け与えられた忌力を消費しながら動くので、全部消費すると存在を保てなくなって自動的に消える。

 傷を負っても忌力のある限り動き続けるが傷の再生にも分け当てられた忌力を消費する為、消滅が早まる。

 消滅する前に分身体を身体に取り込めば、分身に残った忌力を自分の体に戻すこともできる。

 逆に消滅する前に触れる事で分身に忌力を追加で渡すこともできる。

 分身体は生命体ではないので、自身を作り出した天使型の命令は忠実に動く。


・翼

 悪魔型のツノと同じく、総忌力量がずば抜けて多い場合、二枚ずつ増える。

 力の象徴として崇められる事が多い。




 この世界の事を以下に記す。

 まずは地理について記述する。


現世(うつしよ)

 今私がいる空間は現世と呼ばれている。

 科学技術以外はそれほど発展しておらず、建物も古びた物が多い。

 闘技場等の敷地の広い建造物はよく見られるが、ビル等の縦に高い建造物はこの世界では滅多に見られない。

 そしてこの地はトラリアオース大陸であり、国面積は広く三つの地方に分けられている。


 一番面積の広いヒュープル地方は、レーベンが主に居住しており、奴隷を扱う施設はヒュープル地方に集中している。


 次にトーオン地方はトートが主に居住している。

 奴隷狩りによる廃村も多いが、栄えている街もある為、貧困差が目立つ。


 最後に一番面積の狭いピート地方はトートもレーベン大体同じ割合で居住している。

 トートとレーベンの共生を望んでいる人間が望んで住んでいるらしい。

 争い事は殆どなく、一番平和な地方となっている。


 そして、地方の境界には壁が張り巡らされており、トートが地方を移動したい場合には壁の所々にある関所で受付をしなければならなく、私にとっても都合が悪い。

 関所を通らず壁を飛び越えようとすれば、警察に射殺されてもおかしくない為おすすめできない。


・魔界

 悪魔型が住む空間。

 現世とは違い、空にも土地にも終わりがあり、見えない壁で覆われているようだと聞いた。

 飛行の邪魔になる為、魔王の住んでいる塔以外の建物の高さには規制があるようだ。

 魔界は四つの地区に別れててそれぞれの地区に一人ずつ魔王がいる。

 数字が小さい方が裕福で地位も上になるが治安が悪い事には変わりがない。

 魔王より上の地位の魔神という存在がいるらしく、その名の通り神のように崇められているが人前に出る事はほとんどない。




 以下が観察を続ける必要のある勢力である。


・桃源郷

 トーオン地方にある、居場所のない者たちが集まる店。

 『去る者は追わず来る者は拒まず』としており、誰でも就職する事ができるのだが、数日以内に辞めてしまう人が後を立たない。

 しかし、たまに居心地がいいと感じる人がいるので、そういう人はずっと居着く。

 一階は食事処と診療所だが、二階では違法な何でも屋をしている。

 そして三階から五階は貸し部屋としており、建物自体も珍しく階数が多い作りになっている。

 さらに二階には大浴場、三階に資料室、四階に物置部屋、五階に多目的室がある。

 一時期警察に目をつけられていたり、異常な雰囲気を纏った人も多いが目的は不明。


・警察

 レーベンの男性のみで構成された組織。

 関所に配属されているのも警察。

 組織に入るとまずはレーベンを優遇し、トートを迫害するように教育されるらしい。

 階級が高ければ固有武器に匹敵する素材の武器が支給される。

 ヒエラルキー構造になっており、『指揮官』『副長』『補佐』の順番でヒエラルキーの頂点にいる。

 その三名の顔や名前を知る者は警察外では少なく、極秘任務や城内の警備が主な仕事となる。


・ヨザクラ

 トーオン地方の大半を牛耳っているマフィア。

 最近マフィアからヤクザに名称が変わったらしい。

 トートならその名を出せば逃げ出し、レーベンだとしても誰も突っかかってくることはない。

 裏社会の人間には厳しい態度を示すが、一般人に対しては向こうから仕掛けてこない限りは手を出さない。

 初代からずっと、ボスとその側近二人の髪色は無彩色で統一されていたが、現在のボスがそれは古い考え方として薄れさせていこうとしている。

 しかし断固として伝統を守ろうとする派閥も一定数存在する。


・直し屋

 その名の通り何でも直すという商売をしている。

 費用が多額な為、訳ありな案件しか依頼されない。

 クラウ・ジキルが個人営業しているのでその多額の利益はどこに送られているのか何に使われているのか本人にしかわからない。

 争い事を好まず中立の立場を取っているが、桃源郷を贔屓しているようにも見える。


 以上が現時点で存在を確認している勢力である。




 その他にも記録が必要と判断した物を以下に記す。


幻力石(げんりょくせき)

 トートの力を抑える石。

 天然石で貴重な為、一般家庭には普及していない。

 トートが幻力石に触れると例外なく皆、忌力を使用できない、つまりケイルも固有武器も使用できなくなる。

 その上、力もレーベン並みに弱くなって体も怠くなると公表されているが、実際には体に及ぼす影響には個人差がある。

 敏感な人は触れていなくても近くにあるだけで気分が悪くなったりするが、耐性のある人は少量だったら触れていても身体機能に影響は出なかったりする。

 この石の存在が発見されたのはここ百年以内の話であり、加工して使われる様になったのはつい二十年前ほどのようだ。


・匂い消し

 匂い消しは犬型等の獣人に嗅ぎつけられるのを防ぐ為に使うものだが、微かに残った匂いで気づかれる事が多く、使う者はあまりいない。

 しかしそれは市販の物の話であり、市場に出回っていない上物は完全に匂いを消す事ができる。


・幼体成熟症候群

 トートの先天性の病気。

 子供の頃は他の子と変わらない為、成長過程で病気に気づく事がほとんど。

 通常、十五才前後(見た目年齢二十歳前後)で成長が止まるが、それより早く成長が止まる病である。

 症状としては見た目年齢が幼いという一点のみで身体機能等には影響はない。

 見た目年齢は軽度だと十五才前後、中度だと十才前後、重度だと五才前後と言われている。

 原因や治療法は見つかっていない。


 以上。


 そろそろ活動限界を迎える。

 眠気が襲ってきた。

 今はここまでとする。

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