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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
9/29

第9話 助けて、三篠森・N。あなただけが頼りです。

 三篠森・N,大ピンチ。もはやジャック・バウアーだ。

 まずはキング・クリムゾンし、10月19日段階での俺の体調をお伝えしよう。


①膝半壊

→4月にコロナに感染し、ガタ落ちした体力と筋肉を戻すため、5月に80キロサイクリングを行って以降、自転車に乗ると膝が痛く10分程度しか乗れない。それが未だに続くため、整形外科に行ったところ半月板がすり減り、骨と骨の間隔が狭い上、膝のサポーター代わりとなる太ももの筋肉が弱いため負担がかかっている。


②逆力石

→去年の健康診断から10キロ体重が増えた。これによりさらに膝に負担ががかっているが、俺の体重増加を抑えていたのは自転車だったので、自転車により膝半壊、自転車に乗れないから体重増加、体重増加により膝がさらに悪化という状態。常識的に減量を勧められ、「じゃあ歩いて痩せます」と言うと「歩くと膝に負担がかかるからやめなさい」と言われる。これにより、12月に発売されるニンテンドーswitchの『北斗の拳 お前はもう痩せている』まで多分痩せられない。


③適応障害による鬱状態

→今日発覚のニューカマー。



 前回のこの随筆により、俺が壊れつつあること、母が壊れたことがお伝え出来たと思う。

 そして職場の保健師さんに相談した俺は、そこから厚生労働省の『心の耳電話相談』なるものを勧められる。そこからさらに都、区、地域と絞り込んで該当の部署に紹介されて電話をかけ、ようやくカウンセリングを受けることになった。それが今日であり、その心理士さん曰く

「心理士は診断を出すことは出来ないが、あなたは適応障害による鬱状態です」

 と告げられた。




 さて……。母がぶっ壊れたことは本誌既報の通り。それに加えアントニオ猪木氏の逝去、祖母が脳梗塞で倒れる、膝が壊れたなど紆余曲折を経て、まずはすぐに解決できそうな膝から治していくことにする。

 歩く、サイクリングという俺の趣味に直結する減量方法は推奨されないため、俺は医師にお勧めされた膝のサポーターになる太ももの筋肉を鍛えることにした。

 その方法とは、椅子に腰かけ、足は骨盤の幅程度に広げ、片足ずつ限界まで伸ばして10秒キープ。これを両足10セットを一日やるといいということだ。

 しかし和室界隈の三篠森・Nの居城。椅子はない。椅子を買いに行くにしても、実家の車が不可欠……。そこで嫌だが母に連絡を取ったところ、使ってない椅子があるからくれるという。この頃、既に母は俺のことを「弟を使って自分を責める敵」と認識していたようであからさまに冷たい。

 なんとか椅子を持ってきてもらったが……。そこで衝撃的な話を聞く。


 えー、我々プロレスファンの方でよく、“掟破り”という言葉を使います。

 藤波辰爾がアントニオ猪木と戦った際、マッチョドラゴンは師匠である猪木の“卍固め”を使用した。俗に言う「掟破りの逆“卍固め”」である。このように、相手のお株を奪って技をかますことをプロレス界では掟破りと言う。掟破りのレインメーカーなど死語ではないはず……。

 弟はやりやがった。「掟破りの逆“通報”」である。

 かねてより、隣家のお子さんたちの声やエアコンの室外機がうるさいとして、大声による恫喝を繰り返してきた弟は、お隣さんの生活音を理由にお隣さんを通報したのである。

 ありえん……。なんという恥知らず、厚顔無恥……。

 結果、お隣の奥さん、ブチギレ。

 実家の前で一時間半以上にもわたり、警察官に制止されながら「どれだけこっちが我慢していると思っているんだ」という旨を怒鳴り声に乗せて訴えた。途中から応援の覆面パトカーと刑事さんも来たという。

 俺はお隣の奥さんのやったことは100%擁護する。よくも……。よくもそんなことが出来たな、弟。完全に被害者だったはずのお隣さんは、掟破りの逆通報により一気に加害者扱いされたのだ。そりゃキレる気持ちもよくわかる。

 本当に弟が許せない。そしてそれと同じくらい母も許せない。

 弟はお隣さんを通報する前に、母に通報してもいいか尋ねたそうだ。母はそれを了承した。そして温厚だったはずのお隣さん……。お隣さんが昨年末に弟を通報した後も、お隣さんは我が家に向かって「通報なんかして騒ぎを大きくしてすみません」と謝りに来たという。

 なのにこちらは!!! 何も改善せず!!! 反省もせず!!! 掟破りの逆通報!!!

 ダメ押しに母はお隣さんに謝りにもいかず、「お隣の奥さんは所詮はヤンキー」などと抜かして反省どころか弟を擁護し、お隣さんに対する反感を強めている。救いようがない。


 マザコンと思われてもしょうがないが、俺の母は本来、明るく、常識があり、茶目っ気があり、父の話題さえ出なければ理想的な母であったはずだ。しかし父に対する攻撃性が現在は全方位に向かっている。

 母は常識を失ってしまった。この数週間の変わりようはまるでアシュラマンである。テリーマンと1勝1敗1分である。アシュラマンは過ちを犯した、それも自分の過去の過ちのせいで過ちを犯した息子をアルティメット阿修羅バスターで罰したが、ウチのアシュラマンはこの数週間でより息子(次男の方)に愛着を増し、以前以上に可愛がったり憐れんでいる様子が見られる。

 人の幸せ(父以外の)を喜んで、決して嫉妬などしない人だったが、俺が小さい時から家族ぐるみの付き合いのあった母の親友が孫を持ち、娘と共に里帰りしていることに嫉妬をしていた。だが、我が家の兄弟で最も結婚に近い妹の結婚、さらにはその先の里帰り出産を阻んでいるのは弟、そして弟を7年も悪化させるだけの母なのである。

 『竜とそばかすの姫』がBPO入りしたが、俺自身もこの数週間で行政と福祉のお世話になり、そして弟と母は随分と前から医療や福祉のお世話になり感じたことは、こういった公共や医療は「当事者に寄り添う」なのだ。俺の場合は俺に寄り添い、我が家の現状と俺の状態と「あまりにもひどく悲惨」「あなたも危険な状態」と寄り添ってもらい、その言葉に少なからず救われているところがある。だが弟のために呼び寄せられた医師や看護師が寄り添っているのはあくまでも“弟”であり、弟の暴威に晒されているお隣さんや俺たちではない。だから弟の意思を尊重し、弟のやりたいようにやらせたりするため、結果的に弟の暴力のモチベーションや動機を肯定していることになっている。

 自分も使って助けられてこういうのもなんだが、俺も厚生労働省→都→区→地域とたらいまわしにされているため、結局のところ、差し引きで「役に立たない」という結論に至った。『竜とそばかすの姫』でに描写が御幣を招く表現であることはわかっている。だが家庭内暴力は一朝一夕では片付かないどころか……。やり方を間違えれば頼らねばならない、解決のために動いてくれなきゃいけない人たちは、我が家のように助長される場合がある。


 無念だ……。あまりにも悔しい……。

 あの母が豹変し、壊れてしまったこともショックで無念だ。その母を壊した弟に対する怒りや恨みは……。とりあえず、今日のカウンセリングで「どうしたいですか?」と訊かれた俺は、もう弟も母も元に戻らないことを悟っているので、「妹のように忘れて生きていきたい」と伝えた。だが俺はきっとこの怒りと恨みに囚われたまま、母よりも緩慢なスピードで弟のように怒りと恨みに生きる人間性を失った畜生へと落ちていくのだろう。

 何より無念なのは、お隣の奥さんである。お隣の奥さんは、逆通報でキレる二日前までLINEで母と弟とは関係ない雑談をしていたようだ。それが一回の通報でブチギレ。これだって理性を失った状態の怒り状態だ。

 三十二になった俺でさえ、母が豹変してしまった姿にショックを受け、心を痛めているのである。話を聞く限り、ヤンキーでもなんでもない普通の奥さんが警官に制止され、応援のパトカーと刑事が来てもなおキレ続ける。そんな状態になった母親を、お隣の幼い子供たちはどんな気持ちで見ていたのだろうか。トラウマになったことは想像に難くない。




 そんな事情を抱えカウンセリングへ。

 カウンセリングなのだから全肯定してくれるのは重々承知だが、

「三篠さんはやれることは全てやったと思います」

「あまりにもひどい」

「この状況で仕事に行けているのはすごいこと」

 というお言葉をいただき、最後に「適応障害による鬱状態」を告げられた。ギリギリの状態なのでなるべく短いスパンで来てほしいとのことだったので毎週行くことになったが、保険適応外で高額である。

 昨年の9月、母と「このままだと三篠家は弟に食いつぶされて終わる」と話しているところを盗み聞きされ、ブロリーは伝説のスーパーサイヤ人となってフルパワーで惑星・三篠をデデーンした上、止めに入った母にケガをさせる変則パラガス事件を起こしたが。毎週通うとマジで俺は弟に食いつぶされたことになる。


 この三週間ほどの体調不良はさすがにマズいと感じた俺は友人に会ったり、3年ぶりに大学時代の恩師にあって話したりとストレスを溜めないようにしてきたが、弟に関する愚痴を誰かに話すことは、弟の迷惑行為が俺を経由し、薄く延ばされて俺の周囲に及んでいる気がして止そうと思ってきた。この随筆を読んでいる人は読みたくて読んでいるのだからいいだろうし、今回は今まで明言を避けてきた

「家庭内暴力・引きこもりに対して医療・福祉は役立たず」

 をハッキリ言えたのでメッセージになっていると思う。


 しばらくは弟に対する怒りと無念がエネルギーに代わり、医師に止められている長距離散歩で紛らわせていたが、最近はもうとにかく無念による脱力である。


 きれいごとのように感じられるかもしれないが、この状態でも『アブソリュート・トラッシュ』『CZK』のどちらかを週に一回以上投稿する、という自分ルールは基本的に厳守していきたいと思う。自分で決めたルールだから、待っている人がいるから(『トラッシュ』にはいないけど)、などいうきれいごとではなく、物書きをしている時が一番気楽だ。

 「俺は鬱病だ! 何もする気が起きないから就職もバイトもしないし、病院にも保健所にも行かないぞ!」と自宅でルーティンワークのご近所トラブルだけやってる弟とは違い、俺にはまだ物書きとポケモンと映画鑑賞をやる気力が残されている。


 あれだけ楽しかった仕事は最近はかなりしんどく、常に体も気持ちも重く休みたくてしょうがないが、カウンセリングに通うためには稼がねばならない。その必要な忙しさをタテに他人に八つ当たりをする母のようにはなりたくない。


 前置きが長くなったが、今回お話しするのは、母がまだ理想的だった頃から大好きなとある映画シリーズの思い出である。




 〇




 母をまだ慕っていた頃のこの随筆にも書かれているように、俺に読書、音楽、映画の面白さを教えたのは母であり、母にとって最高の映画は『スターウォーズ EP4』である。続三部作が公開されるまで母は『スターウォーズ』フリークで、俺も当然その影響を受けている。『トラッシュ』の現行エピソードも『SW』の要素を多く含んでいる。


 俺はまだ覚えておらず、後に実家でパンフを発見して知ったこと、なおかつググっても詳細な情報が出てこないが、兄弟がまだ俺しかいなかった頃、俺たち家族は『スターウォーズ』の監督ジョージ・ルーカスの世界観を再現した演劇(ミュージカル?)の『ツムラインパルス』なるものを観に行ったことがあるようだ。そこで売られていたライトセーバーが欲しかった母は、モノゴコロもつかぬ俺にライトセーバーをねだらせて購入しようともくろんでいたが、幼児の俺が気に入ったのはR2-D2のグラスだったようで、このR2のグラスは記憶がある限り最古の『SW』グッズだ。


 そしてあれは俺が幼稚園の頃。まだ明るかった母とかくれんぼをしたなァ。母が鬼で俺が隠れる番。「もういいよ」の声の後、母は開口一番「ドラえもんが行進してる!」。一発で騙された俺は即座に見つかった。役割逆転の後、俺は仕返しに「『スターウォーズ』が行進してる!」と言ったが大人の母が騙される訳はなかった。

 さらに俺が小学一年生。当時から不仲だった両親は大ゲンカ。母は俺、妹、弟を連れ、夜に家出した。そのまま新潟に帰るつもりだったそうだが、四人分の交通費がなかったので母は『EP4』の再上映を観て帰宅した。


 イケメン大好きの母曰く、

「『EP4』のハン・ソロ(ハリソン・フォード)は『ロード・オブ・ザ・リング』でレゴラス(オーランド・ブルーム)が来るまで映画史上最高のイケメン」だったそうだ。その次に『マトリックス』のネオ(キアヌ・リーヴス)らしいので、


1位 レゴラス(オーランド・ブルーム)-『ロード・オブ・ザ・リング』

2位 ハン・ソロ(ハリソン・フォード)-『スターウォーズ』

3位 ネオ(キアヌ・リーヴス)-『マトリックス』


 俺の睨んだところによると次点は『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)っぽい。ネコを飼い始める前、一時期、我が家にはミニチュアダックスの子犬がいた。名付け親は母で、名前は“ジャック”だった。

 ジャックはとても器量の良い子犬であったが、弟に「鳴き声がうるさい」「クソイヌ」「バカイヌ」と罵倒され、嫌われたため一年で里子に出された。思えば弟による追放者第一号はミニチュアダックスの子犬ジャックであった。

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