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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
7/31

7話 ヤング三篠の哀愁

 残念なお知らせだが、この随筆のことが家族にバレた。少なくとも母は知っているようだ。

 「父の話題さえ出なければ理想的な母」というフレーズを母が知っていたが、これはトップページのあらすじにある部分なので内容までは読んでいない可能性がある。

 まず、バレたルートの推測を始めよう。

 2017年頃か? 『うぉくのふぉそみつ』がバレた。当時、家族のいない間に家のプリンターを使って紙でバックアップを取っていたのだが、それを入れた引き出しは実家にあり、俺が家を出た後にどうも母が探ったらしい。

 それ以降、「見せられるものは差し出すから探さないでください」と約束し、コンビニのプリンターでベスト盤の『東京悪魔』を差し出し、その後2019年、物理書籍版『東京悪魔』を差し出した。

 そして2022年、『CZK』もI氏の協力により物理書籍になり、こちらも母に差し出して探さないでくれ、と言った。しかし……。

 物理書籍版『CZK』はIさんと綿密に打ち合わせて本の表紙からカバー、二冊セットを納めるボックスまでとにかくこだわってオシャレにしようと……。

 「本物の本みたいにバーコードつけたいんですが、読み込めないんでQRコードをつけましょう。QRコードを読み込むと検索除外にしてあるなろうのページに飛んで、『CZK』の登場人物紹介と目次、あらすじを読めるようにします」

 と工夫をし、“ミランダ”なる紙でQRコードを作った。

 おそらくそのQRコードからなろうの俺のトップページに飛ばれたようだが、母は『トラッシュ』の存在を知らなかったのでこの『離散日誌』のあらすじだけ読まれたのだろう。

 なお、『CZK』書籍化の協力者をI氏としたのは母に読まれた場合、協力者の名前がバレてしまうと不都合もあるからだろうという俺の心遣いである。

 そして本当にもう探さないでほしいと念を押した。これ以上約束を破られるようだとこちらはもう何もせず、というかアカウントを消すしかなくなる。


 ただ、母は『離散日誌』は続けてもいいということだったので、

①『離散日誌』は続ける。

②内容までは読まれていないという前提で進める。

③今後は読まれないということで信じる。

この3点でやっていくが腰は引ける。


 そういうことで恒例の現状報告からやっていこう。

 現在、母は歩合制の仕事をしており、あまり給料はよくない。しかし弟の治療? なんの進展になってるか知らないが日和見主義の医師や訪問看護師に来て、弟と話すだけの“治療”してもらうために平日に休みを一日取らねばならない。

 しかしそれでは収入は減る。しかし訪問看護師や医師に来てもらうにも金がかかり、この個人的には信頼出来ない医療の方々に来てもらうためには母は週四で働かないと三篠家は経済的に回らなくなってしまうのである。弟の治療に専念するために週三勤務にすることは経済的に不可能、そして週に一度程度の訪問看護師や往診医師では焼け石に水であり、この五年間で一銭も稼いでいない弟はタバコとプロテインに金を費やし、状態も悪化していく。

 この随筆、母が悪者扱いになっているのが俺の不徳の致すところであるのだが、本来明るく社交的な母は友人とよく食事に行くのだが、孤独に苛まれる弟はそれに嫉妬して恨み言を言うので母もストレスを発散しづらくなっておりがんじがらめだ。

 ならば比較的裕福な父を頼り、勤務を減らして治療(笑)に費やせば? と提案してみても「父の話題さえ出なければ理想的な母」である。何が最優先にするかが俺と意見に乖離のある母はどうやら父を頼りたくないようだ。この辺りに、俺、弟、母に共通する「恨み」、恨んだ相手は徹底的に嫌悪する悪しき性格の遺伝が出ていると思う。

 ただし母も穏健派ではなくなり、訪問看護師や医師には弟にはもう可及的速やかに施設や病院に入ってもらいたいとは告げているという。しかし入れるとほぼ確実に報復を受けるので、家を売る、弟がぶっ壊した壁などを補修して貸すなど、実家を手放す方法で考えているようなのだが、なんとも信頼出来ない訪問看護師は

「ブロリーさんはやる気が出ないなら、行きたい時に行って少し作業する倉庫のアルバイトもあるんですよ」

 などと悠長なことを抜かしている。寡作ながらも俺が今、一番注目しているポケモンYouTuber、レジィ氏の名言を借りれば、ふざけやがって、ファックユーなのだ。だ。


 母も本格的に避難先のアパートを探し始めているようだ。しかし母も高齢者。単身の高齢者は、なかなか部屋を貸してもらえないそうなのである。

 俺の知らない部分も関係しているので全体を俯瞰することは難しいが、母が恨みを捨てるというか、もっと三篠家(弟除く)が団結し、金銭を共有して……。俺や妹は薄給……なはずだが、四季報にも載る大企業で爆稼ぎして年金もほぼ満額貰っている父が金銭を共有し、足りていない部分(母と弟のところ)を補填すれば、弟による三篠家への経済的兵糧攻めにはあと十年は耐えられたと思う。だが母が前期高齢者になったらもう部屋を借りられない、と仮定するとタイムリミットはもう2~3年しかない。ちなみに父は母と弟への経済的援助は月に決まった金額を行っている。

 母は仕事大好き人間なので仕事が最大の息抜きでもあるのだろうが、それでも……。

 自慢じゃなく自虐だが、裕福だった三篠家が引きニート一人でここまで経済的に壊滅してしまうとは……。引きニートは恐ろしいな。




 今回お話しするのは、そんな弟がヒキニートになり始めた頃の俺の暮らしのお話し。


 弟の様子がおかしくなり始めたのは2015年の秋だった。俺もあの弟の兄であるので低スペックであり、その当時、縁故採用で入った千葉の山中にある企業で人間関係のトラブルを起こし、短期間で退職した。退職した日は千葉の山中から11時間かけて自転車で実家に戻り、東京ドームを眺めたものである。後で知ったがあの時、東京ドームでは日本vs韓国の試合が行われており、好投の大谷翔平が謎の降板指示を受けた後に逆転されて小久保監督が激しいバッシングにさらされた。

 俺がその千葉事件から帰ると弟は俺は俺を無視するようになり……って感じだ。


 だが少なからず俺も千葉事件で心に傷を負っており、しばし休養が欲しく半年程求職しながらニートをしていた。縁故採用でねじこんでくれた父、ねじ込まれた会社には申し訳ないが、人間関係の問題もそうだが、仕事内容は自分のやりたいことをやったほうがいいと吟味し、慎重にハロワや各種エージェントを頼って納得する職場に行けた。

 2015年の秋から2016年の春までは俺もニートだったわけだ。

 だが俺が退職した一週間後に『モンスターハンターX』が発売され、まだ弟と仲直りが出来ると思っていた俺は『モンハン』を通じての仲直りをしようと声をかけたが「やってない」と断られた。

 じゃあソロハンターでいいや、と一人で進めたものの、家にいると弟が暴れてしまうため居心地が悪い。

 なので俺はふかふかの座り心地のいい椅子と充電コンセントのある喫茶店、深山珈琲に入りびたり、まずはロイヤルミルクティーを。そしてしばらくしてからはカフェラテを、と優雅に、深山珈琲に長い日は5時間滞在してモンハンをしていた。

 年が明けて2016年。都内某所に務めるようになった俺はまだ実家にいたが、弟は悪化するばかりだった。その頃、3DSのオンライン中のフレンド、つまり弟が『モンハン』をやっていたことを知る。ウソをつく程俺とはプレイしたくなかったのである。当時、イベントクエストで獰猛化金レイアが配信されており、俺では歯が立たなかったが、当時はまだ少し会話が出来たので聞いてみると弟はソロで倒したという。ちなみにブシドースタイルの双剣だそうだ。

 この頃は休日は家にいられないのでスーパー銭湯三昧。

 そして2017年の2月。悪化の一途を辿る弟、そして超長期休暇の俺は家にいざるを得ない。深山珈琲でごまかすにも限度がある。

 なのでこの随筆では初登場だが、俺の一番仲の良い友人で、大学生時代はオタサーの王子だった自称イケメンに会いに行くことにした。大学卒業後、王子は金沢にて勤務しており、金沢まで旅行に行くことにしたのだ。

 金沢に行く当日の朝、王子に電話して「家には泊めてくれるよね?」と訊くと「ダメ」と言われた。先日教えてもらったところによると、今までに関係を持った女性の数は40人を超えるプレイボーイの王子の情は、やつが女の子を家に連れ込む時に使うゴム製のグッズよりも薄かった。急遽、降雪の金沢を30分歩くカプセルホテルに泊まることになったが、そのカプセルホテルはカプセルホテルで、それはそれで面白かったので、一度は体験してみてほしい。

 翌日からは父のいる新潟へ。新潟では雪による日光の乱反射で目をやられ寝込む。

 その月末、巨星がこの世を去る。

 母方の祖父が亡くなったのだ。弟は難産だったため、里帰り出産のために俺と妹は幼少期に半年以上母方の家で過ごしていたため、母方の祖父母にとても懐いていた。温厚篤実を絵に描いたような素晴らしい方々で、あの二人を悪く言う人間など未だに一人も見たことがない。その温厚篤実さで誰からも愛され、誰をも愛す素晴らしい祖父。特定されてしまうので詳細を明かせないが、この祖父への尊敬を込めて祖父の名前をお借りしたキャラクターが拙作『アブソリュート・トラッシュ』に登場する。

 祖父が亡くなる直前、電話がかかってきて叔父、伯母は看取ることが出来たようだが、東京の母は電話越しとなった。

 当時の弟は俺と顔を合わすと激昂してしまう状態になっていたので、食事の時間をずらして、食事をした後の俺はトイレと風呂以外の目的で自室を出てはいけない、という暗黙のルールがあった。そのため俺は大量に借りてきた『ウルトラマンタロウ』のDVDを観ていたのだが、イヤホンを貫通する母の泣く声。だいぶ前から祖父の具合が悪かったことは知っていたので俺は察したが、リビングには弟がいるので俺は泣きながら『ウルトラマンタロウ』を観ることしか出来なかった。

 その翌日には、母の運転する車で祖父の眠る新潟行きが決まる。

 しかし弟はまさかの拒否である。俺と同じ車で新潟まで行くくらいなら行かない。そう言い張ったのである。レジィ氏の言葉を借りれば、ふざけやがって。ファックユーなのだ。だ。

 しかも弟は駅で切符を買えない。当然新幹線の切符など買えるはずもないが、2017年の2月当時、妹はまだ弟のターゲットではなく、妹も仕事の都合で一日遅れで新幹線と言うことになっていたので一日遅れで二人は新幹線で。

 一足早く新潟に着いた俺は、祖父の葬式で弟が暴れて台無しにするのではないか、という不安と恐怖を祖母に吐露しているうちに、もう26歳なのに号泣していた。

 新潟では俺と弟は徹底的に隔離され、俺だけ別の宿に泊まらされた。葬儀中は受付に固定され、お焼香の一瞬しか会場に入れてもらえなかった。

 弟が来る前のお通夜では、叔父の子供たち三兄弟。当時はまだ高校生から小学生か?

 叔父も祖父の血を最も濃く継ぐ、それはそれは温厚篤実なお方であり、180センチ100キロ級の柔道の達人である。叔父は子供たちにも柔道を教えており、年下の従弟たち三人は座礼が非常にきれいであった。夜更け、その座礼がとてもきれいであったことを褒めると、お酒で感極まった叔父は「それが誇らしくて……」と涙を流した。

 喪主である叔父は日中は忙殺されたが、夜になるとこたつで眠ってしまった。喪主は悲しむ暇もない程忙しいのである。俺も長男なのでいつかあの役目を担うのだろう。それまで三篠家があれば。


 しかし状況は悪化する。

 この頃、母は「弟の様子が戻るまで森は一人暮らしをしなさい」と言っていた。しかし薄給の俺では一人暮らしは難しく、俺はまだ弟と話し合って和解がしたかったので拒否をしていた。しかしこの親戚一同集まっている場で母は「森が家を出ようとしない」と御幣を招く言い方で親戚に話したため、俺は親戚一同に「いつまでも親に甘えるな」と説教を受けるはめになった。

 だが俺も極限であり、この頃は毎晩弟に襲撃される悪夢にうなされ、眠る時はカギのない自室の扉が開かないように重い荷物でストッパーをかけ、枕元には文庫本『あしたのジョー』を数冊入れたビニール袋を置いて襲撃されたらそれをぶん回して迎撃するつもりであった。

 この親戚オールスター説教により俺は一人暮らしを決意した。


 一人暮らしを始めてからは悪夢も消えて安眠の日々だった。極貧により、水を食うために水を寒天で固めたものを食っていた。

 この頃、M氏による『文章×絵』企画に参加し、『泥中の蓮見ミドリ』『“フォトジェニック”』『おやすみ、宇宙人』の三本を提出した。

 その『泥中の蓮見ミドリ』こそ、現在大不評制作中の『アブソリュート・トラッシュ』のα版であり、『おやすみ、宇宙人』の主人公であるカナエは『アブソリュート・トラッシュ』でヒロインをやっている。

 この頃はほぼ毎週スーパー銭湯に行き、そのうちやろうとしていたアブソリュートマンシリーズの構想を練り、俺史上空前の爆死を遂げたβ版『アブソリュートミリオン』が出来た。この頃は『トラッシュ』で主人公になるフジ・カケル/アブソリュート・アッシュは影も形もなかったが、彼の兄姉であるジェイドとレイ、そして『トラッシュ』3部にて登場する都築カイ/アブソリュート・シーカーは現在とほぼ変わらぬ形で設定が出来ていた。


 こうして2017年春、一人暮らしを始めた俺。弟と会話するのは、本随筆1話にてとりあげた、『モンスターハンターライズ』発売直前まで飛ぶ。

 以上、薄給にもかかわらず出費を重ねた、家を出るまでのヤング三篠の哀愁であった。

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