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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第3章 三篠家介護編
33/34

第33話 三篠森・N、弟とこのゲームをやれたら楽しかったのかな……?

 今日の『離散日誌』は毛色が違う。ここ数か月は父との激闘編であり、父の激闘編の前は弟の死、その前は弟との戦いを描いてきたこの作品だが……。

 今回はゲームの感想を書く。だから今回は読まないでいただいても構わない。

 理由は以下の通りだ。


 俺と弟は仲が良かったころ、ずっと一緒にゲームをやっていた。一緒にやれるゲーム……多分『星のカービィスーパーデラックス』に始まり、最後に一緒にやったのは『ゼルダ無双』か『モンスターハンター4G』だと思う。

 『ポケモン』対戦はやらなかったが、とにかく『モンハン』は一緒にやりまくった。『初代P』から『4G』までは、携帯機でのソフトは全部一緒にやった。26時間ぶっ続けでやったこともある。

 そして、弟と一緒にやった思い出が深いゲームが『カービィのエアライド』だ。

 長年リメイクや続編はないと思われていた『エアライド』はついに今年新作『カービィのエアライダー』が発売され、俺もやったのだが……。

 通常、こういったゲームや漫画、映画の感想は別に設けてやっているが、今回の『エアライダー』は弟との記憶が蘇るばかりであった。

 そのため、『エアライダー』の感想は……

①新作ゲームとしての感想

②弟との思い出が蘇りすぎる

 この二つの要素が同じくらいあり、ならば弟というセンシティブな話題が入ってしまうならばこちらで出した方が良いかなと思っただけだ。だから今回は殺伐はない。

 あれだけ憎んだ弟の思い出を美化……してはいけないのだが、変わってしまう前の弟とはうまくいっていたと俺は思っていた。その頃を彩ったのが『カービィのエアライド』であり、『モンスターハンター』シリーズであり、『ドラゴンボールZ スパーキングメテオ』であった。この三本は本当に思い出深かった。


<俺と弟とゲームと『カービィのエアライド』>

 弟は誕生日でもクリスマスでも、「欲しい!」と思ったものしか欲しがらず、それが手に入らなかった場合は何もいらないという子供だった。代用品が与えられて本命を買ってもらえるチャンスがなくなるから、ではなく、いらないものはいらない、欲しいものは絶対に欲しいという子だったのである。

 確か弟の本命は『スマブラDX』だったのだが、なかなか手に入らなかった。ここが晩年と似ていて弟は執念深く、買ってもらえないとため息をつきまくったり何度も欲しがったりして、買う立場でもない俺もちょっと困っていたので、代わりにきまぐれに『エアライド』を買って誘ってみたのだ。

 結果的に弟のため息は止まった。弟が代用品で満足したのは後にも先にもこれっきりだった。

 俺たち兄弟は土日は早起きして『エアライド』に勤しみ、平日は弟の友達や俺の友達なんかでメンバーに入れ替わりがあったがシティトライアルモードで遊びつくした。

 ここも弟のこだわりで、弟がゲームの中で求めるロマンは火力と男らしさである。

 弟は『エアライド』ではヘビースターやレックスウィリーといった重戦車型のマシンを好み、伝説マシンもパワー特化のハイドラ狙いだった。一方の俺は扱いやすさ、快適さを最優先するため、小回りの利くウィリースクーターやルインズスターを好んでいた。

 弟のこのロマン癖はほぼどのゲームでもそうだったと思う。ポケモンでもドサイドンやカイリキーといった鈍足パワータイプが好きで、そもそも『赤緑』の攻略本に書いてあったサイドンのキャッチコピー、「強い! 硬い! 遅い! 男のポケモン!」に惚れこみずっとサイドン系列愛好者だった。俺はスターミーやガブリアスといったやはり扱いやすいポケモンが好きだったな。

 弟は『FF7』のスピンオフで、ヴィンセントが主人公のシューティングゲーム『ダージュオブケルベロス』でも格闘縛りプレイをしていて銃を撃たなかったし、『DQ8』では全員格闘スキルで戦っていた。

 『プロ野球スピリッツ』でもローズ、カブレラ、ラロッカ、フェルナンデスという狂気のパワフル助っ人外国人クリーンナップで襲い掛かってきた。

 『モンハン』も最初はハンマー使いだったが、そのうち双剣使いに移った。弟が亡くなった後に『サンブレイク』のデータを見たが、マイセットには双剣、片手剣、ライトボウガン、スラッシュアックス、ガンランスなんかも登録されていた。

 とにかくゲームが好きなやつであった。




<俺が『エアライダー』を買った日>

 『エアライダー』は楽しみであったが、そもそも前作の『エアライド』の面白かったところはレースではなく、パーティゲームパートのシティトライアルモードであり、一人でシティトライアルをやってもまったく楽しくないだろうなと予想はしていた。

 だがゲーム仲間もいないし、俺はオンラインが苦手だ。

 俺がゲームが下手であり、それでも短気なためゲームで負けると結構マジで落ち込む。そして人見知りなため「こいつ下手だな」と思われたくないのだ。だから俺も数百時間やり込んだ『モンスターハンターライズ:サンブレイク』は一度もオンラインに繋いでいないし、『モンスターハンターダブルクロス』は一度はたまにオンラインに行っても自分一人でクリアしたことのあるクエストしかリクエストしない。『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』もしかりで、4600時間やったがオンライン対戦は一度もやっていない。

 そして普通にレースをやるだけならば『エアライド』&『エアライダー』の名物ディレクターである桜井Dの言う通り「そりゃあ『マリオカート』でよいでしょう!」であり、結局のところ『エアライダー』シリーズの魅力はシティトライアルにある。そのシティトライアルを楽しめないのであれば楽しめないだろう。そして俺は上記の通り短気でせかされるのが嫌いなため、時間にシビアに追われるレースゲームというジャンルがそもそも向いていないのだ。

 だが今回は一人用のストーリーモード、ロードトリップもあるというので、そちらをメインにやって行こうと思っていた。

 『エアライダー』を購入し、パッケージの封を切る前に俺は弟の仏壇に『エアライダー』を供えた。そして普段は自室に繋ぎっぱなしのSWITCH2を弟の仏壇からも見えるリビングのテレビに繋ぎ、始めて……。

 前作『エアライド』の曲をアレンジしたベースがベキベキと鳴るメニュー画面を開き、なんだかとても胸がざわついたのを覚えている。

 いろんな想いがあった。

 一緒にやれたら、とは思いつつも、ケンカが絶えず晩年の病んでいた弟は一緒にやってくれなかったに違いないし、「一緒にやってくれた頃の弟」を求めるのはどこか父と同じく「自分に都合の良い子供/弟」だけを求めているような気もした。

 まぁ……。リメイクではあるが、本当に『エアライド』の正当進化版で『エアライド』という下敷きに忠実な『エアライダー』は、確かに俺のようなおっさんの懐古を刺激するものであったが、その懐古があまりにも強くあの頃の弟と密接すぎた。

 弟存命時の『離散日誌』であれ程口汚く罵っておいて本当に掌返しが申し訳ないのだが……。俺も『エアライド』が本当に楽しかったんだろうな。

 そして、結局一人用モードのロードトリップ、シンプルレースのエアライド、NPCを相手に一人でシティトライアルとやってみたが……。やっぱり一人では楽しめないゲームだったな。




<ここからはガチで弟が関係なくなるゲームに関する内容>

 『エアライダー』発表直前くらいから、俺は『カービィ』シリーズ、『スマブラ』シリーズの生みの親である桜井Dの動画にハマっていた。

 すごく変な言い方になるが、それなりの年齢なのにそれを感じさせない若々しい姿と話し方、頭のキレ、そして優秀と愛嬌がすごくて一種のサイコにも見えてしまうカリスマ性は俺の恩師によく似ていた。

 その桜井Dの動画は見ていて楽しくもあったし参考にもなった。

 とにかく快適であれ、直感的な楽しみを与えようというコンセプトなどなど、桜井Dの哲学を聞いて最近ゲームはどうか、と考えてみると桜井Dの哲学とは異なるゲームの方が最近は多いんじゃないかって気もして、名前は出さないが今年超大作としてリリースされて大酷評だったあのタイトルなんかがまさにそうだな……とか思ったりもした。

 言ってしまえば今のゲーム業界では桜井Dの方が少数派なんだろうが、時代遅れやはみ出しものには思えない。つまり俺はもう桜井Dのカリスマにやられ切っていたわけだ。


 その答え合わせが『エアライダー』であった。

 スティック操作とボタン2つだけの簡単操作、マシンの加速時の集中線や敵キャラを倒した時の派手な吹っ飛びなど、直感的な快感が随所にちりばめられていた。テキストは最小限でありながら情報不足なところはなく、難しく考える必要がほぼない。当然マシン選びやライダー選びといった吟味の要素はあるが、プレイ自体がとても快適だった。

 後は音楽だな! シティトライアルのBGMという今作のプレイヤーが一番長く聴くであろう曲にメインテーマのインストを配置し、そのメインテーマをCMや発売前発表でも繰り返し流すことで「『エアライダー』のテーマはこれなんだな」と長期的に刷り込まれ、それをようやくフルで聴けるタイミングがシティトライアルという最高のタイミングなのもグッドだ。キャラのみならずBGMも歴代オールスターでありながら新曲がきちんとこのポジションに収まるのはすごい。

 思うに桜井Dの哲学って「引き算」でもないし、都度都度「足す」でもない。コンセプトの時点でデカい数字をどんと一回だけ「足し」、それ以降全くブレないというか……。上手い言い方が見つからないが、ゲームとしての情報量やボリュームはすごいのにそれを構成する式は最小のシンプルさなんだよな。だからスッと入って楽しめる。


 ただロードトリップは……。

 俺はこれを一番長く、そしてメインに進めてきたのでそれなりに楽しんではいたのだろう。ただしアクションゲームが苦手な俺はかなりリタイヤしたが、愛機であるルインズスターが解禁されて以降はかなりサクサクと進んだ。真・エンディングを見るためにはロードトリップを周回しなければならないのだが、2週目ははじめからルインズスターが使えるのでほぼ苦戦はなかった。

 そういわけで、ここ最近俺が意識していた桜井Dの哲学は十分に堪能出来るものであったし、俺にシティトライアルを一緒にやる仲間がいればレースゲームだけでなく、『カービィ』シリーズのオールスターお祭り作品としても楽しめたのだろう。




<最後に>

 ↑でも書いたがとにかく俺と弟の仲が良かった……20年間? それは俺と弟とゲームの歴史であった。

 ただし父編が始まってしまったこと、そしてまだ弟の死とどう向き合ったらいいのかわからないし、こうやって弟との「よかった時期」を懐古することは、晩年の弟をこのエッセイで罵倒していたことと矛盾している。お互いにいろいろあった。だが、晩年の弟への憎しみが、俺が弟に対して抱くすべてであったわけではない。

 いずれ俺と弟とのゲームの歴史も扱ってみたいと思っていたが、やはり掌返しや美談化や亡くなった人間でのネタ稼ぎになってしまうのかもな。

 ただ、感想も俺のライフワークであることをご理解いただきたい。そして『カービィのエアライダー』の感想をシンプルに描くことは出来ず、どうしても弟が頭に浮かんだ。そういうことで、今回はご容赦いただきたい。

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