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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
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3話 三篠家の近況

 「家族には無許可でやってるから、急に更新停止になったときは察してくれよな。」。

 この一文がありながらしばしの間休止状態となっていた本エッセイ。家族にバレてクレームが入るなどと言うことはなく、誰の目にも留まらず細々となろうのサーバーに負担をかけるだけのミイラであった。やっていなかったのには理由がある。

 それは2話を書くときにうすぼんやりと「恨み辛みを書くだけでは面白くないどころか不快だなぁ」と感じたことに起因する。恨み辛みや俺や家族の受難など、大体は活動報告では出してしまったものの振り返ってテーマ別にまとめれば数回分にはなるだろう。それって需要あるのかな。このエッセイを読んで引きこもりの身内対策にする人がいるとは思えない。いる、というならば、福祉や役所、医療に相談した話もいつかは載せるだろう。


 3月になり、そろそろ話がまとまってきた。弟ももう27歳になった。祖父が亡くなった直後に俺が家を追放されて一人暮らしを始め、祖父がなくなったのは2017年の2月であるから一人暮らしももう5年か。そりゃ愛猫にも顔を忘れられて威嚇される訳だ。


 家族の近況を報告しよう。このエッセイの主役である弟にも少し異変が生じてきた。

 ゾンビ化である。

 一時は筋トレやランニングで発散した体力や活気、或いはそういったもので溜めていった衝動を怒りに任せて家具を殴る、ご近所トラブルを起こすなど暴れ散らかしていた弟だが、最近はスッカリ大人しくなってしまったという。犯罪の心配をされるよりかは幾分マシだが、母から聞く話、実際に月一程度に帰宅して弟の様子を見る限り、そう簡単な話ではなく、改心、更生したという前向きなものではない。

 うつろになってしまったのだ。昨年末の通報以降、何か栓が抜けたようになってしまい、とにかく力が入らないという。精神的、肉体的に疲弊、摩耗し、趣味の筋トレすら手につかない。

 さらに心の大きな拠り所であったアメリカのプロレス『WWE』はJ‐sportsチャンネルから放送撤退してしまった。一応tvkやTOKYOMXで30分のダイジェストがあるよ、と教えてやったものの「30分なら観ねぇ」、だそうだ。弟とプロレスの話はいつかまとめてみたい。

 ランニングも出来ず、防音カーテンと防音壁と穴ぼこだらけの壁に囲まれた自室で何をしているか、は母ですら定かでないという。とにかくやる気が湧かねぇ、気力がねぇ、何もしたくねぇ、もう疲れた……。そういったフレーズを繰り返し、常に背骨を曲げた状態であるという。肉体的な影響も顕著で慢性的に胃腸を壊し、一口何かを食べるだけでトイレに籠る始末。髪もボサボサ、ヒゲもジョリジョリ、かつては伝説のスーパーサイヤ人ブロリーと謳われた怒りや風貌は一見すると病人のようになってしまった。というか精神的なものだけではなく肉体的にも本物の病人になってしまった。

 しかしここからが弟の厄介なところで、俺と違って医者嫌いの弟は頑として自分の異常を認めない。自分は健康であると言い張って医療のお世話にならないため、食べては下す、を繰り返している。大きな進歩と言えるのは、睡眠障害を受け入れて処方の睡眠薬を飲んで入眠のみスムーズに行えるようになったことか。また自立支援医療制度を使用し始めたことも褒めてあげたい。それでも断眠により健全な睡眠をとれているとは言い難い。しかし大変なことにその薬を処方してくれている開業医の先生が引退するというから大変だ。

 どうなることか、弟。今日は実家で夕食をとったが弟とは会えなかった。




 もう一つネガティブな話題。

 両親の離婚の話題は停滞している。昨年の秋に離婚に合意した二人だが、その後の展開はない。

 離婚の話を持ち掛けられた父は翌朝、ネットで調べた「卒業離婚」略して卒婚というフレーズを机上に挙げ、出来るだけ円満に別れようと考えていたようだが、母の方は父への嫌悪感から一刻も早く別れたいらしい。ただし財産の半分と東京の家だけは貰うというおいおい……な条件。

 しかし二人の間ではもう年末調整の書類のやり取りしかしない両親である。離婚の話も一向に進んでいない。

 父サイドは「離婚の話を持ち掛けてきたのは母の方なんだから母が進めろ」と北陸の地で草野球や野球観戦、サックスの練習に勤しんで退屈しない日々を過ごしている。父は一人離れた地で一人暮らしだが、生まれ故郷であるため周囲に友人や知人は多くおり、決して孤独ではなく充実した生活を過ごしている。どうせ15年近く別居しているし話もしない事実上の離婚状態なのだから離婚しなくても一緒、と考えている。

 母サイドは「離婚の話を突きつけたんだから父の方でやれ」と考え、家に帰れば喋らず何もせずメシにだけは文句を言う次男と鬱屈した日々だ。どうせ15年近く別居しているし話もしない事実上の離婚状態なのだから離婚しても一緒、むしろせいせいするという凄まじい父への嫌悪感。父への恨みと嫌悪はむしろ父への依存を感じさせる。こう書くと母が異常人物のようだが、いずれ話ことになるかもしれないが父が絡まなければ明るく優しく良い母である。




 ポジティブな話題。

 妹の彼氏、通称ピッピとは妹を介した伝言ゲームの形で仲良くさせていただいている。

 『星のカービィ スターアライズ』『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』『ポケットモンスター BDSP』『ポケットモンスター ソード・シールド』『大乱闘スマッシュブラザーズSP』など任天堂ブランドのゲーム、『かくしごと』『ダンダダン』などのマンガ、妹とピッピが飼っている真っ白なアメリカンカールの子猫ちゃん(姪ネコ)の写真や動画……。

 なんだかやりきれねーが妹が姪ネコちゃんの動画をSNSにアップすると瞬時に300いいねが集まるという。300という数字は俺が9年間やっているツイッターのフォロワーと同じ大体数だ。

 ちなみにピッピの職業は原宿のカリスマ美容師である。カリスマ、というところが重要だ。俺を「お兄」と慕ってくれているピッピは一回ぐらいはタダで来店してくださいと言ってくれているようだが、妹曰くは「お兄ちゃんがあんなオシャレなお店行ったら泡吹いて倒れる」そうだ。悔しいがまぁそうだろう。しかし文フリ等のイベントやオフ会の機会があれば、一回くらいはカリスマ美容師の威光を借りて見栄を張りたいものである。『ポケモンレジェンズ アルセウス』や『星のカービィ ディスカバリー』も貸してやろうと思う。

 もしオフ会やイベントで「髪型だけシャキっとしてる『ジョジョの奇妙な冒険』のギアッチョがいる」と思ったらそれは原宿のカリスマ美容師のパワーを借りた俺である。

 ただし妹関連でも今日、一つ残念な話を聞いた。先述の通り俺は今日、実家で夕食を取ったのだが、それが終わって一服していると母が言った。

「そういえばあんたには行ってなかったけど、妹と北海道行くのよ」

 ……!?

「北海道行くの?」

「うん。あ、でも函館だけよ。函館であんたの苦手な魚介類を食べるだけだから。あとわたしと妹が一緒にいるとショッピングで退屈なの知ってるでしょう? だから今回はあんたを誘うのはよしとこうってなったの」

 別行動とか……そういうのあるだろう……。北海道……。北海道ォ……。

「また行くから! その時は誘ってあげる」

 北海道……ッ!

 最近旅行に目覚めた俺は日帰り旅行を繰り返し、主に横浜に観光に行っている。しかし横浜までの道のりは毎回20キロ以上歩いているので交通は千円もかからない。

 メシなんて東京でも北海道でもマックでもいい……。ショッピング? 知ったことか。春の北海道をお散歩できるなんて最高なはずなのにィ……。


 以上だ。

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