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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第3章 三篠家介護編
28/31

第28話 三篠森・N、何が責任かわからなくなる。

 大分落ち着いてきたが、この数週間の俺の状態は活動報告で本誌既報の通り。

 家族の件はいろいろと展開があり、活動報告でも書いたが俺はストレスでそもそも日本語として成立させることが出来ないくらいの状態となったため物書きを休んでいた。読解は可能なこと、仕事には支障がなかったことは幸いだが、普通に欠勤やむなしの日が増えてしまっていた。

 そういう訳で本職?の『アブソリュート・トラッシュ』もこのコンディションでは書けないとして休んでいるが、今回の『離散日誌』はその日本語のリハビリみたいな側面もあるとして、日本語の緩さはご容赦いただきたい。とりあえず文章は簡潔に、細かく区切っていくことを心掛けて書いていこうと思う。


 前回の続きだが、テンドウなる人物は土曜日であろうとも父にLINEで連絡し、株式市場が閉まっている土曜日でも指示を出している。前回の離散日誌の翌日に父の地元警察に連絡した。土曜日だったため普通のお巡りさん二人だったが、状況からみて99パーセント詐欺であり、父が警察に提供したテンドウの口座が中国やベトナムのものでないか調べるとのことだった。妹と俺も二馬力で父の株を止めようとしたが「恥知らず」「世間知らず」「バカ」「喚くな」と言われる。

 月曜日に刑事さんから連絡が来たが、父が警察に教えたテンドウの口座は証券会社のものであったため、事件性なしとして処理された。

 つまりテンドウは詐欺師ではなく、父はただ普通に株で損をしているだけだった。ごめんなさい、テンドウさん。本当に父を株で儲けさせてあげたかっただけなんだね……。何百万も損させたけど、手数料は入って良かったね……。


 さて、父の足だが、7月のはじめに手術が決まった。人工関節の一歩手前のようなもので、全身麻酔と大量出血が伴うものである。

 最初の診察を受けた5月末に禁煙と飲酒量のコントロール、出術直前から麻酔と相性の悪い血糖値の薬をやめる、という約束をした。

 だがすべて守れていなかった。

 初診から再診までの二週間の間で、「二日にいっぺん、3~5本吸う」ということで禁煙は守れず。酒は「イベントがあった」として暴飲暴食。何度も確認した血糖値の薬は初診の翌日から抜いていたため、再診時の血糖値は490というラディッツ戦で重りのターバンとマントを外したピッコロさんの戦闘力を上回るすさまじい数値であった。

 当然手術は延期になる。俺は……。なんのために田舎まで……。

 「介護認定が降りたら介護休暇を使えるよ」と父には言ってきたが、父は自分の痛みを優先……。その気持ちはわからなくもないが、介護認定が下りる前に受診したためこの日は当然介護休暇ではない。そして本誌既報の通りだが、昨年の7月に転職した後弟の件で休みまくった俺は既定の出勤日数に到達していないため有給を持っていない。だからこの休みも欠勤である。

 そもそも田舎で手術を受けるのだって、東京や埼玉で手術すれば俺は泊まらずに日帰りでどうにかなるのに、父の「東京まで行くのが面倒くせぇ」の一声で田舎で手術をやる。

 あの二日間、俺はただ病院で「お父様が喫煙したため予定していた日に手術は出来ません」と言われるだけに……。

 病院では父は車イスの上でぼんやりし、居眠りをしていたがあれは490という凄まじい血糖値による体調不良だったのだろう。それでもテンドウへの電話は欠かさず、診察室の前の他の患者さんがいるベンチで電話。そして病院内のATMでテンドウに振り込む。

 手術延期の可能性が出た時、俺は父に「俺に何か言うことあるよね?」と聞いたが父は「何もない」と断言した。「手術できないかもしれないんだよ?」→「まだ延期と決まった訳ではない」。

 正式に延期が決まっても謝罪はない。

「次からはタバコを吸っても黙っておく」

 と医師の前で言う。


 ……。

 この前日から俺は病院の近くにホテルをとっており、父は友人に高速道路含めて1時間超の道のりの運転を頼んで病院に集合だった。ちなみに病院から最寄り駅までは30分に1本のバスで30分かかる。

 再診が終わった後、再々診と手術の日程の再設定が終わった。父は帰りにラーメンを食いたいと言い、俺はいらないといった。すると一緒にラーメンを食わない俺に用はなかったのか病院に置き去りにされた。

 幸いにもバスはすぐに来たためすぐに駅まで戻り、東京行きの新幹線を探したが10分後に急行的なものが来る。だが券売機は混んでいる……。なんとかギリギリで間に合った上、駅弁は俺の苦手な海鮮しかなく食べられるものはなかったため朝におにぎりを一個食べた切りで東京まで直行した。

 朝から何も食べないまま病院→新幹線となった俺は、夕方東京についてすぐに包括支援担当者様に手術できなかった旨を報告し、在来線で帰路についた……。


 だがこれは序章である。




 〇




 田舎、移動の間は呆れに頭を占められていた俺は、家に着くと激しい怒りと徒労感に襲われた。

 俺は何のために田舎まで……。家族の助言よりも株やラーメンを優先し、感謝も謝罪もない父のために……。確かに、父は病院で車イスを押す俺に、「もう森がいねぇと何も出来ねぇな」とはいうが、それどまりだ。感謝や謝罪はない。手術延期が決定した時も「病院は融通が利かねぇな」「これで足の痛みが長引くじゃねぇか」などと文句をひとしきり言った後、少し反省したのか「恥ずかしいことになったな」と呟いてはいるが、それは父個人の感情でありスケジュールを再設定することになる病院サイドや欠勤してきた俺に対する謝罪はない。さらに昨年の両親離婚時に名字を母の方に変えたことで今更怒鳴られたり……。

 凄まじい脱力感に襲われ、俺は三日間食事をとれなかったり家で動けなくなったりと露骨に影響が出始めた。

 『離散日誌』では本誌既報の通りに弟が引きこもっていた時期は、ありとあらゆる手を尽くしてどうにかしようとあちこちに電話をかけていたり出向いていたりした俺は、今回の父の件は本当にお手上げに近かった。

 毎朝の安否確認のLINEも来なくなったが、来ていた頃は毎朝大谷翔平の話を聞かされていた。俺が大谷翔平にうんざりしていることも本誌既報の通りだ。むしろLINEが来なくなったのは有難い。


 ……。

 父にとってプラスになることはもうやれない。本人にその意思がないし、もう手に負えない。やれることは入院や手術の保証人、もしもの時の葬儀くらいだろうが、俺としては家族の忠告よりもテンドウを優先する虚しさが一番つらかった。

 と、いうことでとりあえず妹と父の財産についてどうするか考えることにした。二人で一致したのは、まずは生前贈与をしてもらった後、遺産は全て相続放棄するというものである。

 このままでは父は遅かれ早かれテンドウによって破滅し、借金することになるだろう。それに父に対する愛想も尽きたため、俺が父と関わるのは次回の診察か手術までである。

 次回の診察でまた喫煙発覚したり血糖値コントロールの甘さで手術延期になった場合はそこまでのお付き合い、延期にならず手術が終わってもそこまでのお付き合いだ。

 それにいくら俺たち兄妹に贈与したところで父は「絶対に損をしない仕組み」で株をやっている訳だから元手が残っている限り金は無限に増やせる理屈になる。

 妹、俺は、チャットGPTに父の性格や予想される展開を教えた上で生前贈与を求める文書の作成をやってもらっている。

 大分気持ちも落ち着いてきた。生前贈与があったら新しい自転車と三匹目の猫でも飼おう。


 ……という話を昨日、電話で友人にした。いつも出てくる自称イケメンの友人なのだが、

「結局金が欲しくて父に関わってるだけじゃん」

「自分から勝手に父に関わってるんだからお前が落ち込むのは自業自得」

「一人暮らしするんじゃなかったの? 猫飼うとか矛盾してない?」

 とやたら攻撃的なことを言われた。そもそもその話題が始まる前から昨日の友人は様子がおかしく「人を効果的に傷つけたいんだよねぇ」と口走ったりしていた。元よりマンガの生意気キャラやサイコパスキャラが好きなのは知っていたが……。

 曰く、

「弟さんが死んだときに大谷翔平見てたような父は見捨てるべき」

「お母上も妹さんもその時に見捨てたじゃん。なんでお前は見捨てなかったの?」

「弟の件もそうだし、お前は結局家族に依存して、家族のせいにして新しいことに挑戦しないだけ」

「弟の件の時に見捨てなかったお前の責任」

「なんで今回手術延期になった時に見捨てなかったの?」

「『もう一回父にチャンスを与えたい』とかなんでそんな上から目線なの?」

 と、本当に昨日の友人は何かがおかしかった。まぁそういう日もあるのだろうが、まだ回復が済んでいない俺にはかなりきついものがあった。

 少しケンカみたいになったが、わかってもらおうとは思わないしわかるとも思えない。

 確かに生前の弟と俺は仲が悪く、一時は本気で死んでほしいとも思っていたがいざ死んでしまうと己の気持ちと言葉の軽さを心底猛省した。だからこそその死を軽く扱った父は妹と母にあの時点で見限られてしまったのだが、俺は弟が抱え続けていた孤独という深い深い闇を父も抱えていることを知っている。

 確かに父には許しがたい言動や態度はあり、見捨てられても仕方はないのだろうが、孤独を抱えたまま一人で死ぬのは、自業自得とは思えなかった。それほどの“業”とは思えなかった。

 友人に限らず、家族も職場の人も「次男が死んでも大谷翔平が大事だったようなお父さんとは縁を切るか距離を置くべき」とは言ったが、弟が孤独に死んだからこそ父を孤独に死なせたくないと思った。それに30年以上お世話になった人を、まだ1年も経っていない出来事をきっかけに完全に切り捨てるというのは簡単ではないのだ。

 ……俺がおかしいのか?

 そう迷っていた俺は、本棚から一冊の本をとった。

 沖田×華氏の『父よ、あなたは…』だ。家族を顧みない素行不良の父を家族が見捨てて17年、孤独死した父を家族はどう扱うのかというエッセイマンガだ。

 ……。

 弟の件があった時に父を見捨てるべきだったのか、それともここまで関わってしまった以上最後までお世話をするべきなのか、それとも俺のようにリタイアすべきなのか。

 『父よ、あなたは…』では沖田氏の弟マサが、絶縁して10年以上経つ父の死後の検視や葬儀を進めていく様子、その後の相続関係に力を尽くす様子が描かれており、とにかく自分にとって都合のいい解釈をしたい俺には、「自分は間違ってなかった」と肯定してくれるような内容だった。

 まとまっていなくて申し訳ない。あくまでも日本語のリハビリ、として受け取っていただきたい。

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