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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
18/30

第18話 俺ぁお節介焼きの三篠森・N!

 『誰だ?』って聞きたそうな表情(カオ)してんで自己紹介させてもらうがよ! 俺ぁお節介焼きの三篠森・N!


 ……。……? ふと気付いたが、俺のこの随筆だけを読んでいる人って

「三篠森・Nってこんな人か」

 ってわかっていないんじゃないかと思う。「あの人は活動報告が本職の人」という何とも言えないお言葉をいただいた俺だが、その活動報告を知らずこの随筆だけを読んでいる人には、家族が不仲で貧乏で、喧嘩っ早いがメンタルの弱いという……そういうところしか伝わっていないと思う。大体あっているが、この随筆は多分俺と弟のダブル主人公なのに俺という人間の人物像が伝わっていないと思う。特に経歴。大した経歴はないが、同じ落ちこぼれである俺と弟の決定的な経歴の差は、次回の『窓ぎわの三篠森・Nちゃん』で伝えようと思う。久々にほのぼの回になる予定だ。


 その前に、前回壮絶な内容で終わった本随筆。またもや大きな動きがあったので、報告したい。


 年末。件の警察大騒動があって以降、母とはマトモに話していなかった。気まずかったのだ。ただし俺、母、妹の三人のグループLINEではなんとなく妹を介す形での会話はあった。特に元旦の地震で新潟県西部の海沿いに住む父(海岸から父の家まで建物は一つしかない)が避難民となったことで情報交換は活発に行われ、話す限りでは母の正気、そして妹の前では普通であることがなんとなくわかった。

 付け加え、父の家も震災により一部被害が出て一時避難になったが、今は問題なく暮らして憩っていることをお伝えする。

 そしてこのグループLINEの三人は共通して『ゴールデンカムイ』の大ファンであり、劇場版の公開から母の心も少し和らいでいったように思えた。

 また、俺と母は小説家の万城目学先生の大ファンであり、ここで話すことではないかもしれないが俺の最も好きな小説家が万城目学先生だ。俺の人生ベスト小説は『鹿男あをによし』であり、俺と母は妹にも布教すべく『鹿男あをによし』『ヒトコブラクダ層ぜっと(文庫版では『ヒトコブラクダ層戦争』に改題)』をプレゼントした。

 その万城目学先生の直木賞受賞も追い風となり、また母と話が出来るようになった。

 そろそろ会って話せるか。

 俺は実家から逃げる時に『鹿男あをによし』を持ってこられなかったので、それを持ってきてくれないか、と頼んだのだ。母は快諾してくれた。


 だが! 『会話』は既に『説得』に変わっているんだぜッ!


 年末の警察沙汰の前。ファミレスで母が号泣した後、俺は区の生活サポートセンターなる窓口に我が家の事情を相談した。この窓口担当者がマメな方であり、年明け早々、1月4日に

「年末年始はお変わりありませんでしたか」

 と連絡をくれた。そして俺は警察沙汰を報告。保健所との連携を強く勧められた。

 ……。

 だが俺は、弟とのコンタクトで「でしゃばり」「お節介」「上から目線」とたびたび言われたことを少し気にしていた。俺がこうやってあちこちに連絡することもまた、でしゃばりでお節介なのかと……。そして落ち込み、カウンセリングのお世話になると決めると同時に、俺は捨て身で、でしゃばりやお節介は覚悟の上で出来ることは全てやろうと決めた。


 納得は全てに優先するぜッ!


 まず保健所に行く!

 これも次回話すことだが、俺の仕事は不定期に休みがあり、この時期は多い。

 まず保健所には電話し、事情を説明して「~~日に伺います!」と宣言する。無論、それでは担当者様、この場合は保健師さんだが、都合がつかない場合もあるが、このように宣言すると「~~日なら大丈夫です」と返ってくることが多い。その日が俺の休みでなければ有休を使うまでだ。また交付されたからな。

 そして保健師さんには5000字を使った家族と弟の経緯、俺たちが取り組んできたこと、そしてメインで訴えたい母の惨状のプリント(母からの鬱LINEのスクショ付き)を押し付ける。

 保健師さんは若い女性で伊藤沙莉をつるんとさせたようなかわいらしい女性であり、若い女性が大好きな弟が懐きそうな方だった。その一方で、この保健師さんは異動して来て以降一回我が家を訪れた後はノータッチだったという情報も掴んでいるので、執拗に訴えた。

 そこで、弟が母に対し行っている暴言や行動制限はDVに当たる可能性があるという言葉を聞く。さらに今後は我が家の問題にも取り組んでくれるといい、やはりどの窓口や部署も言う通り弟と母を引き離すこと……。手段は様々だ。別居による逃亡、旅行によるガス抜き。今回はどちらでもいいが、そうすることで共依存を絶つよう説いてくれると約束してくれた。


 さて……。母は高齢者だ。区には保険相談所以外にも、包括支援センターという高齢者のケアや生活に関する事務所もある。

 弱点はねぇーと言ってるだろうが田吾作がッ!

 ここにも電話をする。

「60代の母が長期引きこもりの弟にDVを受けていまして……」

 の掴み文句から始め、また押しかけて例の資料を押し付ける。ここでは、全て保健師さんの双肩にかかっているという回答ではあったが、我が家というヤベェ家族がいるということを認知してもらえた。


 さらに俺自身も長年睡眠障害を抱えて月一でメンタルクリニックに通っており、そこで警察沙汰のことを先生に話してみた。先生は80を超えている(デェ)ベテランだが、つやつやの肌とふさふさの髪、江戸っ子な口調と声質と気質は老いることがない。強い言葉を使わず、最近は家族のことを相談しても「気にすんなー」とやや流し気味ではあったが今回の件はしっかりと聞いてくれ、件の訪問看護師の失態に関しては

「失格だ。そんな奴は失格だ」

 と、あの先生が感情を露わにしているところを初めて見た。そして母のことは

「うつ状態に入っている。上手く弟と距離を置ければいいんだが」

 と。


 ここで俺は一つ気が付いた。年が明け、今年も弟問題は進展しないだろうと気持ちが落ち込んで、映画のチケットをとったのに部屋で一人「動けない、動けない」と繰り返した日もあったが、保健所や包括支援センターなどに働きかけていくことで何かが進展するような気がして、却って気分が軽くなったのだ。そのため俺は元気である。言い換えれば少し元気がありすぎ、つまり躁かもしれない。


 ここまで、国、都、区、保健所、包括支援センター、俺の主治医、クソッタレの訪問看護師も含め全員が

「弟と母は離れるべき」

 と言った。

 そして先日の金曜日、伊藤沙莉似の保健師さんは母の元を訪れ、そこで二時間話したという。それもあり、母も心境の変化があって俺と話してくれたのだろう。

 日曜日。母が俺の部屋に来た。先述の通り『鹿男あをによし』を持ってきてくれたのである。あらためて言うまでもないが、次こそ実家帰宅で俺は本当に弟に殴られるため、帰ることは選択肢にはない。


 とはいえ、弟は警察沙汰以降、「兄貴を殺させろ。もしくは殴らせろ」という母への説教を一切やめたという。ビビったのだ。

 ゲロ以下のにおいがプンプンするぜ!

 その説教がなくなって母の気分が軽いというのもあるだろう。


 そして母も弟と少し距離を置く必要性を感じてくれているようだった。

 まず、駅で切符も買えない重要人物である弟だが、訪問看護師が来るので家事の問題はクリア。そしてあれだけの失態を犯した訪問看護師は厚顔無恥に今でもうちに来、そして弟と訪問看護師の関係は変わらず良好であるという。弟も訪問看護師を友達か何かだと思っているのだろう。

 そして金銭の問題であるが、母の仕事は歩合であり、訪問看護の立ち合いのために週四勤務だがそのせいで月収には十数万の影響が出ているという。ただでさえ火の車であるため、母が仕事を休んで旅行に行くのは現実的ではないと母は言う。また、ウィークリーマンションやマンスリーマンションで暮らすためには一時的とはいえ引っ越しなので荷物が多くなり、荷造りの場を見られると弟の「逃がさないぞ」が発動するため、避難は不可能だ。

 だがここで俺のキングクリムゾン・エピタフが発動する。未来予知だ。金がない、が来ることは想定済みだ。


「俺がお父さんと交渉して旅行の資金を出させる。100万円から150万円」


 この随筆のあらすじ欄にもある通り、かつては「父の話題さえ出なければ理想的な母」だったが父の話題が出たことで急変。

 弟は発達障害で、その発達障害は父から受け継いだものだとか(父は発達障害の診断を受けていない)、あの人はケチだとか、わたしに対する情がないからビタ一文出さないとか言っていたが、俺はまとまった金を用意することを約束した。

 

 仕事を休む件だが、職場は次男が大変だということを理解してくれているそうなので、休めなくはないが……。

 ここまでの根回しは出来ず、俺も頭が回っていなかったが、一昨年俺の心が折れた時は最初の一週間は仕事を休む罪悪感がひどかった。母が休んでも同じことが起きるだろうが、俺は適応障害によるうつ状態という診断書を出してもらってから僅か一週間で立ち直った。診断書の御触書があればどうにかなるし、俺の主治医は母のこともよく知っている上に「うつ状態」と言っているので診断書が出れば安心して休めるはずだ。これは今度会う時に話そうと思う。


 ここまで二時間の交渉。母もかなり前向きに、旅行の方向で考えてくれているようだった。


 そして母は帰宅した……。という前にだ。

 俺は弟と訪問看護師、弟のかかっている医療機関のことを母から聞き、弟が自立支援制度を使用しているという情報をゲット。そこからの具体的な医療費を聞き出したことにより、世帯主である父の貯蓄におおまかなアタリをつけた。おそらく、母が数か月旅行しても大丈夫なくらいの蓄えはあるはずだ。


 父との交渉開始。内容は割愛するが、ここで俺は母の旅行資金に80万円の出資を約束させた。当初の予定額の半分くらいではあるが、パスポートを失効した母である。国内旅行で自分の蓄え+80万があればしばらくは休めるだろう。

 問題はここから母がやっぱり弟とは離れられないから『だが断る』になることだが、80万円だぞ……。

 これは一種の脅迫になってしまうが、80万円は正しく旅行に使ってもらいたい。


 母よ……。この80万円に刻んであるこの言葉をお前にに捧げよう! 

『LUCK!』(幸運を)

そして 君の旅先へこれを持って行けッ!

いったん生活を捨てて仕事や弟と離れる『PLUCK』(勇気をッ!)


 ちなみに母に80万円ゲットの報告をすると、母は昼にあった時よりもだいぶ気持ちや口調が軽いようだった。


「テレビの音がうるさいでしょう?」

「別に」

「『スコーピオンキング』観てたの。さっきまでブロリーも観てたんだけどね」

 そこからは母も「どこへ行こうかしら」と本当に……。本当に俺が救われる言葉を呟いていた。

「まぁ、その……。あとでアンタに秘密のLINE送るわ」

「え……?」

 まさか父がごねたのか。

 しかしやってきたLINEは、弟が暴れ出した、という内容だった。


「兄貴に俺が『スコーピオンキング』観てたことバラすんじゃねぇ! 個人情報漏洩だ!」


 で壁と床バンバンだという。

 アホちゃいますのん。『スコーピオンキング』観てたことの何が個人情報やねん。

 ほら、ワイは去年、大阪と奈良に旅行に行ってまっしゃろ、ツッコミでは関西弁出てまうねん。

 だが俺は非常に楽しかった一人旅行。母もしっかりと心身を休め、弟にも母がいないことで自らの無力と状態を客観的に知ってほしいものである。


 これが、俺の一か月の働きである。

 俺ぁお節介焼きの三篠森・N!

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