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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
17/30

第17話 俺vs母vs弟vs警察4人 三篠森・Nの2023年で一番悲惨な日(今までで一番壮絶な内容)

 警察沙汰になった。

 何が起きたかの経緯を話して行こう。


<訪問看護師の失態>

今回から「訪問看護師さん」ではなく「訪問看護師」に格下げになった通り、訪問看護師大失態。俺の介入をバラしたことにより、弟はバーストアタック“大逆鱗クラッシュ”を発動した。

 それにより連日にわたり母に数時間の説教をかましている。


「親でもないやつが出しゃばっている。あいつ(俺のこと)を殺させろ。もしくは殴らせろ」。


 それを連日聞かされているそうだ。

 ちなみに前回の離散日誌から今回までの間に俺はコロナに罹患した。かかりつけの病院は実家の方が近く、風邪症状のある人間は極力院内に入れないという方針から、予約を取った後はいったん帰宅して順番を待つという方式なので、実家で待てないか、と相談したら弟は

「殺していいなら来てもいい」

 と言ったそうだ。お前……コロナで死ぬかお前に殺されるかの二択かよ。


 そんなこんなで怒りの収まらない弟。どんどんメンタルを病んでいく母。一日おきに母から鬱LINEが来て

「食事も作れない」

「わたしが全て間違っていた」

「死にたい」

 と。

 そのほかの内容に

「食事を作ったり買い物をする気力も湧かない」

「年末年始を寂しく過ごすのが可哀そうだから料理を持っていこうと思ったけど焦がした」

 など、通常の生活力と判断力が失われ、さらに

「弟も悩んでいます」

 とこの期に及んだ弟擁護も当然忘れない。


 そして昨日、母も仕事納めで少しは気が楽になったかと思いきや、俺が自宅でTVを観ていると母から着電。弟が俺に家に来いと言っているという。そして俺を殺すという。

 母の電話の向こうでは喚く弟。そして弟は母の電話を強奪し、可能な限り平静を装ったのかとにかく「来い」と碇ゲンドウ並みの圧で呼び出し。

 そして行ってやった。

 弟はキレず、暴力も振るわなかったが会話はヒートアップしていく。ここの内容は後で話すが、この間ずっと母は泣いている。

 そして弟が俺に暴力による威嚇を放ち始め……というか俺に暴力を振るうと宣言した頃、母が錯乱した。

 自分の人生は意味がない、もうどうでもいい、兄弟同士のケンカは見たくない、だからこれから死ぬ、と言って外に出ようと大暴れした。弟が母を取り押さえ、俺が通報した。

 最初は交番の警察官が二人いらっしゃった。その後生活安全課の刑事さんが二人来た。どうやら外にもいたようだ。


 そして解散し、現在に至る。


 詳しい話をしていこう。

 俺と弟の間にどんな会話があったのかだ。


・弟の主張

)和解してやっても良い。

 和解してやっても良い。一緒にゲームをやってやってもいいし、一か月に一時間くらいなら帰宅しても良い。その代わり命令するな。上から目線で話すな。(ちなみに俺の言葉は全て弟にとって「上から目線」であるため基本的に発言権はない)。それから俺を恨むな。それだと気分が悪い。

 →和解出来るものならしてみたい。弟が本気で和解するつもりなら今までの恨みや怒りは忘れる。だが弟の提示した条件って和解というよりも自分に都合の良い奴隷では? ただしこの反論はしない。俺は「和解出来るならしたい」と言ったが、「兄貴以外の家族が俺を恨んでるから気分が悪い」と向こうから破棄。


)上から目線で話すな。

 自分個人の関係である訪問看護師に介入したことは絶対に許さない。そもそも昔からお前は風呂掃除をしろとか兄の圧力を使ってきてウザかった。出しゃばるな。

 →それについては一部こちらも謝罪する部分はある。だが俺が今話していることは命令ではなく提示であり、ここまで問題が大きくなってしまったのならもう上とか下とかない。




・俺の主張

)母を自由にしてやれ。

 母の心身は限界だ。お前は母を追い詰めていないと言っているが、仕事が帰ってきてお前がいるだけでどれだけ負担か想像しろ。お前がいるから母は毎日食事を作らなきゃいけないし、最近ではそれすら出来ていない。母に少し時間と余裕をやれ。

 母曰く、お前は「母がいないと食事もとれないしゴミも捨てられないから逃がさないぞ」と言っているそうじゃないか。

 →弟曰く「俺は母を圧迫していない」。負担を減らすにはどうしろと言うのだ、というので、「病院か施設に入れ」というと「お前が指図するな」と返される。


)障害者年金を受けろ。

 父は定年退職、母も薄給で家計は火の車だ。お前が障害者年金を受けてくれればどれだけ楽になるか想像しろ。その金額があればお前も多少は一人で生活出来る。その間に母には長期の旅行に行ってもらうとかでリフレッシュさせろ。

 →「俺は健康だ」。


)新しい人間関係を作れ

 俺と母の言うことは「指図」「嫌味」「人の気持ちを考えていない」なら、誰か話せる人間を作れ。週一のバイトでもいいからやってみろ。

 →「指図するな」。


)働け

 もし和解出来て家族間の軋轢の問題が解決出来ても、お前が働かないと経済の問題は解決出来ない。でも和解から始められるのであれば和解から始めよう。

→上記の奴隷の条件を提示された後に「お前が指図するな」でシャットアウト。


 ここで弟がシャドーボクシングで威嚇を始める。


「ここでお前が俺を殴って満足してそれで年金受けるなら殴れよ。その代わり顔意外な」

「なんでだ」

「仕事があるからだよ」

「マスクをしろ」

「メガネを壊すなよ」

「関係ない」

「言っとくけど暴力なんて社会で何の意味もないからな」

「兄貴だって俺が小学生の時殴ったろ」

「殴ったかもしれないけど、だから今こうやって“損”してるだろ。社会に出たら暴力は損しかないからな」

「さっきから社会社会うるせぇな。社会に出てるのはそんなに偉いのかよ」

「偉いに決まってんだろ」

「嫌味っぽいこと言うな。俺が好き好んでこの生活してると思うか?」

「思わない。でもお前は自分の内面から来る悩みしかない。俺たち家族は家族仲の悩みも抱え、それでいて家計や仕事の辛さみたいな外側の悩みも抱えている。ならば内面の悩みしかないお前が折れろ」


 そして俺の肩に手を回し、にやぁっと笑いながら「なぁ、オニイチャン。一発殴らせてくれない?」。流行ってんのかな、アニメでこういうサイコパス気取り。

 ここで母が「これから死ぬ」と宣言して錯乱。そして俺が通報。


 警察が来るまでの間も母は泣き喚く。


「これでわたしもキ〇ガイだわ! ふさわしい末路ね!」

「もう看護師の仕事は続けられない! お前(俺のこと)が奪った!」

「生き甲斐だった仕事を奪われるくらいなら自殺する!」


 暴れて泣き喚く母を取り押さえる。

 ここで弟がビビり始める。


「今から通報取り消すことって出来ないのか?」


 出来てもしねぇよ。俺は……どこかホッとしている部分もあった。もうこの家族は自力では何も解決出来ない。この錯乱ぶりだと恐らくは母は精神病院に入院で、そして母の言う通り看護師の職は辞さなきゃいけないだろう。

 だがこれが報いだ。

 弟により、母以外の俺、父、妹は家を奪われ、家で過ごしていれば貯められたはずの金を奪われた。猫に会う権利も奪われた。妹は5年前の交通事故で全身を複数個所骨折して500ミリのペットボトルすら持てない状態だったのに弟のせいで一人での静養を強いられ、俺が毎日仕事帰りに妹の家に物資を運んでいた。

 コロナで39度近い熱にうなされた俺は家で病院の順番待ちをしたいと言っただけで殺すと言われた。

 そしてふと気付いたが、クソッタレの訪問看護師のクソミスから数週間。毎日弟は母に「兄貴を殺させろ」と説教していて、そして俺が呼ばれたということは、俺は昨日、母公認で弟に殺される予定だったのである。

 警察が来た後も母は「あの子は内弁慶な小心者だから本当は殺したり殴ったりなんかできないのよ」とか言っていたが、28歳にもなって「殺す」という言葉の意味、重みを知らない、では済まされない。


 まぁ話を戻すが、警察が来ることは「報い」である。おそらく弟がビビり始めたのは、この三年で二回も警察沙汰を起こしているので自分が警察に注視されているのでは、という不安だったのだろうが、これで弟が警察に連れていかれて年末年始を房で過ごすならこれ以上のことはない。

 それに母が精神病院に入院すれば、今日俺が一番訴えたかった「母の現状に対する変化」は果たされ、入院している間は母も弟に会わずに済む。

 連れていってほしかった。母の状態が正常ではないことはもうわかっていたし、いきがいである看護師の仕事など捨ててでも向き合わなきゃいけない試練がある。




 …

 ……


 まず最初に来たのは交番のお巡りさん。若い女性……弟が大好きな若い女性とダンディなベテランさんである。

 まずは俺が外でダンディから軽く聴取。

 その間、ハコヅメの交番女子が家の中へ。

 そして交代で家の中に入り、母と一緒に交番女子と話すが、俺はここで限界を迎えて泣き喚いた。やはり弟のせいで母が仕事を奪われる理不尽がキツかったのだ。


「何にも変わらないんでしょうねぇ! 八年間何にも変わらなかったんで、今日も何も変わらないんでしょうねぇ! 泣き寝入りするしかないってわかってるんですけど諦めきれないんですよぉ! 弟が警察沙汰を起こすのは今回が初めてじゃないんですけど何も変わりませんでした! 本当に悔しくてたまらないけどやっぱり今日も何も変わらないと思います!」


 だが泣いても何も変わらないことがわかってすぐに泣き止んだ。その後生活安全課の刑事さんが来て再度事情聴取。さすがに察してくれたのか、弟はずっと別室隔離。

 生活安全課の刑事さんにこう訊かれた。


「今はお母さんは落ち着いていますけど、通報者であるお兄さんはお母さんに病院に入って欲しいですか?」


 悩んだ末に「はい」と答えた。

 そして「お前のせいで仕事を失う」「生き甲斐を奪われるので自殺する」とまた言われる。だがその一方で、母は「警察の皆様が帰られたら次男はまた大暴れすると思います」とも言っていた。

 しかし警察の皆様は何も出来ない。何故なら警察の皆様の前で弟が暴れていないから。


 そして母は落ち着いたということで入院は免れ、俺と弟の兄弟ゲンカで処理された。クソッタレ。

 その間、弟は別室で

「僕も本当は働かないといけないと思っています」

「家族には悪いと思っています」

 と言っていたようで、警察の皆様はコロっと騙され

「弟さんもああ言っていますので、今日をきっかけに変わると思います」

 と見逃した。


 一応、この後弟が暴れる、暴れなくても母に説教をすることは確定的なことを俺と母から伝えると

「何かあったら通報してください」

「お母さまを一時的にどこか安全な場所にお連れすることは出来ます」

 とは言ってくれたのだが、母は俺が通報した時点で「恥晒し」だの「お前がオオゴトにした」と恨み辛みを言っていたくらいなので、母はこの後弟に足を折られても警察は呼ばないだろうし、何度も言っていたように「内弁慶で小心者だから大したことは出来ない」と弟は口先だけのキャワイ子ちゃんだと信じて疑わず、さらに「私が壊れたらこの家は終わりなので、私が弟の面倒を見ます」と既に壊れているのにその自覚すらない。


「カウンセリングにかかってくれって何回も言ったよね?」


 と母に尋ねる。


「わたしには友達がいる。資格なんて持っていなくても友達と話せばカウンセリング以上に効果があるの」

「でもその友達に会うのって今は弟に制限されているよね?」

「……」


 ズッ友は、弟に奪われたんだよ。



 …

 ……


「それでは我々は次も行かねばならないのですが、この件は兄弟ゲンカですので、お兄さんが帰られたら終わりとします」


 ……。

 もう二度とこの家には帰れないな、次こそ本当に殺される。

 それでも猫には会えなかった。

 そして外に出る。もう夜の8時だ。そこで20分放置。

 刑事さんが出て来て、控えめにドアを開けて出てくる。刑事さん二人がドアをくぐると、弟がぐわっと扉を開いて俺を威嚇した。

 やっぱり何も変わらなかった。

 そして、訪問看護師は次からどの面下げてうちに来るんだろうか。弟と訪問看護師の間にまだ信頼関係はあるのだろうか。八方ふさがり。




 その後、自称イケメンの友人と電話してこの件を報告した後、他愛ない話も含めて3時間38分話した。終わったのは夜中の1時過ぎだった。

 本当に救われた。あいつがいなかったらもう発狂していた。この友人とはもう12年の付き合いだが、今が一番仲が良い。ここ最近は週2の電話が毎回2時間を超える。俺たちはオールナイトニッポンと呼んでいる。昨日はスペシャルウィークだったという訳だな。

 弟には一人もいない友達。弟が母から奪った友達。俺にはまだいてよかった……。


 その友人も、職場の上司も、あろうことか父、それから友人のオカンからも、

「家族のことはもう忘れるか距離を置き、気楽に過ごせ」

 と言っている。そうしたい。だが母から2スクロール分の鬱LINEも来まくるし、この日みたいに、殺されに来てくれと呼びだされることもある。

 それに俺はもう引き下がれない。弟に裁きを下すまで絶対に俺は弟を許さない。

 それを聞いて友人は

「兄さん復讐鬼ですやんwww サスケかよwww 木の葉の里襲っちゃあきまへんでwww」

 と笑い飛ばしてくれた。本当にありがたい。

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