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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
11/31

第11話 帰省と旅行の土産

 様々な事情があり、前回から大分間が開いてしまった。

 普段の活動報告等を追ってくださっている方ならわかるが、こちらのエッセイしか読んでいない方々は前回の病みモードで終わっていると思うので、その後のことから話して行こうと思う。




①体調はすぐによくなった。

 前回は適応障害による鬱状態に陥りしばし仕事を休む、というところで終わったが……。

 二週間休んで一週目は休む罪悪感がひどかった。映画を観に行っても気分は晴れない。

 両親は不仲であり、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、で、父が大好きなジャズのことが母は大嫌いである。映画の中でジャズが流れればそれを思い出して落ち込む、というような状態であったが、休みも二週目に入るというところで医師に診断書を書いてもらい、一か月の休養を命じられた。しかし診断書が出て「休んでもいいんだ!」と思えてからは急回復。一週間の休養で復帰した。

 そこからは毎週カウンセリングにかかる。二週間の休みは有給ではなく通常の欠勤であり、非正規雇用の俺には直撃する上に保険適用外で一回7000円のカウンセリング。

 しかもカウンセリングは平日しかやっていないのでそこは有給で補填。

 ここで二週間の欠勤、一回7000円のカウンセリング、週一で有給が一日減るという状態に。ありがたいことに職場はこれでもかというほど優しい人ばかりであり理解があった上、いい意味で代わりなどいくらでもいる俺である。特に職場が困ったことはないそうだ。


 カウンセリングで伝えたように俺はもう「妹のように、弟のことは忘れて生きていきたい」なので自分でも方針として弟のことは聞かない、知ろうとしない、を心掛け、年を明けた。だが冬になると「お隣のエアコンがうるさい」と近所トラブルシーズンに入るので、俺が知らないだけでトラブルは起きているだろう。


 もしかしてこの随筆では初登場かもしれないが、俺の大学入学初日からの友人だから直に12年の付き合いになる自称イケメンの友人がいる。自称見た目は松坂桃李、声は杉田智和である。俺と真反対で絵に描いたような軽薄、外面の良さと陰口の上手さを学科に見抜かれこいつは孤立していたが、その外面の良さで他学科、他学部、他大学、社会人など常時数股をかけるモテ男である。

 こいつは大学卒業後、金沢に飛ばされたがその後に都会を求めて名古屋へ渡り、そこで出来た彼女と馬が合わず性格が悪化して行った。そして東京に戻ってからは“性器末(せいきまつ)覇王”と化し、マッチングアプリと高速バスで日本全国に性行為行脚を繰り返していた。少し前に『新日ちゃんぴおん』にてグレート・O・カーンの人生相談で

「マッチングアプリで並列して異性を探している」

 という男性をO・カーンは「ハイ愚民!」とこきおろしていたがあの頃のあいつはまさしく愚民であった。

 この男は「自分が辛い時は悪いことをしてもいい」という思考のため、数年の地方暮らしでだいぶやさぐれてしまった。

 だが自称イケメンは「人生で一番へこんだ失恋」の十日後に俺を含めた2‐2の合コンをセッティングし、相手方のサッカーファンのきゃわいらしい女性と俺に脈がある、と応援してくれたが、翌週にはそのきゃわいらしい女性は自称イケメンの手に落ちた。

 しかしこのきゃわいらしい女性がまた強烈で、完全に自称イケメンを飼いならして真人間に変えてしまった。

 今までは俺が話すウルトラマンやプロレス、野球など少しでも興味がない話題だと「ハイ興味ナシ!」と門前払いしていたこの男は最後まで話を聞いて「俺にはわからないんだけど」と理解を示すようになった。

 その具体例が水タバコ、シーシャである。

 俺はかねてより水タバコ(シーシャ)を吸うことを熱望しており、ようやく機会を見つけてシーシャを吸いに行くことにしたのだが、こいつは誘ったら来た。今までなら絶対に断っていたはずだ。

 今までは自分の彼女の趣味に付き合わされることを「苦痛」とまで言っていた男は彼女さんの大好きなJリーグ観戦に勤しむようになった。他人の陰口もやめた。恐ろしいまでの変貌っぷりである。

 そんな様に、自分も変わりたい願望や、父を日々苛んでいる“孤独”から救われたい、または母が以前言っていた「読者、映画、音楽といった自分をつくる要素を継いでくれたのは森だけ」という言葉から、俺自身も家族を持ちたくなった。

 だが……。妹がそうであるように、結婚は出来ないんだろうなぁ。それに、将来生まれてくるのが弟のような人間である可能性もあるとなると……。

 家族に弟を紹介出来ない、将来弟の面倒を見るというハズレくじを最愛の人にひかせたくない、これ以上世間にバグを増やせない。

 こういった理由で三篠家は俺たち兄弟の代で終わりである。


 まぁ話が逸れたようだが、年末には自称イケメンの実家が営む小料理店に連れて行ってもらった。自称イケメンのご両親は陰湿王子の親とは思えない竹を割ったようなチャキチャキの江戸っ子であった。

 そこでも家族の話になり、他の常連さん、ご両親にも相談に乗っていただいた。

 常連さんのご意見は

「弟さんは明らかに異常。それを甘やかすお母さんも異常」

 だった。


 自称イケメンの父上のご意見は……

「そんなやつ捕まえてしまえ。義務を果たして権利を得られる。義務を果たさず権利ばかり行使するやつにマトモなやつはいない。それにニュースで捕まっているやつは大体無職だ。無職は全員捕まえて牢獄に送ってしまえ」

 という面白い意見であった。なお、お父上の打つ蕎麦、そしてお手製のだしつゆは絶品であった。


 自称イケメンの母上の意見は……

「弟さんとお母さんに問題があるが、あなたは相当のマザコンだ。家族にスポイルされてきた境遇は同情する。だから与えられた家族ではなく、自分で選んだメンバーの家族を作れ」

 であった。


 それ以降、自称イケメンも俺にマッチングさせる女性を探しているそうだが……。




 まぁ前置きが長くなったようだが、やることがなくなった俺は婚活の準備を進めていたが、準備だけで終わらせようとしているって訳だ。




 さて、話は飛び、先日まで帰省と旅行に行ってきた。

 孤独に苛まれる父は俺と妹に頻繁に電話をかけ、月に2~3で新潟に来いと言う。当然そんなにハイペースでは行けないのだが、妹は久しぶりに行くことにした。俺も一緒にどうか、そして父の顔を見た後はその足で金沢に行くのはどうか、と。

 妹の計画では初日は新潟、翌日は金沢、その翌日も金沢観光して夕方東京に戻る、というもの。

 魅力! 自称イケメンが金沢に住んでいた頃に一度行ったっきりだ。だがその時も実は俺は友人に会うために金沢に行ったのではなく、弟の状態が悪くなったので母にお金を渡され「弟の状態が悪いからしばらくどっかに行っていてくれ」と言われ、友人のいる金沢を選んだ次第。その数週間後に祖父が亡くなり、弟の葬式ボイコット未遂などで俺は家を追放されることになる。


 妹との仲が良好なことは本誌既報の通り。加えて母の誕生日はミスター・プロ野球長嶋茂雄、燃える闘魂アントニオ猪木、ウルトラマンXの中の人中村悠一などレジェンドと同じ日であり、日々弟に悩まされる母の息抜きもさせてやろうと“金沢のみ”誘った。

 そう、金沢のみである。初日の新潟に母を連れて行けば、必ず両親はケンカする。なので両親が一堂に会する場面を回避するため、初日の新潟へは俺と妹の二人。母は二日目の金沢で現地合流という訳だ。


 一日目の新潟は穏やかであった。特筆すべきことはなかったが、ここ最近体調の悪そうだった父はかなり元気だった。

 二日目、三日目の金沢は、前回出来なかったがっつり観光。


 旅行の話がメインだと思った人よ。今回のメインは旅行じゃない。

 さて、東京に戻った俺たち。三人とも住んでいる場所が違うことは本誌既報の通りだが、全員体調を崩していた。そして母がコロナ陽性。


 そもそも俺は一か月前から鼻水、せき、喉の爆痛、倦怠感、たんが止まらなかった。妹も二週間ほど前からそうだったと言い、実は金沢では全員風邪っぴきで咳き込んでいたのである。ただ強調しておきたいのは、俺はこの旅行の前の週の金曜日、妹に至っては旅行前日に検査し、陰性だったということだ。

 加えて俺は皮膚科にて「疱疹の出ない帯状疱疹」なる謎の病にかかってずっと太ももが痛い状態であった。

 そしてコロナ陽性の母と旅行中飲食をともにし、さらに帰りの新幹線では俺と妹の間に母が座っていたので濃厚接触者に。


 北陸旅行のお土産はコロナウイルス。

 ちなみに先週、体調を崩して抗原検査を実家で受けた(母が看護師、偶然オフ日、抗原検査キットを持っていた)際、一瞬弟とすれ違ったがすさまじいメンチを切られた。死ねや。

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