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三篠家離散日誌  作者: 三篠森・N
第1章 三篠家崩壊編
10/32

第10話 三篠森・N、再び病む。

 今回は弟の話は出てこない。完全に俺の近況の自分語りのため、そういうのはいらない人はブラウザバックで。

 先日のカウンセリングで適応障害による鬱状態と告げられた翌日、俺にはもう仕事をする体力も気力もギリギリしか残っていなかった。

 弟のこと、母のこと、お隣さんのこと……。ありとあらゆる無念と怒り、恨み、責任感、それに起因する頭痛、吐き気、肩こり、倦怠感、眠気、下痢などの体調不良。加えてバレないレベルで仕事もミスが増え、スピードも落ちている。

 そのため我が家の事情を知る上司に相談してみた。相談、とは言っても、自分で「休みたい」と言えるほどの度胸はないため、「休んだ方がいい」と言われるの待ちである。

 そして話した結果、「アカンやん。休んだ方がええで」とお言葉をいただき、その上司に交えてまずは部長と三者面談。上手く喋ることすら出来なくなっていた俺の代わりに上司が上手く話してくれて、休んだ方がいいとお言葉を貰えた。課長は出張中だったので課長にはメールを。

 とりあえず上司から21日(金)、24(月)~28(金)までの休みを提案されたので、それで行くことにした。休んでいる間、上司たちが病気が原因で長期休む場合、使用出来る制度などがあるか探してくれるという。とにかく人に恵まれた職場である。それだけに、職場には全く関係のないトラブルを持ちこんで迷惑をかけてしまうことが忍びなく、「働く」という社会人の責務を全う出来ない自分が恥ずかしかった。それでもこの時はまだ「休める」という喜びが勝っていた。

 後日連絡があり、医師から正式に鬱と診断されたわけではないので、今回の計六日の休みは欠勤か有給か選ばなければならないという。有給は……二週間ほどあったが、その有給は俺が……。低スペックながら働き、勝ち取った権利だ。その権利さえ弟に奪われるのはとても癪で悔しかった。

 また、今後診断書が出た場合でも、病気を理由に特別に有給が増えるということはないとのことだった。

 それでも昨日までは「少し休める」という喜びが勝っていた。来週は定休日も多く、休みは十分にあるから回復出来るだろうと思っていたがそれは昨日までの話である。

 俺が低スペックながら、自分はここが長所だと自負しているのは自分のストレス解消方法を心得ている、というところだ。具体的には映画、散歩、サイクリング、野球観戦、物書きだ。そのうち、サイクリングは膝半壊によって不可。物書きは、ここ数週間のものを読み返すと今まで以上に文章が拙く、誤字脱字もいつもより多く、そもそも日本語として成り立っていない。それでも週一で『トラッシュ』を投稿する意地だけは貫きたいが……。ここまで質が下がってしまうと考え物だな、などと心が折れそうになってしまう。

 昨日は映画を観た。今日も観た。明日は起きられれば二本観る。だが昨日からもう、ストレスを相殺しきれていない。活動報告では楽しめたと言っているが、楽しむための心構えやコンディションは並以下だった。映画館からは一時間以上歩いて帰る。そして野球を観る。

 通常の休日だったらこれ以上にないご機嫌な休みだ。しかし状態が悪化した今は何一つ楽しくない。一応、これから書く予定の今日の映画活動報告ではどこが面白かったか、などもきちんと挙げて、弱音や愚痴はこの随筆に留めるつもりだが、俺にとって最強のストレス解消である映画→徒歩→野球の三連コンボ、しかも野球は日本シリーズだというのに全然楽しくないどころか、仕事を休んで趣味を満喫している罪悪感ばかりが襲ってくる。ストレスを解消して一刻も早く仕事に戻り、後れを取り返さなければならないのに、ストレス解消が反転し、本来の義務を放棄している罪悪感となって重く重くのしかかってくる。

 今まではカウンセリングの後や『離散日誌』を書いた後くらいしか感じなかった頭痛や抗い難き体や頭の重さ、気分の重さ……。本来歩いても疲れるどころかウォーミングアップの距離の徒歩でももうガタガタだ。

 そして最後の切り札として、なろうとしても最低レベルの文章力による物書きでストレス解消をしようと、今、努めている。

 カウンセリングの先生は「三篠さんはやれることは全てやったと思います」と言ってくれたが、やれることは全てやったのに、たった一人のヒキニートの悪化を止めることすら出来ないのか……。

 映画から帰ってきて風呂に入り、頭を乾かしたりしていたが、現状と俺の状態の悪化を考えると先が見えなくて小さな声で奇声を発さなければ気が狂ってしまいそうだった。  どうすればいいんだ……。

 とりあえず父に電話してみた。妹には電話出来ない。妹はもう弟とは気持ちの上では縁を切り、忘れて生きていっているのでもう巻き込めない。母にも相談出来ない。したところで「お前はやっぱり社会の中で生きていけない人間」「障害者」「わたしの苦労と心配を倍にするだけ」と言われるのがオチだ。

 父も弟のことは忘れろ、気にするな、しか言わない。だがその一方で、父も「弟はいつか犯罪を犯す人間」「人間のクズ」と言っていた。いくら忘れたつもりでいても、世間は犯罪を犯した人間を連帯責任として許してくれない。いくらガンプラやニンテンドーswitchを買って「やることは全てやった」とカウンセラーさんに言われたとしても、結果として弟が犯罪者になればその家族は「何もしなかった」「足りなかった」と言われるのである。

 それにまず家族はその「人間のクズ」の「いつか犯罪を犯す人間」がコトを起こす前に、どうにかしなければならない責任がある。その責任感が重く、恥知らずにお隣さんを逆通報する弟、「弟のやりたいように」とそれを容認した正常な判断の出来ない母なら、そう遠くない未来に犯罪は起きると思う。その焦燥がさらに重い。

 そんな危険人物が野放しにしてしまっている重責、そんな危険人物が何の制裁も受けず、何の矯正も受けずにのうのうと、「俺は鬱だから就職もバイトもしないし病院にも施設にも行かない」など言って無責任に過ごしていると思うととにかく無念でならない。無論、外の人間を弟から守りたいなどという殊勝な理由だけではなく、俺たちが受けてきた仕打ちに対する怒りと恨み、そういったものによる無念の方が大きい。

 そして長時間父と話したところで「仕事辞めて新潟に来て俺と暮らせ」「お前の気分が落ち込むと俺も辛いから頑張って元気になれ」と言われてなんで弟のせいで大好きな仕事と東京を捨て、父の分まで俺が背負わねばならないのか、とさらに落ち込んだ。

 そこで俺は父に何と言われたかったのか、を決めずに電話をかけてしまったことに気付き、もう父とこのことについて話すのはやめようと思った。そもそもカウンセラーさんの「三篠さんはやれることは全てやったと思います」という慰めすら、反転して「やれることは全てやった、だけど無意味」と辛くなっているのだ。もうどうしようもない。

 現状としては働けない状態になってしまった俺だが、それにより勤務表に打たれる「欠勤」も、使用すれば無くなる俺が勝ち取った「有給」も、評価も、一人欠けた職場の戦力も全て弟に奪われた。最早俺の感情抜きで、事実としてこの状態を、唯一弟に対して干渉できる母に訴えたところで、母の方がパニックになって「社会で生きていけない人間がラリってる」と言われて終わってしまうのである。

 ああすればどうにかなる、こうすればどうにかなる、と、この休みを活用して『トラッシュ』で舞台になる場所の下見に行ったり、さして興味もない映画を観て嫌なことを考えないようしても、無残な連想ゲームによってすべてを弟に台無しにされる。

 今の「ああすればこうなる」は「弟が施設か病院に行けばどうにかなる」だが、そうしたところで報復や犯罪を犯すことを考えればもうやつには死んでもらう以外に俺が呪縛から解放されることはないのだと思う。

 それでもまだ自分が死んでしまいたいと思わないのは、誰も読んでいないし誰からも好評を得ることのないクオリティを150話以上も続けている『アブソリュート・トラッシュ』があるからだ。誰も読んでないからクオリティが下がったところで誰も気付かないしな。

 とにかく週明けから出勤しなければならないことが辛い。出勤しても迷惑をかけるだけなのに。かといって休んでも何にもならず、評価と給料だけが下がっていく。

 とりあえず活動報告と『トラッシュ』では空元気を続けていく。

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