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第95話 びよーん

「鈴、熱くないか?」

「熱い? んー、んーん、平気だよ」


 泡を流し終わり、髪に付いた水滴をあらかた払い、顔を手で拭ってやる。


「よし、もう目を開けていいぞ」

「はぁーい! えへへ、鈴、綺麗(きえい)?」

「ああ、綺麗だぞ」

「わぁーい!」

「こーら、危ないからシャワー室で暴れないの」

「あ、う……ごめんなさい」

「うん、良い子だ。それじゃ、先に出て、エイルオバさんに身体を拭いてもらいなさい」

「やー! 今度は鈴がパパの身体(かやだ)(あや)うの!」

「え? そうか? じゃ、お願いしよっかな」

「兄様の身体を洗うのは、わたくしの使命なのでございます」

「ひゃう!」

「そんな使命は無い! 子供と張り合うな」

「鈴、(あや)っちゃダメなの?」

「そんなことないぞ。叔母さんの言うことは、無視していいからね」

「兄様?!」

「わぁーい、(あや)う! (あや)う! パパの身体(かやだ)(あや)うーっ!」

「うーっ!」

「きゃはははは!」

「っはははは!」

『ふっ、笑ってられるのも、今のうちだぞ』

『え?』

『わたくしに洗わせなかったこと、後悔するがいい』


 後悔ってなんだよ。

 そんな要素、何処にも無いだろ。

 鈴ちゃんがタオルを手に取って揉むと、凄い勢いで泡が出てきた。


「ふぉー! あわわわわーだ!」


 ふふっ、楽しそうでなによりだ。

 とにかく椅子に座り、鈴に背中を向ける。


「やぁー!」


 背中にタオルがバンッと当てられ、泡が飛び散った。


「おぉー!」


 背中をゴシゴシとタオルで洗われる。

 すげぇ、マジであわわわわーだ!

 いつもよりクリーミーな泡で洗われているのが分かる。

 生クリームかって言いたくなる。

 勿論(もちろん)そんなことはないけど。

 子供には広い背中なんだろう。

 完全に全身運動になってるぞ。

 折角身体を洗ってあげたのに、汗だくになるんじゃないか?

 ま、鈴ちゃんも泡だらけになってるから大丈夫かな。

 一所懸命全身を使ってゴシゴシと洗っている。

 子供の力だから、あんまり痛くない。

 かえって気持ちいいくらいだ。


「ふーっ! 次! お手々!」

「はいはい」


 右腕を差し出すと、ワシワシと洗い始めた。

 肩から腕を擦り、そして手へと洗っていく。

 ちゃんと指の間も丁寧に洗う。

 そして手のひらから今度は内側を滑っていき、脇の下を洗っている。

 ちょっとくすぐったい。

 左腕も同様だ。


「ふぁーっ」

「疲れちゃった?」

「ふぇ? ううん平気だよまだやれる(えう)よ」


 いや、そんな必死になって否定しなくてもいいのに。


「次は胸だよ」

「はぁい」


 背筋を伸ばして胸を張る。

 全身が泡だらけになっていくな。

 胸を洗い、脇腹を洗い、そしてお腹も洗っていく。


「んにゅ? パパー、こ()なに?」

「ん、これ?」


 そう言って鈴ちゃんがビヨンと引っ張った。


「鈴?! そこは触っちゃいけませんっ!」

「ひゃっ、ごめんなさい。でも、こ()なぁに?」

「こ、これは……オシッコするところだよ」

「オシッコするとこ()なの? でも、鈴には付いてないよ。ほ()

「これは、男の子にしか付いてないんだよ」

「えー、なんでぇー?! 鈴も欲しい!」

「鈴は女の子なんだから、必要無いんだよ」

「やーっ! 鈴も欲しい! パパとお揃いがいい!」


 あー、そういう理由なのか。

 でも無理なものは無理。


「スズ様、お揃いがよろしいのでございますか?」


 あんたは鈴ちゃんになにを聞いているんだ!


「うんっ!」

「では兄様、1つ提案があるのでございます」

「提案?」


 まさか性転換手術をするのでございますとか言い出さないだろうな。

 錬金術って、そんなこともできるのか?


「兄様の余計なものを取ってしまうのでございます。そうすれば、お揃いになれるのでございます」


 そっちかよ!

 こいつ、なに考えてんだ。


「パパのこ()、取れる(えう)の?」

「だから引っ張るんじゃありませんっ!」

「ひうっ! うゆ……だって、ナーム叔母さんが取れる(えう)って言ったか()

「これは取れないからね。取ったらダメなヤツなんだよ」

「ダメなの?」

「ですが、お揃いになるにはそれが一番なのでございます」


 くっ、こいつ、身体を洗わせなかったから嫌がらせしているのか?

 これがこいつの言う後悔ってヤツなのか。


「ナーム叔母さん、デタラメ教えたらダメでしょ!」

「その呼び方を止めろっ!」

「呼び方は年少者に合わせるんだろ。そう自分で言ったよな、ナーム叔母さん」

「くっ、本当にもぎ取ってもいいのだな」

「兄様の子孫が残せなくてもいいのならな」

「……そうでございました。申し訳ございません。スズ様、これは子孫繁栄には欠かせない大切なものなのでございます」

「おい!」


 こいつは鈴ちゃんになにを教えるつもりだ。

 まだ早いっての!


「お揃いにすることはできかねるのでございます」

「えーっ! じゃあ鈴にも付けてよー」

「スズ様に付いておられないのも、子孫繁栄には欠かせないことなのでございます」

「ぅおい!」


 興味を持ったらどう説明すればいいんだよ。

 〝鈴、パパの赤ちゃん欲しい〟とか、言い出しかねないんだぞ。


「ですので、スズ様にも付けることはできないのでございます」

「うー、意地悪(いじわゆ)っ」

「意地悪とかではないのでございます」

「ぶーっ」

「ほ、ほら、鈴は付いていなくても、ちゃんとオシッコできるだろ。必要無いから付いていないだけなんだよ。でもパパは付いていないとオシッコできないんだ。付いてると邪魔だし、いろいろ面倒なんだけど、我慢しているんだぞ。だから、本当は無い方がいいんだぞ。分かったか?」

「ふーん?」

「だから引っ張っちゃいけませんっ!」

「きゃはははは、面白(おもしよ)ーい! びよーん!」

「これで遊んじゃいけませんっ」

「はぁーい」


 まったく。

 全世界のお父さんは、こういうことを乗り越えていっているのか。

 大変だな。

びよーん、きゃはははははは!

どのくらい伸びるんだろう?

次回は見比べちゃうんだ……

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