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第94話 常に力一杯

 シャワー室に入って、みんなでシャワーを浴びる。

 身体を流し終わったら、まずは身体を洗う。

 ナームコがタオルを擦って泡立てて、鈴ちゃんを洗おうとした。


「やーっ、パパに洗ってもらうの!」

「え、俺?」


 でもなぁ、俺だと泡立てられないからなぁ。


「スズ様、兄様がスズ様をお洗いになられるときは、操船するときと同じようにするのでございます」

「えっ……うゆ、うん」

「ナーム叔母さん?」

「ええい、その呼び方で呼ぶでない!」

「なら、妹を辞めるか?」

「ぐっ……卑怯だぞ」

「いいから、どういうことだ?」

「よくないのでございます。……はぁ、スズ様は魔力を持っておられるのでございます」

「そうなのか」


 くっ、娘は持っているのに、なんでパパが持っていないんだよ。

 ……ん?

 いや、俺はパパじゃないからな!


「魔力の質が違いますが、恐らくは大丈夫なのでございます」


 質?

 よく分からないが、要するに鈴ちゃんの魔力を利用しろってことか。

 とにかくタオルを手に取り、鈴ちゃんの身体を擦ってみる。

 んー、やっぱり全然泡立たないぞ。


「なあナームコ」

「もう少し擦ってみるのでございます」


 もう少しって。

 仕方ない、言われたとおりにしてみるか。

 撫でるような感じで、優しく、優ーしく。

 すると鈴ちゃんが「うーん、うーん」唸りだした。

 痛い……訳ではなさそうだ。

 ん? 少しヌルッとしたぞ。

 これなら擦っても痛くなさそうだ。

 おお? 擦ってみると、どんどんヌルヌルになってくるぞ。

 それに合わせて、鈴ちゃんの息も荒くなってきた。

 大丈夫か?

 息が荒くなっていくにつれ、ヌルヌルも増えてきた。

 そしてひときわ大きい声を上げたかと思うと、それを合図にして急に泡が立ち始めた。

 なんだこれ!

 すげぇな。

 今までにないくらい泡立ってるぞ。

 しかもキメが細かい。

 その泡を手ですくってみる。

 今までならあっという間に泡が潰れて消えて無くなるのに、この泡は中々潰れない。

 ゆっくりと弾けて消えていく泡に魅入ってしまった。


「ああ、はぅ……はぁ、パパ、どうしたの? 鈴、はぅ、うまく……できてなかった? あっはぁ、ごめんなさい。もっと、ふぅ、上手(じょうず)に、うぅ、できるように、ひっく、なります。だから……うぐっ」

「ああ、ごめんね、違うよ、凄く上手(じょうず)にできてるよ。だから魅入ってただけだよ」

「ホント? 鈴、上手(じょうず)にできてた?」

「できてたできてた。よくできました。よしよし」

「えへへ。鈴、頑張った!」

「うん、偉いねぇ」

「鈴、偉い! えっへん」

「っはは。さ、身体を洗ってあげるから、大人しくしてなさい」

「はぁーい」

「うん、良い子だ」

「えへへー」

「……」

「ん? どうした?」

「本当に兄様の御子なのでございますか?」

「しつこいぞ」

「失礼したのでございます」


 まったく。

 蒸し返すなよ。

 折角機嫌が良くなったってのに。

 あれ?

 背中に大きな痣があるぞ。

 服を脱がせたときは気づかなかった。

 古い感じはしないな。

 最近怪我をしたのか?

 恐る恐る()れてみると、ピクッと身体をこわばらせた。


「あ、ごめん。痛かった?」

「んーん、痛くないよ、平気だよ」


 そんなぎこちない笑顔で言われても、信じられない。

 もう一度触れようとすると、目をギュッとつむって身体をこわばらせた。

 明らかに待ち構えているじゃないか。

 痣には触れず、頭に手を置き、そして撫でてやった。


「鈴、痛かったら痛いって言っていいんだぞ」

「う……平気だよ、鈴、痛くないよ、ホントだよ」


 そうは言うが、明らかに我慢しているのがありありと見える。

 我慢しないで言ってほしいんだけどな。

 仕方ない。

 ここは避けて洗おう。

 身体が小さいから、あっという間だな。


「よし、次は頭を洗うぞー。ちゃんと目をつむってないと、目がイタイイタイだぞー」

「うんっ!」

「はい、ぎゅーっ」

「ぎゅーっ」


 鈴ちゃんが目をギュッと閉じるのを確認してから、頭を洗い始めた。

 可愛いなぁ。

 でも、歳を考えると娘というより、妹だ。

 妹……俺に弟や妹は居たのかな。

 お兄ちゃんが先に死んだら、ダメだ。


「よし、じゃあ鈴――」

「わたくしが流すのでございます」


 隣で身体を洗っていたナームコが、シャワーを出す。


「あ、おい」

『止めておけ、全員大火傷をするぞ』

『は?!』

『どうもこの娘は何事も全力でやる癖があるようだ。シャワーを出させてみろ。温度調節もせず、全力で熱湯が大量に、それこそ滝のように降り注ぐぞ』


 まさかシャワーがそんな危険なものだとは思わなかった。


『ありがとう』

『こんなこと、兄様の世話役として当たり前なのでございます』

『鈴ちゃんみたいに褒めて欲しくてやったのかと思ったよ』

『……』

『ナームコ?』


 何故目を逸らす。


『な、なんでもないのでございます』


 こいつ、もしかしなくてもそうなのか?

 しかし泡立ちが凄かったのは、そういう理由かも知れない。

 いつもそんなに全力で疲れないのかな。

 加減ってものを教えてやらないと。

 こういうこともしなきゃいけないのか。

 子育てって、大変なんだ。

幼女のシャワーシーンだから、勿論色気は無いぞ

次回は伸びます

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