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第91話 親子の再会

「後でオバさんとシャワーでキレイキレイしましょうね」

「うん!」

「ダメだ。お前は安静にしてろ。今もフラフラしてるじゃないか。シャワーならわたくしが入れてやる」

「大丈夫よ、シャワーくらい」

「ダメだ。本来ならシャワーでフルオロ溶液を綺麗に流してからでなければ、触らせられないんだからな」

「う……分かったわよ。ごめんね、鈴ちゃん。オバさん、シャワーに入っちゃダメなんだって」

「うー? じゃ、鈴も我慢す()

「お前はわたくしと入るんだ」

「やーっ!」

「やーじゃない! 何故〝了解〟と言わない!」

「ひうっ!」

「怖がらせないでよ」

「怖がらせてなどいない。命令してるだけだ。何故言うことを聞かない」

「なんで命令なのよ」

「当たり前だ。こいつは船のユニットだぞ。さっきまでは言うことを聞いてたのに……壊れたのか?」

「鈴ちゃんをもの扱いしないでよ」

「鈴、壊れてないよ。ごめんなさい。言うことに従います」

「よし、なら付いてこい」

「はい、お願いします」

「鈴ちゃん?」


 私から離れると、振り向いてお辞儀をした。


「エイ()オバさん、あ()がとう。鈴はまだ壊れてないから、大丈夫だよ」

「あ……うん」


 急に借りてきた猫のように大人しくなった。

 そしてナームコさんの言うことに素直に従ってる。

 〝壊れた〟って言葉に反応してるの?

 自分でも〝壊れてない〟って言ってるし。

 〝怪我してない〟じゃなくて〝壊れてない〟なのはどうして?

 不安げな、脅えたような顔をしながらも、ナームコさんに手を引かれていく。

 私も後を追うように歩き出した。

 ナームコさんが船外に出る扉を開ける。


「兄様っ! お会いしとうございました!」


 鈴ちゃんの手を離し、タラップを駆け下りてモナカくんのところに駆け寄っていく。

 〝わたくしがやる〟なんて言ってた癖に、モナカくんをみるや否や、それですか、そーですか。


「えーいひっつくなっ!」


 時子さん以外、出迎えてくれたみたい。


「わたくしはダメで、アニカ様はよろしいのでございますか!」

「当たり前だ!」

「兄様?!」


 聞いてたとおり、アニカさんはモナカくんから離れないみたいね。

 相当重傷だ。

 でも良い傾向かも知れない。

 時子さんは離れて、アニカさんが近づいてる。

 父さんの言うとおり、モナカくんと時子さんを離せてる。

 そうよ、なにも私が割り込む必要なんか……

 鈴ちゃんを抱えてタラップを降りていく。

 階段にはなってるけど、手すりなんてものは無い。

 鈴ちゃんを下ろし、そしてモナカくんと向き合う。

 必要は無い……けど。


「えっと、モナカくん、た、ただい――」

「パパ!」


 えっ?

 そう鈴ちゃんは叫びながら、目の前のモナカくんに抱き付いた。

 ……えっ?

 パパ?

 パパって……え?

 どういうこと?

 状況からして、モナカくんがパパってこと?

 鈴ちゃんのお父さん?

 モナカくんが?


「うえーん、鈴、パパに置いてかれたのかと思ったよー。ひうーん」


 モナカくんもなにが起こってるのか分からないって感じね。


「えっと、モナカさん?」

「は、はい!」

「お子さんがいらしたんですか?」

「居ません居ません! 他人のそら似ですから!」

「そうなんですか? エイルさん、そうなんですか?」

「な、なんでうちに聞くのよ?」

「エイルさんとモナカさんのお子さんではないのですか?」

「違うのよ! 第一こんな大きい子が居るわけないのよ!」

「そうなんですか? 残念ですね」

「残念とかじゃないのよっ!」


 とにかく、どういうことか、聞いてみましょう。

 聞いて分かるとも思えないけど。


「鈴ちゃん、この人が鈴ちゃんのパパなの?」

「うん!」

「いや、違うからね!」

「パパ? また新しい言語なの?」

「えっ? エイル、どういうことだ?」

「知らないのよ。うちに聞かないのよ」

「兄様、それはでございますね、この子がこの船の制御ユニットだからなのでございます」

「制御ユニット? なにを言ってるんだ?」

「エイル様、この船の翻訳機能のことをお話ししたのを覚えておられるのでございますか?」

「覚えてるのよ」

「では、この船の制御ユニットはどれでございますか?」


 〝どれ〟って……そういう言い方はないでしょ!

 〝誰〟でしょ。


「鈴ちゃんなのよ」

「つまり、この船の機能は、その子が実現しているのでございます」


 鈴ちゃんが?!

 確かに操船してるのは見たけど、翻訳も?


「どういうことなのよ」

「その子はこの船の動力エネルギーであり、頭脳でもあるのでございます」

「それを何故貴方が知ってるのよ」

「全て本人に聞いたのでございます」


 本人にって……

 つまり、鈴ちゃんはそれを理解してるってことよね。


「トレイシー様、ただいま帰ったのでございます」

「はい、お帰りなさい」

「スズ様、シャワーを浴びに行くのでございます」

「やーっ!」

「スズ様、わがままを仰らないのでございます」

「パパと入()!」

「……なんだって?」

「では兄様、3人で入るのでございます」

「…………なんだって?!」

「モナカ、鈴ちゃんと入るのよ」

「俺に選択権は――」

「無いのよ」


 言いたいことはあるけど、ここは我慢しましょう。

 鈴ちゃんはモナカくん(パパ)と一緒に入りたい。

 でも魔力が無いから無理。

 ナームコさんならその辺の事情も分かってるし、鈴ちゃんとも会話できる。

 適役じゃない。

 私は……そう、怪我してるから無理なのよ。

ついに子持ち主人公となりました

果たして実子なのか、それとも……

次回はトレイシーさんが固まります

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