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第88話 急がば回れ

「前方に障壁が展開さ()ています」

「突破しろ」

了解(いょうかい)


 え、その程度のやり取りでいいの?


「衝撃に備えて下さい。3・2・1・(ゼオ)

「きゃあ!」


 ぶつかった衝撃で、私は前方に投げ出されてしまった。

 内装に激突する寸前で、なにか柔らかい物に包まれた。


「馬鹿か、話を聞いてなかったのか。席についてシートベルトをしていろ。守君、ありがとう」


 え、このスライムっぽいプヨプヨしたものって、あの守さんなの?

 守さんは私の元を離れると、ナームコさんの胸元に潜り込んでいく。

 どう考えても収まる容積じゃないわよね。

 なのにスルッと入り込んでしまった。

 どういう仕組みなのよ。


「突破したの?」

「ああ、早く席に着け。まだ結界はあるのだろう?」

「あるのだろうって、まさか全部突破していくつもり?!」

「当たり前だ。魔列車に乗り換えてる暇はない。そもそもこいつを乗り捨てていくつもりか」


 そりゃ、こんなものを乗り捨てていったら、大騒ぎになる。

 でも結界を突破したら、もっと大騒ぎになる。

 騒ぎで済めばいいんだけど、手遅れね。


「タイムさん、今何処を移動してるのよ?」

「今は第1都市ですね。ルートとしては、一直線に家へ向かっています」

「一直線なのよ?! 予測進路を出すのよ」

「はい」


 えーと、うわ、本当に勇者の(ほこら)から家まで直線ルートだわ。

 思いっきり中央省を通過するじゃない。

 なにを考えてるの。


「迂回するわよ」

「何故だ!」

「何故だじゃないわよ。あなた中央省を突っ切るつもり?」

「それが一番早く兄様に会えるルートだ」


 このヤロウ。


「一番遅く会う羽目になる最悪のルートよ」

「嘘を吐くな!」

「中央省と街を避けるルートのよ、鈴ちゃんに教えてあげるのよ」

「おい!」

「分かりました」

「勝手なことをするな!」

「勝手をしてるのはあなたでしょ。タイムさん、結界の穴の修復はどうなってるのよ?」

「穴が大きすぎますね。自動だと崩壊の方が早そうです」


 放っておいたら大変ね。

 修復は専門家に任せましょう。


「中央省に指令を出すのよ」

「済ませてあります。原因の偽装もしてあります」


 さすが、仕事が早いわね。

 でも、これを後3回繰り返さないといけないわ。

 問題は第10都市(クラスク)に着いてからよ。

 家に行くには、どうしても街中を通らないといけない。

 民家の少ない、山の方から行ったとしても、それは避けられない。

 いや、いっそのこと山に置いておいて、迎えに来てもらう?

 三面図で見た限り、こんな大きさのものを停めてたら、製品や材料の搬入出に支障が出てしまうもの。

 狩猟協会の裏手になら停められるでしょうけど、得策じゃないわ。


「障壁を突破します。衝撃に備えて下さい」


 もうなの?! 早くない?

 そんなに速度出てるの?

 再び衝撃が走る。

 今度はちゃんと座ってシートベルトをしてたから、なんともなかった。

 それでも傷口に響いて痛い。


「エイルさん、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」

「大丈夫なのよ」


 魔素が流れすぎてるわね。

 少しボーッとしてきた。


「それのよ、工房の前に停められないのよ。山に隠しておくのよ」

「山にですか? うーん、難しいですね」

「精霊契約に使った場所はどうなのよ?」

「あそこですか。いいとは思いますけど、隠せるような場所ではありませんよ」

「構わないのよ。どうせ1日だけなのよ」

「1日だけなら、工房の前でよくないですか?」

「今日の搬出のよ、終わってるのよ?」

「聞いてきます。マスター! あ、あははは」


 切り替え忘れたわね。

 というか、声のトーンが全然違うんですけど。

 ナームコさんといい、タイムさんといい……それってどうなの?


「エイルさん、あと少しで終わるそうです」

「朝の搬入予定はどうなのよ?」

「えーと、明日の朝は無いそうです」


 なら、工房の前でもいいかな。


「工房の前に停めるのよ」

「分かりました。ルート、指示します」

「頼んだのよ」

便利な自家用車を手に入れたw

次回は赤信号、例え事故っても無傷です

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