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第85話 見送ることしかできない

◆◆◆ 船内にて ◆◆◆


 クソッ、やってくれたな。

 折角の美品が台無しだぞ。


「被害状況は?」

「……」


 チッ、まだ起動シークエンスが終わってねぇのか。

 さっさと終わらせて、脱出したかったんだがな。

 ま、どう見ても飛行ユニットがやられてる。

 脱出できるか?


「初期設定、終了(しゅうひょう)しました。続いて、搭乗員登録(とうおく)をします」


 はー、まだ掛かるのか。

 外の様子は……どうやら自滅したみたいだな。

 次が来ないなら、さっさと済ませるか。


「搭乗員、1名を確認。登録(とうおく)します」


 1人?

 わたくしだけか。

 エイルは認識されてない?


「おい、搭乗員は2名だ。ちゃんと認識しろ」

「生体反応は1人(ひとい)分しかあ()ません」


 そうか、エイルは魔法生物だからな。

 こいつのセンサーだと認識できないのか。


「光学センサーで判別しろ。視認はできるんだろ」

了解(いょうかい)


 おいおい、船内カメラじゃなくて、直接見るのかよ。

 確かにそっちでは視認してたからな。

 船内カメラでは視認できないとでもいうのか。


「1名追加しました」

「よし、被害状況を教えろ」

「恒星間航行ユニットが全壊。ドックにて修理(しゅうい)が必要です。船体に亀裂(きえつ)多数。こちらは自己修復可能です。他、異常あ()ません」

「移動はできないのか?」

「可能ですが、反重力(はんじゅういょく)ユニットの出力(しゅついょく)が上が()ません」

「かまわん。脱出するぞ」

了解(いょうかい)


◆◆◆ 船外にて ◆◆◆


 なんなんですか、これは。

 そもそも今の時代、浮くことはできてもあんな上空まで飛行できるものなんて、精霊以外で見たことがありません。

 これが勇者の遺産……ですか。

 素晴らしい。

 とはいえ、ウィーラーが壊してしまいました。

 2階級特進どころか、懲戒免職かも知れません。

 とりあえず息はしているようなので、生きてはいるようです。

 しぶとい……いや、一安心です。

 さて、恐らくこれを動かしているのは、例の異世界人なのでしょう。

 それより、エイル様とあの幼女、スズ様とおっしゃいましたか。

 お二人はご無事でしょうか。

 地割れに飲み込まれたように見えましたが……姿が見えません。

 あのまま飲まれてしまったのか、それともこの遺産に回収されたのか……

 恐らくは後者でしょう。

 もはや手出しができません。

 ウィーラーなら喜んで殴りかかりそうですが……さて。

 大きさは……ふむ、乗り合いバスよりは小さいといったところですか。

 形は水滴に近い。

 この尖っているところに煙弾が当たったようですね。

 他は無傷に見えます。

 組成はなんでしょう。

 木とも石とも違うようですが……もしかして、金属ですか。

 いえ、驚くことではありません。

 勇者世界なら、それが当然なのですから。

 とはいえ、ただ眺めているだけなのも癪です。

 何処かから中に入れないものでしょうか。

 扉らしきものは……ここですか。

 ふむ、触っても特に反応はしないようです。

 窓らしきものもないので、中が(うかが)えません。

 おや、まだ動くのですか。

 これが……勇者世界の魔法陣。

 基本的な構造は同じようです。

 不思議な文字で描かれていますね。

 勇者文字というものでしょうか。

 構造が同じでも、意味が分かりません。

 読み解ければ、勇者世界の魔法を魔法道具(マジックツール)にできるかも知れないのに。

 やはりエイル様を仲間に引き入れる必要がありそうです。

 おお、浮上しました。

 また飛ぶのですか。

 いえ、浮いただけのようです。

 ウィーラーの一撃で、飛行不能になったのでしょう。

 それでも、浮いたまま移動を始めました。

 ただ見送るしかできないのでしょうか。

 僕にはこれを止める力も、権限もありません。

 ウィーラーのように振る舞えれば、止められたかも知れない。

 ですが、もう不可能です。

 この世界で、あれに追いつけるものなんて、居ないでしょう。

 損傷してなお、あの速度が出せるというのか。

 彼らは何処へ行くのでしょう。

 このまま結界の外へ……

 結界を破壊していくつもりでしょうか。

 もう、僕には関係のないことです。

 この指令書がある限り。

異世界で異世界の乗り物です

次回はエイルが目覚めます

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