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第84話 未確認飛行物体との遭遇

 地震なんて、今までどれほど経験があっただろうか。

 転生前は地震大国と言われるほど、毎日国の何処かしらで発生していた。

 でも今は、思い出すだけでも大変なくらい記憶に無い。

 それが今発生した。

 なんの前触れも無く大地が揺れ始めた。


「うおっと」


 突然の揺れにバランスを崩したらしい。

 運良く私のお腹は難を逃れた。

 それでもつま先が服に引っかかり、私の身体は再び宙を舞った。

 揺れは収まることを知らず、更に大きくなっていき、地割れが発生した。。

 私は為す術無く大地を転がり、割れ目に吸い込まれて落ちていった。


「おい、地震の予報なんかあったか?」

「ありません。そもそも雨と違ってわざわざ発生させる理由がありません」

「だよな。てことは、天然の地震か?」

「可能性は無いでしょう」

「盛り上がってきたぞ。まさか噴火か?」

「あり得ません。地震もですが、そんな活力のある大地が、ここまで荒廃しているはずがありません」

「だよな。てことは……なにが出てくんだ?」

「知りませんよ。少しは自分で考えてください」

「出てくるぞ!」

「一旦退きます」

「分かっとる! おい、そんなヤツ(裏切り者)なんかほっとけ」

「彼も僕と同じで、命令に忠実なだけです。裏切り者ではありません。助けます」

「ちっ、ホント、そういうとこ細けぇなぁ」


 デイビーは倒れているロローを抱えると、ウィーラーと供にその場を離れた。

 地面は更に盛り上がり、地割れもそれに連れ、大きく広がっていく。

 そしてひとつの土の塊が飛び出してきた。

 ボロボロと土が落ちていき、透明な球体に包まれた飛行体が現れた。

 翼は無く、涙のような形の流線型を横にしたものが浮かんでいる。

 全長10メートルほどのそれは、銀色に輝いていた。


「なんだありゃ」

「分かりません。ですが、あの下には勇者の(ほこら)があります。もしかしたら、アレは勇者の遺産なのでは?」

「なに? なら、あいつらは勇者の末裔ってぇのか!」

「そこまでは……ですが、そう考えるのが自然でしょう。あれからは殆ど魔力を感じません。伝説にある、勇者力と呼ばれるもので動いているのかも」

「なら、いっちょ試してみるか」

「試すって……貴方まさか」

「まずは2本だ!」


 ウィーラーは煙草を1本取りだし、火を付けた。

 元々咥えていた物と合わせ、2本咥えると、一気に吸い込んだ。

 そして2本分の煙を小さな塊として勢いよく吐き出す。

 だがそれは、透明な球体に弾かれ、霧散した。


「チッ、硬ぇな。なら一気に行くぜ!」

「止めなさい。アレが本当に勇者の遺産なら、僕たちは手を出してはいけないのですよ」

「知るかよっ。力無き勇者の遺産なんぞ、ぶっ壊れても問題ねぇだろ」

「ですが」


 火の付いた煙草を5本咥え、一気に吸う。

 あっという間に灰になり、吸い口だけが残った。

 残りかすを吐き捨て、先ほどと同じ大きさの、より密度の高い、より高速で、より魔力の籠もった煙が撃ち出された。

 しかしそれをもってしても、透明な球体にかすり傷ひとつ負わせることができなかった。


「こうなったら奥の手だ」

「止めなさい! 貴方はまだ5本が限界の筈。それ以上は身体が持ちませんよ」

「うるせぇ! 限界なんてなぁいつだって超えるべき壁なんだよ。10本だ」

「貴方死にたいのですか!」


 煙草を10本咥えて小火の魔法杖(マッチ)で一気に火を付ける。

 そして1度、鼻で深呼吸をする。


「ふふっ、ワシならやれる……やってやるぜ!」

「止めなさいっ!」


 デイビーの制止を無視し、一気に吸い込む。

 ゆっくりではあるが、確実に10本とも短くなっていく。

 そのスピードも、6割を超える辺りで鈍化していく。


「もうその辺にしておきなさい、危険です!」


 デイビーを一瞥し、ニヤリと笑うと残りを一気に吸い込んだ。


「ウィーラー!」


 片膝をつき、それでも透明な球体を凝視している。

 今にも倒れそうな表情をしながらも、その目に迷いは無かった。

 今までに感じられないほどの魔力の収束。

 口元にひとつ、またひとつと同じ魔法陣が浮かび上がり、直列に10陣現れる。

 それらがひとつに束ねられるにつれ、青白い輝きを増していく。

 そして煙草が燃え尽きるか否かの刹那、煙弾が撃ち出された。

 拳大の超高密度な煙が、常人では目で追えないほどの速度で球体に迫る。

 避けられることなく、いや、避ける暇など与えず、迫っていく。

 命を賭したその攻撃は、球体を消し去り、見事に飛行体を撃ち抜いた。


「へっ、へへっ、ざまあ……み、ろ」


 そう言い残すと、倒れ込んだ。


「ウィーラー! 僕は2階級特進なんて、認めませんからね」


 しかし返事は無い。

 代わりに飛翔していた物体が、その能力を失って墜落してきた。

アナイデンティファイド・フライング・オブジェクト!

次回は2つに分けると短すぎるので、1つに纏めました

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