第73話 言い包める
とりあえず、同意だけは取っておかないとダメね。
パパはここに居ないことにしましょう。
「あのね、パパは転勤して、もうここには居ないんだって」
「転勤?」
「働く場所が変わったの。だから、ここにはもう居ないんだって」
「本当?」
「本当よ」
えーと、信憑性のあるソースは……居た!
「ここで働いてるケイボ君がそう言ってたから、間違いないわ。そうよね」
「私は、そんなこと――」
「そ・う・よ・ね!」
「……はい、そのとおりです」
よかった。
A.I.搭載機でよかった。
自我を持ってて本当によかった。
これがただのプログラムだったら、意固地で決まった答えしか返してくれないからねー。
「うう、私は、なんて、ことを」
ただ、こういうところが面倒なのよ。
後でケアしてもらいなさい。
「だから、オバさん家に行きましょう」
「そうしたら、パパに会える?」
「きっと会えるわよ」
「うー、分かった。エイルオバさん家に行くー!」
よし、これで家に連れて帰る口実ができたわ。
中央には引き取らせない。
ナームコさんが呆れた顔で見てる。
自分でも分かってる。
でもこんなところに1人残しておけないわ。
「ロローさん、いいわよね」
「我が輩の一存では、判断できないのであります。中央に報告して――」
「ここには迷子なんて居なかった。そうよね」
「いや、しかしでありますな」
「居なかったわよね!」
「さすがにそういうわけには……うう」
「……」
無言でジッと見つめる。
私の方が小さいのに、ロローさんを追い詰めていく。
あ、ロローさんが目を逸らした。
他愛ないわね。
「わ、我が輩は……」
まだこらえるか。
いい加減観念しなさい。
「ほ、報告は義務なのであります! 無視はできないのであります」
くっ、忠誠心が高いわね。
仕方ない。
奥の手を使うか。
「ナームコさん、今度こそ帰るわよ」
「存じたのでございます」
パワハラ良くない
次回は外に出ます




