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第70話 迷子たち

 この子……人間よね。

 計器には……反応無し。

 ということは、少なくともこの世界の人間ではない。

 つまり、異世界人。

 まさか、5千年前の人間?!

 コールドスリープから目覚めたとか?

 でもそんな装置、辺りには見当たらない。

 そもそもここは倉庫だ。

 そんな設備なんて……

 可能性としては、何処かに納品予定だったコールドスリープの装置が倉庫にあった。

 それを組み立てて、この子を眠らせた。

 当時の技術なら、常温で保存できたのかも知れない。

 それが、私たちが電力を供給したために蘇生処理が始まってしまった。

 目覚めたあの子がさ迷い歩き、疲れてあそこで寝てしまった。

 ……ははっ、そんなバカなこと。

 でも他に説明が付かない。

 単純に転移してきただけ?

 本当に5千年前から生きていた?

 だとするなら、この子は普通の人間じゃない。

 警戒すべき存在になる。


「んー、パパぁ」


 もしかして父さんの隠し子?

 あ……まさか、イーブリンとの子供だっていうの。

 〝イーブリン様〟とか言ってたし……

 だとするなら、これは重大な裏切り行為よ。


「へくちっ」


 寒いのかしら。

 ここは地下だから地上よりは暖かい。

 それでも寝るには少し肌寒い。

 毛布なんで持ってきてないわよ。

 なら私のベスト……は工具だらけで子供には重いわね。

 ど、どうしたら……えっと。

 そうだ、抱っこすればいいんだわ。

 起こさないように、ソーッと、ソーッとよ。

 この子、4~5歳……かしら。

 なんでこんなところに……

 とにかく、みんなと合流しないと。


「ケイボさん、ナームコさんは何処に居るの?」


 ダメだ、相変わらず動かない。


『タイムさん……タイムさん! 聞こえないの?』


 困ったわね。

 下手に動くと迷いそうだし。

 動かなくても今何処に居るか分からないし。

 えーと、入ってきたのはどっちだったかしら。

 ケイボさんにおんぶに抱っこだったから、分からないわ。


「ケイボさん、起きて! ケイボさん!」

「うにゅ……」


 あ、マズい。

 あんまり大きな声を出すと、この子が起きちゃう。

 どうしよう。

 蹴り起こす……のは可哀想よね。

 それに私の足の方が痛そうだし。


「にゅ……パパ?」


 あら、起きちゃったかな。


「オバさん……(だえ)?」


 オバ……

 エイル、落ち着くのよ。

 確かに私は50を過ぎたオバさんなのよ。

 お婆ちゃんって言われなかっただけ、よしとしなさい。


「私は、エイル・ナヨ・ターナーっていうの」


 あ……思わずフルネームで言っちゃった。

 まぁ、この子に知られたからって問題はないか。

 でもなんで言ってしまったんだろう。

 十数年、口にしてなかったのに。

 父さんも母さんも、言わなくなったのに。

 ……いつか、普通に言えるようになるのかしら。


「えっと、お嬢ちゃんはなんていうのかな」

(すず)はね、(すず)っていうの」

「そう、鈴ちゃんね」


 上の名前はなんていうのかしら。

 中洲(なかす)……じゃないわよね。


「パパは? 何処?」

「パパのお名前はなんていうのかしら」


 まさかとは思うけど……父さんじゃないわよね。


「パパ? パパはね、パパっていうの」


 あら、自分の父さんの名前を知らないのね。

 私が思ってるより、幼いのかしら。


「じゃあ、母さん……ママのお名前は分かるかしら」


 イーブリン……じゃないわよね。


「ママはね、ママっていうの」


 うーん、母さんの名前も知らないのね。

 ホッとしたような、残念なような。


「パパ、何処ぉ?!」

「パパがここに居るの?」

「わかんない。鈴、起きた()、オバさんに掴まってたの。オバさん、(わう)い人?」


 ぐ……が、我慢よ。

 子供の言うこと、子供の言うこと。

 よし!


「エイルオバさんは、悪い人じゃないわよぉ。寒そうだったから、抱っこして暖めてたのよ」

「ホントだ、(あった)かぁーい。えへへ。エイ()オバさん、あ()がと」

「どういたしまして」


 でもどうしましょ。

 言いたくはないけど、ケイボさんが動かない限り、迷子が1人増えただけ。

 抱っこしてると両手が塞がって、なにもできない。


「エイ()オバさん、この子、(だえ)?」

「この子? ああ、この子はね、ケイボ君っていうのよ」

「ケイボ君? こんにちわ、ケイボ君。うー?」

「ケイボ君はね、疲れて寝ちゃってるの」

「寝て()の?」

「ここにくるまで、いっぱい働いてくれたからね」

「そうなんだ。良い子だねー、良い子、良い子」


 手を伸ばして頭を撫でようとしている。

 ふふっ、可愛いな。

 手が届くところまで、ケイボさんに近づいてあげる。

 小さな手で頭を撫でる。

 なんだか、タイムさんがモナカくんの頭を撫でているみたいだ。

 もうずっと見てない光景。

 なんとなく、そんな光景がかぶって見えた。


「警告! 侵入者を、発見。排除、しますか?」


 え?

 ケイボさんが動いた?

 侵入者って、もしかしてこの子のこと?


「違うわよ。この子は……わ、私の……姪っ子よ」

「失礼、しました。登録、致します」


 そんな簡単に登録していいの?!

 というか、この子は登録できるのね。

 認識できないはずの私は、どうやって識別してるんだろう。

 タイムさんが言い聞かせたって言ってたけど……

 ただ、1つ分かったことがある。

 この子、確実に私と同郷だわ。


「〝姪っ子〟って、なに?」

「えっと、親戚みたいなものよ」

「親戚……うや?」


 ちょっと難しかったかな。


「お友達ってことよ」

「鈴、エイ()オバさんとお友達?」

「嫌かな」

「嫌じゃないよ。鈴、エイ()オバさんとお友達! えへへ」


 よかった。

 少し心を開いてくれたみたいね。

 でもよかった。

 ケイボさんが再起動してくれた。

 これで移動ができる。


「ケイボさん、ナームコさんは何処?」

「少々、お待ちください……こちらです」


 再び指をさした方向は、さっきまでとは違う方向だった。

 もしかしてさっきはこの子の元に案内を……でも侵入者って言ってたわよね。

 不具合が発生し(バグっ)てただけかな。


「きゃっ!」


 とか思ってたら、いきなりケイボさんに抱きかかえられてしまった。

 確かに鈴ちゃんを抱いてたら、おんぶできないけど!


「ちょっと!」

「きゃあ! あはははは! 速ーい!」


 鈴ちゃんは素直に楽しんでるみたい。

 怖くないのかな。

 狭い倉庫の通路を疾走するケイボさん。

 時々警備ロボを見かけるが、何事も無かったかのように巡回している。

 結構移動したけど、中々辿り着かない。

 ナームコさんが移動したのか、最初からとんちんかんなところに案内されていたのか。

 ま、両方かしらね。

 漸く着いたときには、ナームコさんは豪勢な椅子に座ってくつろいでいた。

あらすじの迷子の幼女がやっと出てきました

これにてあらすじ、回収です

あ、いや、後は連れて帰るのみか

次回は合流します

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