表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/142

第7話 もぬけの殻

 部屋割りといっても、いつもと変わらない。

 いつもといっても、出張所に居た頃という意味だけどな。

 俺と時子とナームコが、元お父さんの部屋。

 エイルとアニカが、エイルの部屋だ。

 時子は嫌だっただろうが、反論も抵抗もしなかった。

 ただ……


「時子は床で寝るから、あなたとナームコさんでベッドを使って」


 やっぱりそう言ってきたか。

 分かり易すぎるぞ。


「いや、それなら俺が床で寝ます。時子さんがベッドを使ってください」

「ううん、時子がわがまま言うんだから、時子が床で寝る」

「ダメです。時子さんが床で寝るというのなら、添い寝します」

「なんでよっ」

「添い寝が嫌でしたら、ベッドで寝てください」

「か……勝手にすればいいわ」


 そう言って、部屋の隅でうずくまってしまった。

 あーそーですかそーですか。

 だったら勝手にさせてもらおうじゃないかっ。

 ということで、わざとらしく隣にドカッと座ってやった。

 その気配を感じて身体をびくつかせるも、動きゃしない。

 こいつ……

 そっちがその気なら、抱き締めて寝てやるっ。

 と思ったのだが、よく見ると身体を小刻みに震わせて縮こまっているじゃないか。

 やせ我慢しやがって。

 これで勘弁してやるか。

 ってことで、頭を撫でてやる。

 頭に触れた瞬間、肩をこわばらせて震えていたが、撫でているうちに肩の力が抜けていったようだ。

 なんだかんだ言っても、ナデナデ大好き星人なところは変わらないのか?

 そう思って顔をのぞき込んでみると、久しぶりに緩んだ顔を見ることができた。

 しかし目が合うと、手を振り払われてしまった。


「やっ、()めてください」


 今までなら〝()めて〟と言いながらも、手を振り払ったりしたことは一度もなかった。

 でも今回は違う。

 本当に嫌なんだな。


「ごめん。もうしないよ」

「あっ……う。そ、そうして、ください」


 手を伸ばせば、簡単に触れられる。

 ちょっと傾けば、肩と肩が触れ合える。

 そんな距離が、ものすごく遠かった。


「兄様っ、わたくしも御一緒させて頂くのでございます!」

「あっ、こらっ!」


 ナームコが無遠慮に俺の隣に座って寄りかかる。

 3人が寄り添い、床に座り込む。


「もっと詰めるのでございます」

「なんでだよっ」


 ぐいぐいと尻を押しつけて、俺を時子の方へと追いやってくる。

 否が応でも触れてしまう。

 そして毛布を無遠慮に掛けてくる。

 3人で一枚の毛布にくるまる。

 いや、くるまされる。

 逃げ出すと思った時子も、何故か受け入れている。

 だからといって前のように戻ったのかというと、そんなはずもない。

 避けはしているが、離れようとする様子もない。

 受け入れてくれたのか、諦めたのかは分からない。


『なあタイム、時子は嫌なんじゃないか?』

『そんなことないと思うよ。でも受け入れたくもないんじゃないかな』


 やっぱり、俺を受け入れられないことに変わりはないらしい。

 だというのに、俺はこの状況を嬉しく思ってしまっている。

 ダメだな。

 離れなきゃいけないのに、離れたくない。

 もっと側に居たい。


「おやすみなのでございます」

「ああ、おやすみ」

「……お、おやすみ、なさい」

もぬけの殻なのはベッドでした……というオチです

次回は拘束されました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ