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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第6章 世界を超えた再会
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第63話 決断

「父さんの跡を継ぎたいなら、妖精の力は必須だ。モナカ君を手放すなよ」

「分かってるわよ。手放すつもりはないわ」


 まだまだ調べなきゃいけないことは、山のようにあるんだから。


「そうか。ならもっと積極的に迫れ」

「やってるわよ」

「そうか。なら孫の顔が見られるのも、そう遠くないのか」

「……は?」


 なんでいきなり孫の顔が出てくるのよ。


「なんだ、やっぱり分かってなかったのか。手放すなっていうのは、そういう意味だ」


 そういう意味って……そういう意味なの?!


「モナカくんには時子さんとあの子が居るわ」

「そこに加わればいいじゃないか」

「そっ、そもそも、魔素人と元素人で子が生せるかどうか分からないわ」

「試してみればいいじゃないか」

「ダメよ。倫理的に問題があるわ」

「なら、問題を無くせばいい」

「それって」


 以前私が言ってたことよね。

 アニカさんなら問題ない。

 つまり、アニカさんと同じ立場に立てばいい。

 裏を返せば……


「そうだ。本気でモナカくんを好きになれ」


 やっぱりね。

 でも無理。


「私、ショタコンじゃないのよ」


 モナカくんだって、こんなオバさんは嫌でしょ。


「今は彼の方が年上だろ。なんの問題もない」

「中身がガキなのはイヤ」

「エイルも大差ないと思うけどな」

「あんなのと一緒にしないで」

「……それはいいが、モナカ君と時子ちゃんをくっつけたりするな」

「どうして?」

「どうしてもだ。父さんが母さんの元に1日でも早く帰れるようにしたいならな。場合によっては、帰れなくなる」

「どういうこと?」

「彼女の目的と、父さんの目的が相反するものだからだ」

「相反する?」


 そもそも彼女の目的って、先輩を見つけることよね。

 それが相反するってどういうことかしら。


「父さんの跡を継ぐということは、彼女と敵対することになるやもしれん」

「えっ……」

「だからモナカ君を引き入れる意味も含めて、一緒になれと言ってるんだ。娘を利用するようで、あまりいい気はしないがな」

「敵対……」


 先輩を見つけられないように妨害するってこと?

 ……そこにどんな意味かあるのだろう。

 実は先輩が超重要人物だった……なんてことないか。

 イーブリンと繋がりが?


「彼女の味方をするというなら、それは父さんと敵対することになる」

「そんなっ。どうして!」

「彼女が召喚された理由は、この星の異常性を取り除くため」


 召喚された理由?!

 偶発的な事故じゃないってこと?


「その原因がイーブリン様だからだ。つまり、父さんの敵だ。星の半分を入れ替え直せばいいと言ったのを覚えているか。ただ入れ替えるのではダメだ。纏わり付いてしまった魔素を取り除き、綺麗な状態にしてから入れ替えねばならん。ただ、そうするとこの星の寿命が著しく短くなる」

「この星を犠牲にするの?」

「星もなにかを犠牲にせねば存続できぬものなのだ。それにこの星は元々長くは持たない。ここには守人が居なかったからな」

「……」


 正直、それも構わないと思った。

 でもそうしたら、デニス父さんやトレイシー母さんはどうなるの?

 モナカくんや時子さんにアニカさんにナームコさんは?

 あの子だって、モナカくんが居なくなれば……

 それに私は、既にこの世界の住人。

 帰りたくても、帰れない。

 大体、2人を置いて帰れないわ。


「守人が居るんだから、今のままでいいじゃない」

「つまり、父さんの敵に回るってことか」

「そんなこと言ってない!」

「だが、そういうことになる」

「この星を犠牲にするくらいなら、今までどおり守人に犠牲になってもらえばいいじゃない。その方が犠牲は少ないわ」

「だが、守人は同じ世界の住人だ。何処とも知れない異世界の住人ではない」


 確かにそうかもしれない。

 でも私は……


「うちはその何処とも知れない異世界の住人のよ」


 これが私の答えだ。


「それがお前の答えなのか」


 明らかに声のトーンが落ちている。

 それまで優しかった顔つきも、少し険しくなってしまった。

 それでも私は……


「この世界のよ、消させはしないのよ」

「父さんと戦うっていうんだな」

「うちは父さんの敵のよ、回らないのよ」

「そうか」


 そう言うと、さっきまでの優しい顔つきに戻った。


「まだ覚悟は決まっていないようだな。なら今すぐ答えを出す必要は無い。デニスと会ってから決めなさい。そのときにまた答えを聞こう。私も娘をこの手に掛けたくはない。そんなことをすれば、本末転倒だ」

「親父のよ、うちと敵対できるのよ?」

「難しい話だな。最終的にはエイルが幸せならそれでいい。例え父さんと母さんが死ぬことになっても、な」

「そんなことのよ、うちの幸せじゃないのよ」

「全てを丸く収めることは不可能な段階に来てる。いや、もしかしたら最初からそうだったのかもしれん。だからよく考えなさい」

「うちは……どっちの両親のよ、大切なのよ」

「分かってる。だから、よく考えなさい。エイルの出した答えなら、父さんは全てを受け入れてやる。それと、流れた魔素は回復してないからな。上に戻ったら、安静にしてるんだぞ。いいな、無理はするなよ」


 そう言い残し、父さんは去って行った。

次の登場はいつになることやら

次回から新章です

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