表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第6章 世界を超えた再会
62/142

第62話 父さん似

 いきなり腕を掴まれ、包帯をむしり取られた。

 当然、足の包帯も。


「お前たちは毒素の正体も知らないのか」

「毒素の正体……父さんは、うっ……知ってるの?」


 なんか、うっすら黒くなってない?


「知ってるもなにも……いいか、毒素の正体は元素だ」

「元素?!」

「そうだ」


 どういうこと?

 それじゃあモナカくんは毒素の塊だとでも?

 でもそんな反応は示したことがないわ。


「洗い流すぞ。しみるが、我慢しろ」

「あぐっ、あああああっ」


 しみるなんてもんじゃないじゃない!

 むしろ今毒素を塗られてると言われた方が、しっくりくるわ。

 液体を掛けられた部分が、焼けるように熱い。


「こら、暴れるな。手遅れになるぞ」

「うぐ、ふっ、うー、も、もう、手遅れ、よ」

「次は足をやる。手遅れとはどういう意味だ」

「2日前に、元素を食べたわ」

「食べただと?!」

「ええ、ふぐっ、あああああ、はぁ、はぁ、倉庫にあったヤツを、一口食べたの」

「倉庫って、5千年前の食べ物をか。食い意地張りすぎだ、馬鹿者」

「モナカくんはぁぁぁぁっ、魔素を食べて、はぁ、栄養にできたのよ。なら私だって元素を、っっく、食べて、栄養に出来るはずだと思って」

「自分で実験したのか」

「誰にも、うっ、迷惑は、掛けてないわ」

「体内洗浄を行う。裸になって横になれ」

「はあ?! なんでよっ」

「異物を除去するんだ。父さんは大雑把だからな。服まで除去しても文句が無いなら、着てて構わんぞ」

「う……変なことしないでよ」

「父さんをなんだと思ってるんだ。娘に欲情などせん」

「もう血なんか繋がってないわ」

「関係ない。エイルになっても、俺の娘だ。誰にも否定はさせん。大体、父さんはもう70過ぎてるんだ。そんな元気は無い」

「その割に、若く見えるわよ」

「肉体的には30前後だろう。さ、術を掛けるぞ。力を抜いて」


 父さんが呪文を唱えると、私を中心に魔法陣が展開した。

 杖も無しにそんなことができるなんて……

 本当に魔術師になったのね。

 禁忌とされた魔術に手を染めてしまった。

 〝大罪人〟か……

 母さんはこのことを知ってたから、死んだことにしたのね。

 魔術なんて、禁忌中の禁忌。

 一家どころか、一族纏めて死罪だ。

 習得できたなんて周りに知られでもしたら大変だ。

 下手をすれば、1つの街が地図から消えることになりかねない。

 それが分かっていてなお魔術に手を染めた。

 母さんも理解を示した。

 父さんがやろうとしていることを、応援することにした。

 だから止めずに見送った。

 本当にそうだろうか。

 本当だとしたら、なら何故母さんは泣いてたの。

 やっぱり、寂しいんじゃないかしら。

 だったら私は……


「余計なことを考えるな。魔力の流れを受け入れなさい」

「父さんは、寂しくないの」

「エイル、余計な――」

「答えて」

「……はぁ。だから、早く終わらせたいんだ」

「30年以上ほったらかしにしてるくせに」

「それはすまないと思ってる」

「父さんがやる必要無いじゃない」

「だが、誰かがやらねばならぬことだ」

「そうだけど……なら、私がやるわ。だから父さんは帰って」

「今の両親に会えなくなるぞ」

「この世界は、魔術は禁忌じゃないわ。会おうと思えば会えるもの」

「そうか……」

「あ、でもデニス父さんをトレイシー母さんのところへ連れて帰るまで待ってほしいわ」

「分かった。なら、その頃にまた迎えに来よう。どうだ、楽になったか」

「うん、凄く楽になったわ。ありがとう」

「元素はあらかた分離できた。だが毒素はまだ溜まってるからな」

「そうよ、毒素が元素ってどういうことなの」

「正確には毒素は魔素だ。元素ではない。元素と同じ振る舞いをしてる魔素が、毒素なんだ」

「どういうこと?」

「確か錬金術師が一緒に居たな。彼女の方が専門だ。聞いてみろ」

「ナームコさんに? 彼女は毒素の正体を知ってたってこと?」

「いや、恐らく気づいてないだけだろう。彼女たちにとって無害な毒素も存在するからな」

「無害な毒素……もしかして、モナカくんたちにとって有毒な毒素もあるってこと?」

「あるかもしれない、とだけ言っておこう。正直、父さんには分からない。彼らとは根本が違うからな」

「根本? 元素と魔素ってこと?」

「いや、簡単に言うと父さんやエイル、それに錬金術師の世界は根っこが一緒なんだ。だが彼らはその根っこが違う。同じ世界樹に実った果実(世界)ではない。別の世界樹に実った果実(世界)なんだ。だからあの召喚術師でなければ、呼び寄せられなかったんだ」

「アニカさん?」


 アニカさんでなければ呼び寄せられなかった?

 彼女も転生者よね。

 父さんはなにを知ってるんだろう。


「……エイルが欲しがってるものは、この倉庫にはない」

「えっ」


 いきなりなに?

 私が欲しがってる物……

 |MC-DCコンバーター《魔力-電力変換器》。


「そもそも、見つけたとしてもあれは元素だ。今のお前では使いこなせない。だから、代わりにこれをやろう」

「これは?」


 透き通った、紫色の鉱石?


「結晶化した毒素だ」

「ぅわあ!」


 え?!

 毒素って結晶化するの?

 そんな話、聞いたことがない。


「っはっはっはっは、安心しろ。扱い方を間違えなければ、無毒なままだ」

「扱い方……」


 無毒な毒素ってなによ。

 益々意味が分からないわ。


「お前ならできると信じてる」

「私にできるかしら」

「なに言ってるんだ。できるかできないかじゃない」

「やるんだ」


 それが口癖だったわね。


「そうだ。分かってるじゃないか」

「子供の頃、父さんたちが言ってたからね」


 なんでそんなところが一緒なのかしら。


「父さんたち……か。良い両親に恵まれたな」

「感謝してるわ」

「俺たちよりもか?」

「比べるようなものじゃないでしょ」

「それもそうか。っはっはっはっは」

「でも、父さんは2人ともダメね。母さんを泣かせてばっかり」

「そうか、ダメ親父か」

「ダメ親父よ」

「っはっはっはっは! なら、エイルは父さん似だな」

「えー?! ……そうかも」


 私も、母さんを泣かせてばかりだもの。

毒素の正体が明らかになりました

どういったものかは、またの機会にでも

次回は二択です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ