第58話 お参り
このまま一緒に居たら、いつか私も殺される。
あんな子と身分証を繋げてたなんて。
みんなの分も切っておかないと……
あ、母さんが危ない!
今すぐ帰って……でもそうすると父さんを見つけに行けなくなる。
それに帰ったとして、私になにができる?
いや、モナカくんが居れば、そう簡単に手は出さないはず。
『エイル殿、聞こえるでありますか』
ロローさん?!
なにか問題でも……まさか!
『どうしたの』
『エイル殿?』
『なにかあったの?』
『エイル殿……なのでありますか?』
『なに言ってるの、当たり前でしょ』
『えっと、もしかして勇者語でありますか? 申し訳ないのであります。我が輩には理解できないのであります』
あ……
切断したから翻訳されなくなったんだ。
『ごめんなのよ。どうかしたのよ?』
『エイル殿! それが、ナームコ殿と会話ができなくなってしまったのであります。どうやら、イヤホンの調子が悪いようなのであります』
そうか。
となると、私もナームコさんと会話できなくなってるのね。
だからって繋ぎ直すわけにはいかない。
リスクが大きすぎるわ。
『分かったのよ。うちも今から戻るのよ。少し待つのよ』
……あれ? 返事がない。
『ロローさん?』
あ、ここ圏外だ。
どうして……だって結界の中で圏外の場所なんて無いはずよ。
え……ここ、何処?
確か私は制御室の前で倒れて仮眠室に運ばれて……うう、まだ頭がクラクラするわ。
私、何処を走ってきたのかしら。
全然覚えてないけど、まだビルの中……のはずよね。
でも、建物の中には見えないわ。
森? いえ、杜かしら。
なんとなく懐かしいような……あ、ここ、あそこだ。
ばあちゃんちの裏手にある神社の参道に似てるんだ。
なんでそんなものがこんなところに……
でも、いい匂い。
森林浴なんて、いつ以来だろうか。
空気も美味しい。
木漏れ日が暖かい。
……ビルの中の筈なのに、木漏れ日?
しかも地中に埋まっているビルなのに?
ビルの中じゃない?
えっと……確かこっちだ。
少し走って行けば神社が……あった!
懐かしいな。
やっぱり、あの神社だ。
子供の頃、初詣に家族みんなで来てたっけ。
木々に囲まれた、山中の神社。
結局、なんの神様が祀られてるのか、知らないのよね。
かなりくすんだ朱色の鳥居をくぐって中に入る。
石畳の参道は、草が生え放題だ。
こんなに荒れてたかな。
石畳も、所々欠けている。
両脇に苔むした石灯籠が一対立っている。
誰がやったのか、ろうそくが灯っていた。
初詣のときは、参道の両脇に屋台が並んでいたっけ。
食べ物や縁起物、色々あった。
賽銭箱にお金を入れようと思ったけど、この世界に現金は存在しない。
あったとしても、異世界のお金じゃダメよね。
えーと、確かまずは2礼して、柏手を2度打つ。
最後に1礼をするのよね。
って、こんな時に私、なにやってるのよ。
「ほう、忘れてはないみたいだな」
「! 誰!」
手を洗っていないので、ちょっと不敬かな
次回はちょっと情報量が多いかも知れません




