第56話 死神の看護
廊下に銃声が鳴り響く。
銃弾を全身に浴び、赤い体液を垂れ流す。
撃たれた者は最後の断末魔を上げることなく、膝から崩れ落ちた。
警備ロボの構えた銃の銃口から、一筋の煙が立ち上がっている。
加減を知らないのか、全弾を撃ち尽くしていた。
少し興奮しているのか、息を荒げている。
そして生き残った者に駆け寄っていった。
「エイルさんっ!」
廊下にタイムの声が響き渡る。
エイルと呼ばれた者の首が、声がした方をゆっくりと向く。
銃を構えた警備ロボが全力で駆け寄ってきている。
何故自分が生きているのか。
その理由は分からなかったが、今度こそ死んだと考えた。
「エイルさん、大丈夫ですか?」
ああ、全身を金属で覆われた死神が私を呼んでるわ。
私が死んだら、母さんは悲しむだろうか。
父さん、探しに行けなくなってごめんなさい。
「しっかりしてください」
この死神、タイムちゃんみたいな声してるわ。
悪趣味ね。
そうやって安心させて、絶望の谷底へ突き落とすんだ。
「えーと、どうすればいいのかな。とりあえず、救急キットがあるから、応急手当をしましょう。意味があるかは分かりませんか、やらないよりはマシだと思います」
うっ、なにをするの?
傷口になにを塗り込むつもりよ。
凄くピリピリする。
や、やめてっ!
「暴れないでください。傷口が広がりますよ。包帯を巻きますからね」
やめてっ、本当に痛いの!
いたぶるなら、いっそひと思いに殺してっ。
「足も同じようにしますから、大人しくしててくださいよ」
いやぁぁぁぁっ!
「エイルさん? エイルさんっ!」
そして私は、気を失った。
今回で第5章は終了です
次回は文化の違いが現れます