第55話 圧倒的実力差
「タイム・オブ・ターイム！」
電脳世界でもちゃんと使えるみたい。
おお、レースのドライバーみたいな衣装だ。
なんか、凄く身体にぴったりフィットしてる。
ボディライン丸わかり？！
これで悩殺しろってこと？
違うよね！
「アクセルモード、タイムちゃん！ って、変身中くらい撃つの止めたらどうですか！ 躾がなってませんね」
「……」
それでも無視ですかっ。
でも、このくらいなら第１足で余裕ね。
って、痛い痛い！
更に火力を上げてきたのか。
なら、素手は止めて鉄パイプで叩き落としましょう。
そらそらそらそら！
お？ おおお？
中々学習速度が速いな。
手数も増えてきたよ。
「第２足！」
ふう。
まだまだ余裕よ。
……弾切れとか無いのかな。
あるわけないか、ははっ。
って、なんか腰のポーチから取り出した！
あれって、手榴弾？！
やばっ、反応が遅れた。
「きゃあ！」
足下で爆発しちゃった。
今のでシールドが３枚も逝っちゃったじゃない。
あーあ、もう９６枚しか残ってないや。
でもこのくらいでタイムは……え？
うっそぉ、まだあるのぉ？！
うわぁ、器用ねー。
銃を撃ちながら、取り出した手榴弾を投げるなんて。
投げてくるのはいいけど、何発あるのよっ！
どう考えてもそのポーチには入りきらないでしょ。
……って、イメージ映像なんだからそんなの当たり前か、っはは。
よーし、そっちがその気なら！
「第３足！ アーンド、いでよ！ 小野小太刀」
弾丸は小野小太刀で斬り落として、手榴弾は鉄パイプで叩き返しましょう。
「うーりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ…………」
ふっふー、自分の武器で攻められる気分はどうですか！
って、無傷？！
なるほど。
自分の攻撃だから、防ぎ方も完璧ってことですか。
えーと、充電は……あまり無理はできないか。
でも長くなってもジリ貧だし。
あれ、撃つのを止めた？
「どうされました。降参ですか？ タイムは寛大だから、投降をなされるのでしたら、危害は加えませんよ」
ありゃ、武器をしまっちゃったよ。
本当に降参なの？
かと思ったら、回りに散らばっていた銃弾から鉄柱が伸びてきた！
そしてそれらが組み合わさり、タイムを囲う牢獄となった。
今度は隔離なの？！
確かに駆除できないウィルスは、隔離するのが一番ですけど。
「もー、無駄なあがきは止めましょうよ」
なんなのこの隙間だらけの牢獄は。
もっと手を抜かないで、詰め込みましょうよ。
せめて鉄棺ぐらい組み上げてください。
とはいえ、このままだと無理ね。
抜けられる大きさになりましょう。
うん、電脳世界で小さくなるのは久しぶりだな。
このサイズなら、余裕で抜けられる。
「名無しさん、もう止めましょう。話を聞いてください」
「……」
まだ続けるの？！
今度はロケットランチャーみたいなの、出してきたんですけど。
仕方ない、諦めるまで付き合いますか。
えーと、エイルさんの様子は……なにこれ。
ああ、皆さんを職員に偽装したデータを書き込んでるんですね。
きゃん！
もう、耳元で爆発させないでほしいな。
うん、３足なら余裕で修復が追いつくみたい。
ふっ、タイムを本気にさせる相手ではなかったか。
くかかかかっ！
って、うわ、いろんな攻撃方法を持ってるのね。
さすが５千年前のＡ．Ｉ．。
相手にとって不足は……ま、それはいいとして。
そろそろ本格的に説得しますか。
じゃない。
殴って分からせますか。
っはは、バカですね。
物理的にメモリを分離したって無駄ですよ。
タイムはそこに居ませんからね。
とりあえずこういうのは、抑えちゃえばいいんです。
ってことで、メモリの動作周波数を下げちゃいましょう。
おお！ 動きが悪くなってますね。
頭が回っても、身体が追いつきませんからね。
もっと下げちゃいましょうか。
ふふふっ、頭が回る分、もどかしそうですね。
「なーにーをーしーたー」
うわ、凄い遅回し。
声も凄く低くなってて、聞き取りにくいな。
データアクセスが遅いから、上手く再生できないのね。
データバスくらいは普通にしておくべきでしたか。
「はい、少しだけメモリの動作周波数を下げさせてもらいました」
「なーんーだーとー？ー！ー」
「次は何処を下げましょうか」
手っ取り早いのはＣＰＵなんだけど。
「なーぜーきーさーまーはーふーつーうーにーしーゃーべーれーるーんーだー？－」
「当たり前です。名無しさんと一緒にしないでください。タイムはウィルスと違って、あなたに依存しないんですよ」
タイムはマスターに依存してるんですから。
ただのＡ．Ｉ．じゃないんですよ。
ただの……
「でも、説得は難しそうですね。上書きしちゃいますか」
「きーさーまー、きーかーいーじーんーけー……」
「あーもー長いです！ ＣＰＵを止めちゃいましょう。ＨＡＬＴ！」
よし、さすがにＣＰＵを止められたら、動けなくなりましたね。
それじゃ、時が動き出す前に、綺麗にしてしまいましょう。
お掃除お掃除、メモリをクリーニング。
外部記憶装置も完全フォーマット！
復元できないように、念入りにっと。
さて、エイルさんはどうしてるかな？
……え、撃たれたの？！
なんでタイムを呼ばないんですかっ。
……呼ばれてもマスターの時みたいに、サポートできないんでした。
タイムが遊んでないで、さっさとやっていれば……
うう、解析速度、もっと上げなきゃ。
反省してる場合じゃない。
こいつを再起動して、助けに行かなきゃ！
決着はあっという間でしたね
次回は第５３話の続きです
