表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/142

第52話 死体は二度死ぬ

『どうかしましたか?』

『えっ、なんで?』

『だって、コードに乱れがありますよ。ほら、ここ。不具合があり(バグって)ます』

『あ……』


 いけない。

 今はこの子を説得するのに集中しなきゃ。


『エイルさん、タイムが説得してみましょうか?』

『タイムちゃんが?!』

『説得、難しそうですよね』

『そうね。自己修復が早くて、自己防衛力が高いから、中々手強いわ。自我を持ってると、本当に厄介よ』

『同じA.I.のタイムなら、説得できるかも知れないから』


 説得……か。

 私の場合は、どちらかというと洗脳に近い。

 でもタイムちゃんなら……あるいは。


『分かった、お願いね』

『任せてください! タイムは、RATS(ラット)のA.I.なんですから、こんな新参者に負けませんよ』


 新参者?!

 5千年前のA.I.が?

 は……ははっ。

 参ったね、こりゃ。

 今後はタイムさんって呼ばないとダメかしら。

 お言葉に甘えて、警備ロボットの方はタイムさんに任せることにしよう。

 私は私にできることをしなきゃ。

 っと、その前に。


『ロローさん、まだ生きてる?』

『まだ生きてるのであります』

『どんな感じかしら』

『扉を押さえて、侵入を防いでるのであります。エイル殿の言うとおり、無理には入ってこないようなのであります』


 一応安全なのか。


『外に居るのは、ここの警備ロ……警備ゴーレムよ』

『なんと! ゴーレムでありますか』


 ロボットとか言っても分からないものね。

 似たようなもんだから、いいでしょ。


『でありますと、我が輩の武装では、歯が立たないのであります』


 あー、ナームコさんのゴーレムと混同しちゃったかな。

 でも実際どうなんだろう。

 防火シャッターを打ち抜けるんだから、歯が立たないってことは無いと思うんだけど。


『ナームコさん、あとどのくらいもちそう?』

『あと6時間くらいなのでございます』

『結構燃料が抜かれたのかしら』

『そうでございますね。でございますが、圧送が無くなったのでございます。これ以上は短くならないと存じるのでございます』

『分かったわ』


 つまり、補給が終わったということ。

 準備万端なのね。

 何体稼働できているのか分からないけど、不法侵入者と判断されている以上、排除しようと動いてくるはず。

 だったら、私たちの情報をデータベースに書き込んでやれば、つまり職員として登録してしまえば、問題は解決する!

 よし、やっちゃいましょう。

 えーと、これね。

 これに必要なデータを書き込めば……

 私たちのデータは中央にある。

 後はこっちで使えるデータに変換してっと。

 形式が随分似てる……

 やっぱり勇者の故郷(ふるさと)は……


 よし、これで大丈夫なはず。

 試してみる? ……しかないわよね。

 確か扉前に1体、門番のように張り付いて……

 うん、まだモニターに映ってる。

 こいつで試すしか無いのかしら。

 じゃあ、開けるわよ。

 一応いきなり撃たれてもいいように警戒をしておきましょう。

 内側からは、鍵を開けなくても開く仕組みになってる。

 壁にもたれかけ、モニターを見ながら、ノブに手を掛ける。

 う、もう反応してる。

 どんだけ敏感なのよ。

 ……本当にいきなり撃ってきたりしないわよね。

 そしてゆっくりと回す。

 相手に動きは無い。

 扉に対して銃を構え、ジッとしてる。

 いつでも撃てるぞ……ってことかしら。

 それともこっちを警戒してる?

 ゆっくりと扉を少しだけ開く。

 まだ動きは無い。

 身分証……で見るのは怖いわね。

 レイモンドさんみたいに壊されたら面倒だ。

 今中央に戻ってる余裕は無い。

 鏡……くらい持ってればよかった。

 昔は母さんに〝鏡くらい持った方がいいですよ〟って言われてたっけ。

 こういうことだったのね。

 直接顔を出すしかないのか。

 その前に石でも投げてみようかしら。

 ……室内にあるわけがない。

 えーと……あ!

 この人に手伝ってもらおう。

 一度死んでるんだ。

 もう一度死ぬことはないでしょ。

 とりあえず、足を貸してもらうわよ。

 これを隙間からソーッと。

 覗かせた瞬間、引き金が引かれて弾が飛んできた。

 見事に足の骨に当たり、砕け散った。

 よかった、頭出さなくて。

 そう思った瞬間、警備ロボが扉を蹴破って入ってきた。

 ヤバい!

 そう思ったが、壁に張り付いたまま、動くことができなかった。

 撃たれる!

 ……撃た……れない?

 警備ロボは入ってきただけて、私を撃たなかった。

 もしかして、職員として認識されたのかな。

 いや、なにかがおかしい。

 辺りを見回しているだけで、私に気づいた様子すらない。

 それはいくらなんでも変だ。

 明らかに私を視界に捉えているはずだ。

 なのになんの反応も示さない。

 もしかして……見えてない?

 ならこのまま外に出ても大丈夫かしら。

 それが甘かった。

 私が動いた瞬間、警備ロボが反応し、躊躇(ちゅうちょ)なく撃ってきた。

死体をこき使うエイルでした

次回は、死体がとうとう怒ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ