第44話 そして夜は更けていく
エイルがナームコを連れて中央省に向かって、4日が経った。
いつまで遊んでいるつもりなんだ、あいつは。
『タイム、エイルはどうしている?』
『ん? 今日は1日ずっと燃料を入れてたから、その間、ずっと倉庫の中を見て回ってたよ』
『そうか。祠に居ることは、まだトレイシーさんには秘密なのか? あんまり長いと変な勘違いをされるかも知れないぞ』
『エイルさんもそれは分かってるみたい。明日また発電機を回して、今度こそ制御室を制圧するって言ってる』
『制圧って……テロリストかよ』
『みたいなものだよ。死者への冒涜が酷いの!』
『ははっ。代わりにタイムが拝んでやれ』
『ミコミコモードになれってこと?』
『なんだそれ』
『えっと、妖怪特攻がある衣装で、お祓いとかがメインの能力らしいよ』
そんなのもあるのかよ。
『てことは、巫女さんの衣装か……ふふっ』
『な、なによ』
『いや、想像したら可愛いなって思って』
『なっ……そ、そうかな』
『そうだよ。絶対可愛い』
巫女装束のタイム……
そうだ、来年の正月はミコミコモードで過ごしてもらおう。
『そう? え、えへへへ』
『あ、トレイシーさんが出てきた。またな。エイルのこと、頼んだぞ』
『うん! またね』
タイムのアイコンが、再び出張中の看板を掲げた。
ま、どうせ覗き見されているんだろうけど。
それをどうこう言うつもりはない。
だって、タイムは俺の中に居るんだから。
見えない方がおかしいんだ。
見ないようにしても見えてしまう。
気にしても仕方がない。
居るのが当たり前なんだから。
「あら。お皿を並べてくれたんですか? ありがとうございます」
「いえ、このくらい当たり前ですよ」
普段はエイルやアニカが並べてくれている。
それを代わりに俺がやっただけだ。
手段は違うけどな。
時子だって、前は手運びしていたんだし。
夕飯を食べ終え、フブキの散歩に行く。
時子は一緒に来てくれるし、手も握ってくれる。
でもやっぱり無言だ。
例のオバさんの前を通るときも、会釈をするだけで無言のまま。
オバさんはオバさんで俺が「こんばんは」と挨拶をすると驚く、という繰り返し。
特に変化はない。
家に戻っていつものようにアニカの相手をしようかと思ったが、今日は扉が開かない。
ノックをして呼んでも返事がない。
もう寝てしまったのだろうか。
そう思って俺も寝ることにした。
いつものように、開きっぱなしの扉から部屋に入る。
いつものように、ベッドを使わず部屋の隅で丸まっている時子の隣に座る。
いつものように、時子がその場から携帯を使って扉を閉める。
いつものように、2人で毛布に包まって眠りにつく。
そして1日が終わる……と思ったら、アニカが入ってきた。
なにか用か? と思ったが、毛布に潜り込んできて、俺にしがみついてきた。
寂しいのかな。
今日のことで、限界が来たのかも知れない。
俺で寂しさが紛れるなら、いくらでも頼ってくれ。
その日見た夢は、いつもじゃれついてくる可愛い犬が2匹に増えていた。
夢の中へ行ってみたいと思いませんか
なので、次回は行ってみようと思います




