第41話 充電効率の法則
翌日、朝食後にイフリータを召喚した場所へ向かった。
昨日夜のうちに、微精霊との交信を色々試してみたらしい。
基本中の基本で、一族の者は幼少のときにやるようなものだという。
そんなことは当然アニカだって何度も試していた。
それでも姿を現してはくれなかった。
手順を間違えたのではないか……とフレッドが手本を見せることになった。
ところがそこでおかしなことが起きた。
なんとフレッドも精霊が召喚できなくなっていたのだ。
どうやら周りの人間にも影響を及ぼすようで、出発しようとしたら、さっきまで居た馬型精霊も居なくなってしまった。
つまり馬車を引く馬が消えてしまったということだ。
だからフブキで移動している。
俺と時子がフブキに乗り、アニカとフレッドが荷台に乗った。
時子はなにも言わず、つまり文句すら言わず、俺の後ろに乗っている。
今までと同じように。
それは勿論、荷台が定員オーバーだからなんだけど。
一緒に来ることに抵抗すらしない。
歩み寄ってくれた……というより、全てを諦めたという感じに見える。
目が完全には死んでいないけど、無気力で、なすがままになっている。
コレじゃまだ抵抗してくれた方が、元気があっていい。
そう思ってしまうほどに、無気力だ。
……落ちるなよ。
前と違って、落ちないように縛り付けられないんだからな。
もしかしてキスをしようとしても、抵抗しないんじゃないか?
いやいや、俺はなにを考えているんだ。
そんなこと、許されるわけないだろ。
『意気地無し』
『は?!』
『なんでもない』
タイムさん?
まさか……聞こえて……ないよね。
それともまたあいつと話を?
ま、まあいい。
それより、なにを考えているんだといえば、時子もなにを考えているのか、分からない。
寝るときは相変わらずベッドで寝てくれない。
だから俺もベッドを使わず、その隣で寝ているんだが……
結局寄り添って寝ていることに違いはないんだから、ベッドで寝て欲しい。
というか、一昨日までは一応抵抗してくれていた。
なのに昨日の夜から完全に無気力状態。
もしかしたら、床で寝ようとした時子を抱きかかえてベッドに寝かせれば、ベッドで寝てくれるんじゃないかな。
今晩試してみよう。
今日の朝御飯もそうだ。
お腹を満たすという感じに見えなかった。
トレイシーさんに悪いから腹に詰め込んでいる……そんな風に見えた。
その程度の感情は残っているってことだよな。
そしてトレイシーさんもなにか感じたのか、心配していた。
「無理に食べなくてもいいんですよ」
とまで言わせてしまった。
聞こえているのかいないのか、返事もせずそのまま食べ続けた。
やっぱり原因は、昨日のあのやり取りだろう。
ただ悪いことばかりではない。
タイムが言うには、充電効率の悪化が止まったらしい。
この効率の善し悪しについて、タイムは教えてくれない。
いや、話すことができないと言っていた。
俺の予想は、時子の状態に左右されているんじゃないかと思っていた。
間違いなく外に出ていたときが最高に良かったはずだ。
それがお兄さんと戦ったあのときから悪くなっていった。
そこまでは俺の予想どおりだ。
なのに、今は悪化が止まっている。
俺の予想が正しければ、更に悪化が加速すると思っていた。
違うのか?
分からない。
なんにしても、時子と一緒に居られる時間が削られることはなくなった。
残された時間は長くない……と思う。
その前に先輩を見つけ出さなきゃ!
先輩だけじゃない。
タイムの前のマスターも見つけないと。
先輩より手がかりがないけど。
そもそもこの世界に居るかすら怪しい。
願わくば、見つからなければ……って、なに考えているんだ。
2人とも、居るべき場所へ送り届けないと、死んでも死にきれない。
折角生き返れたんだ。
無駄にしたくはない。
そんなことを考えていたら、山の入り口、駐車場に着いた。
ちょっとサラッと流しすぎたかな
次回はとある工作班長が出てきます




