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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第3章 貿易センタービル
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第34話 実食!

「ナームコさん、私は夕飯要らないから」

「要らないのでございますか?」

「ええ」

「そうでございますか」


 だって私には、アレがあるんですもの。

 ふふふふ。

 さて、ナームコさんは外で作ってるみたいだし。

 早速食べてみますか。

 っと、その前に。

 ふむふむ、これ1つで半日分のカロリーと栄養素が取れるのか。

 メーカーは……といっても、5千年前のメーカーなんて知らないわ。

 お値段は……うん、知らない貨幣単位だ。

 価値が分からないわ。

 とりあえず身分証で写真を撮っておきましょう。

 よし、包装を剥くわよ。


『エイルさん、ホントに食べるんですか?』

『ひゃっ! って、なんだタイムちゃんか』

『なんだじゃありませんっ。5千年前のものですよ。お腹壊しますよ』

『そんなの、食べてみなきゃ分からないでしょ』

『食べなくても分かりますっ』

『いいじゃない。私が見つけて私が食べるんだから。それにこんなの食べるの、何年振りだと思ってるの』

『知りませんよ。エイルさんの昔の食生活なんて』


 そうだけど。


『いいじゃない。モナカくんは魔素でできた食べ物食べて、消化して栄養にしてるのよ。だったら私だって元素でできた食べ物食べて、消化して栄養にできるかも知れないじゃない。それを確かめるのよ』

『わざわざ5千年前の怪しい食べ物食べなくても、ナームコさんに言って分けてもらえばいいじゃないですか』


 そうだけど!

 絶対持ってるだろうけど!

 でも、それが分からないのよ。


『ナームコさん、タイムちゃんたちと同じ頃にこっちへ来たって言ってたわよね』

『そうですね』

『その間、あんな不毛の地でなにを食べてたのかしら』

『それはやっぱり持ってきてたものとか、定期的に送られてきていたものとかじゃないですかね』


 普通はそう考えるわよね。


『あの子はお兄様からはぐれていたのよ。送られてきたものを食べられなかったはずよ』

『そう言われると、確かにそうですね。なにを食べていらしたんでしょう?』

『食べ物も錬金したのかしら』


 なにから錬金したのかしら。

 排気ガスから燃料は作れないらしいから、あの可能性は無いでしょうけど。


『まさか!』


 まさかタイムちゃんモアレを想像したのかしら。

 それを考えるのは()めましょう。

 確かに堆肥として撒いて、それを植物が食べ物に変換してる……といえなくもないでしょうけど。

 直接聞けば分かるのかな……分かりたくないな。

 ま、そんなことよりご飯ご飯っ♪

 包装紙を剥いて……っと。


『エイルさん、()めましょうよ』

『止めないで。人類のために確認しなきゃいけないのよ』

『エイルさんが自分の好奇心に負けてるだけでしょっ!』

『うるさいのよ! 細かいことを言うタイムちゃんは、モナカくんにモテないわよ』

『人類の進歩のため、犠牲はつきものです! さ! ガブッといっちゃいましょう!』


 この子は……

 ナームコさんと同じなの?!


『さ、ガブッと』


 そ、そう言われると逆に食べづらいわね。

 って、私は犠牲になるつもりはないから!


『ささささ、遠慮なさらず』

『しないわよ』


 まったく……

 えっと、見た目は……傷んでるようには見えないわね。

 コーティングしてるチョコも、溶けた感じは無し。

 匂いは……分かんないな。

 モナカくんは母さんのご飯を良い匂いと言ってた。

 でも私は嗅ぎ取れない。

 ちょっと舐めてみようか。

 ……んー、味もしない。

 舌触りもチョコというより、石?

 まさか化石化してるの?

 いや、5千年ぽっちじゃ無理よね。

 条件も合わないし。

 でもこのチョコ、握ってるのに全然溶ける様子がないわ。

 やっぱり熱が伝わってないのね。

 (かじ)ってみる?

 ……歯が欠けないといいけど。


『なにしてるんですか。ナームコさんが来ちゃいますよ』

『ふふはいはへ。ふほしははっへへ』


 少し噛んでみると、柔らかさは普通だ。

 これなら噛み切れるかも。

 ゆっくりと歯を食い込ませていく。

 ん、石?

 いやいや、そんなもの入ってるわけない。

 あー、これナッツか。

 確か原材料に書いてあったわ。

 ちょっと硬いな。

 とりあえず、ナッツを避けたら噛み千切れたわ。

 とにかくナッツが硬い。

 歯が欠ける未来しか見えないわ。

 そんなことより、味がしないわね。

 無味無臭……かしら。

 単に私が感じられないだけだと思うけど。

 でもモナカくんはこっちの食べ物の味も匂いも感じられるのよね。


 なんか、不公平だわ。


 でも食感は悪くない。

 これ、本当に五千年前のものなのって感じよ。

 これで味と匂いが感じられればなー。


『どうですか?』

『ん? 元素の食べ物なんて、甘くも辛くもないわ』

『そうなんですか?』

『ええ。でも食感は悪くないわ。喉越しは……』


 ナッツだけ手に吐き出し、残りをゴクリと飲み込んでみる。

 飲み込みづらいとかも特になく、胃の中に落ちていく。

 やはり無味無臭である以外、特に変わった感じはしない。


『ナッツが堅いわ。噛めそうだけど、歯が欠けそうね』

『なら、食べない方がいいんじゃないですか』

『んー、ハンマーで叩いてみましょう』


 確かここに……あったあった。

 えっと、ナッツを布でくるんで……叩く!


『ナッツを砕いてる音じゃないですね』

『そうね。鉱石を叩いてる感じよ』


 でも叩けば砕ける……いえ、潰せるものね。

 あら、油も出てきたわ。

 沢山あれば、油が絞れそう。

 よし、後はこれを食べるだけね。


『それ、ホントに食べるんですか?』

『なによ。さっきは遠慮せずガブッとって言ってたじゃない』

『あはははは。さすがに石を食べてもらうわけにはいかないじゃないですか』

『石じゃなくてナッツよ』


 砕いたナッツを口に放り込む。

 ……完全に砂利(じゃり)じゃない。

 これ、飲み込むの?


『エイルさん、ペッしましょ。ペッ!』


 私は子供かっ。

 うー、でも本当にジャリジャリするわ。

 これは水で流し込むしかないわね。

 水筒を取り出し、無理矢理水で流し込む。

 うわ、まだ残ってる。

 口に水を含み、クチュクチュとすすいで飲み込む。


『ぅわぁ……汚いよぉ』

『お茶で口をすすいで飲み込むのなんて、普通でしょ』

『おばあちゃんじゃないんですから』

『失礼ね。これでもまだ若いつもりよ。実際、身体は若いんだから』

『精神がおばあちゃんです』

『いいでしょ! そっちの世界ではロリババァとかいってモテるんでしょ……誰がババァよっ!』


 私はまだ定年前よっ!


『自分で言ったんじゃないですかっ!』


 まだなんか残ってる感じがする。

 うー、なんか気持ち悪い。

 油が悪かったのかしら。

 そういえば、消化できない油はそのまま出てくるって聞いたことがある。

 しかもコントロールできないとか……

 まさか、ね。

 よし、残りはモナカくんに食べてもらおう。

 5千年腐らなかったんだから、帰るまでの間くらい、なんてことないでしょ。


『エイルさん、もう食べないんですか?』

『ん?! ええ、モ……』


 まてよ。

 タイムちゃんに言ったら、絶対阻止される気がするわ。


『マ?』

『もーお腹いっぱいだから、残りは後にしようかなって』

『一口でですか?』

『そうよ』

『そんなに小食でしたっけ』

『一口で十分なくらい、カロリーがヤバいヤツなの!』

『そうなんですか』


 ふぅ、危ない危ない。


『てっきりマスターに食べさせるために、残してるのかと思いました』


 ギクッ!

 モナカくんのことになると鋭いわね。


『そ、そんなことしないわよー大事な検……モナカくんがお腹壊したら、大変じゃない』

『今検体って言いませんでしたか?』

『言って、ないわ、よ』

『じー』


 くっ……

 完全に疑われてる。

 このままじゃ計画が実行できないわ。


『今、モナカくんはなにしてるの?』

『マスターですか? 時子と一緒に、フブキの散歩中ですね』

『アニカさんは?』

『ダメですね。まだ精霊が召喚できません。明日フレッドさんに連絡するみたいです』

『お兄さんに?』

『本人はかなり嫌がってますけど。フレッドさんが来ればイフリータさんも必ず来ますから、理由が分かるんじゃないかって、マスターが……』

『そう』


 アニカさんは重傷みたいね。

 本当、どうしたのかしら。

 ま、とにかく、話題そらしはできたみたい。

 とりあえず、単発式詠唱銃(カートリッジガン)の調整をしましょう。

 アレを組み込めれば……

 上手く親和させられるかしら。

 いいえ、親和させるのよ!

5千年前じゃないけど、沈没船のワインを飲んだ人が居たような……

食べられたとして、食べてみたいですか?

次回は一方その頃……

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