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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第3章 貿易センタービル
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第33話 携帯型高カロリー食

 次の日、色々と修理に追われてしまった。

 5千年振りに動かしたから、結構無理をさせてしまったようだ。

 修理といっても、やるのはナームコさん。

 私は指示を出すだけ。

 ロローさんは力仕事。

 現場監督になった気分だわ。

 午前中はオーバーホールに追われ、午後は燃料の精製に明け暮れた。

 そんな私は1人、倉庫を徘徊している。

 オーバーホールは指示をしなければならないけれど、燃料の精製はすることがない。

 だから1人倉庫を徘徊して、なにがあるのか見て回っている。

 かなり広いから1日2日で見て回れるものでもない。

 端が見えないってどれだけ広いのよ。

 暇潰しには最高だ。

 本当ならお宝の山なんだろうけど、私にどうこうできるものではない。

 小さめのものの梱包を解いて、中を見てみた。

 普通なら魔力を通せば簡単に使える。

 でもこの子たちは魔力では動かない。

 電気が無いと動けない。

 食料品もあったみたいだけど、全部持ち去られた後みたいね。

 単純に餓死かしら。

 それとも酸欠?

 ま、死因に興味はないわ。

 こんなところで、一般人が生きていられるはずもない。

 ……ん?

 あ、1つ残ってるわ!

 携帯型高カロリー食ね。

 包装も破けてない。

 やっぱりこっちだと劣化しないのね。

 なら、中身も?

 当然だけど、賞味期限も5千年前に切れてるわ。

 だ、大丈夫かしら。

 食べてみる?

 でも貴重なサンプルよ。

 食べる前に調べなきゃ。

 ……どうやって?

 散々モナカくんと時子さんを調べたけど、計器は反応しなかった。

 まるで動く鉄鉱石。

 これも同じはず。

 なら、食べてみてどんな反応を起こすのかを調べるべきよ。

 そうよ、これは実験なのよ。

 お腹が空いてるわけじゃない。

 別に独り占めしようとか、そういうんじゃない。

 どんな結果が出るか分からないんだ。

 ナームコさんやロローさんに食べさせるわけにもいかない。

 モナカくんや時子さんにお土産で持って帰るわけにもいかない。

 私が、私自身が被験者になるのよ。

 それが一番良い選択だ。

 よし。まずは包装を――


「エイル様、今日はそろそろ切り上げるのでございます」

「ひゃっ! は? え? あ、ひゃい。いっ、今もどりゅのにょ」

「エイル様? 如何なされたのでございますか」

「な、なにがーなさーれーたので、ござますの?」

「エイル様、そこでお待ちくださるのでございます。今ロロー様がお迎えに上がるのでございます」

「いい! いい! 大丈夫! 1人で戻れるから! な、なんにもないから!」

「本当に大丈夫なのでございますの?」

「大丈夫! 大丈夫だから!」


 ビックリしたー。

 時計を見ると、もう夕方の時間だ。

 そんなに経ってたのか。

 とりあえず、これは後でじっくり味わって食べましょう。


「エイル殿!」


 階段の降り口まで戻ってくると、ランタンを連れたロローさんが出迎えてくれた。


「大丈夫でありますか?」

「大丈夫よ。ほら、自分でちゃんと立って歩けるわ」

「段差があるのであります。気をつけるであります」


 分かってるってば。

 そんな手を差し出さなくても平気だから。


「大丈夫よ」

「いえ、遠慮なさらず……」


 くっ、手を引っ込める気は無いようね。

 ここで無視するのも失礼か。

 仕方ないわね。

 まさかこんなところでエスコートされるとは思わなかったわ。


「足下、お気を付けるであります」


 分かってるから!

 わざわざランタンで煌々(こうこう)と足下を照らさなくていいから。

 私、懐中魔灯持ってるんだから。

 もー、私の足下ばっかり照らすから、ロローさんの足下は暗いじゃない。

 貴方こそ転ばないでよね。

 ほら、照らしてあげるから。


「我が輩は大丈夫なのであります」

「いいから、お互い様よ」

「申し訳ないのであります」


 まったく……

 ?

 なんでお互いがお互いの足下を照らしあってるのよっ!

 自分の足下を照らしなさいよっ。

 なんなのよ、この状況。


「仲がよろしいのでございます」

「うっさいわね! あんたもなに赤くなってるのよ!」

「し、失礼したのでありますっ!」


 まったく……

 調子狂うわ。


「戻るわよ!」

「存じたのでございます」

「了解であります」

淑女を護衛するのは紳士の嗜み

エスコートを翻訳したら、護衛になったんだけどw

知らんかったわ

次回は勿論、食べます

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