第30話 上へ
綺麗に梱包されたお宝の山。
ああ、懐かしいビニール梱包。
石油製品なんて、何年振りかしら。
「それは、透明な袋でありますか」
「そうね。ビニールっていうのよ」
「ほー、柔らかいでありますな。どうやって作ったのでありますか?」
この世界には、ガラスのようなものはあってもプラスチックに変わるものは無い。
こういったものは、ここでは重宝されるだろう。
ここでなら恐らく劣化するようなことは、まず無いはずだ。
電気製品は無理でも、こういったものなら使える。
私には無用のものだし、あげてもいいか。
「勇者世界でなきゃ作るのは無理よ」
「そうでありますか」
「私は要らないから、欲しけりゃあげるわ」
「いえ、我が輩は中央に報告するだけなのであります。全ては、中央の財産なのであります」
ま、ロローさんならそう言うと思ったわ。
「私はその中央の財産を既に壊してしまったのですけど。それはよかったのかしら」
「それは……我が輩、なにも見ていなかったのであります」
「それは後々罰せられるんじゃないの?」
「我が輩、使える人が使うことこそ、物は幸せだと思うのであります」
なるほどね。
つまり、私がただ荒らすだけなら容赦しない……ってことかしら。
「ふふっ、気をつけるわ」
となると、梱包も丁寧に開けないと怖いわね。
とはいえ、この辺りの物に用はないわ。
問題は、見て分かるか……ってとこかしら。
当時の物は、写真すら残ってなかったからな。
とりあえず発掘は後回しにして、今は制御室を探そう。
データベースを見られれば、アレの在処が分かるはずだ。
……無いってこと、ないよね。
やっぱり上の階かしら。
「上に行きましょう」
「ここはもういいのでありますか?」
「今はまだね。先にやりたいことがあるのよ」
「了解であります」
また階段に戻って、上に移動する。
エレベーターが使えれば楽なんだけど、非常時は動かないのよね。
……動かないよね?
当然のようにシャッターが下がっているから、また開けてもらう。
……火災が発生したわけでもないのに、なんで降りてるのかしら。
これ、防火シャッターよね。
先ほどと同じ位置に扉があるから、そこから中に入る。
入ったのはいいが、倉庫の中階だ。
壁沿いに手すり付きの通路があるだけで床がなく、下にさっきの倉庫が見える。
ここはハズレね。
上を見ると、同じような手すり付き通路が見える。
3階分が吹き抜けになっているのか。
でも高さ的には5階分はあるんじゃないかな。
そんな大きな物もここには入ってくるのか。
どうやって運搬するんだろう。
ま、もう用はないわ。
次に行きましょう。
階段を上ると、やはりまたシャッターが降りている。
なんなのよ。
この階にも用はないから、次に……
「エイル殿、ここはよろしいのでありますか?」
「ええ。上に行くわよ」
ということで4階にまで来たんだけど……
シャッターがボコボコになって歪んでるわ。
これじゃ開かないんじゃない?
案の定、ガシャガシャいうだけで、開きやしない。
……こじ開けるか。
「ロローさん、このシャッター、こじ開けられない?」
「ここを、でありますか? 我が輩、現状維持を命じられているのであります」
「既に壊してるんだから、今更じゃない?」
「あれは……しゅ、修理は含まれていないのであります!」
言い逃れたわね。
あれは修理って言わないんですけど。
はぁ……
「この先にあるはずの物を修理するために壊すの。大事の前の小事よ」
「了解でありますっ」
もう、最初からやってよね。
壊すといっても防火シャッターだ。
ただでさえ魔力で元素の物を壊すのは、至難の業。
どう壊すのかしら。
「人が通れればいいのでありますな」
「そうね。持ち出すような物は無いはずだから」
データはコピーできるしね。
「了解であります」
すると、壁を壊したときと同じく、単発式魔力銃を構えた。
壁は壊せたみたいだけど、こっちは防火シャッター。
同じようにいくかしら。
お手並み拝見ね。
と思ったのだけど、いとも簡単に撃ち抜いている。
魔法杖の性能が特別良いわけではない。
むしろ私が持っているモノより低いくらいだ。
なのに人が通れるくらいの大きさの穴を、綺麗に撃ち抜いていく。
そして最後に蹴りを入れると、型抜きのようにシャッターが倒れた。
「エイル殿、大きさはこれでよろしいでありますか?」
「ええ、十分よ。1つ聞いてもいいかしら」
「なんでありますか?」
「貴方の射撃は、ナームコさんの石人形に通じなかったの?」
「お恥ずかしながら、殆ど歯が立たなかったのであります」
「そう……」
いえ、落ち込むのは早いわ。
私には、アレがある!
……あるはずよ。
今は他人に切り開いてもらった道を進むけれど、必ず自分で切り開いてみせる。
そして父さんを連れて帰るんだ!
目的地到着! が広すぎて無理w
次回は死者を冒涜します




