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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第3章 貿易センタービル
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第27話 人任せ

 久しぶりにたっぷりと寝た気がする。


「さ! 続きをやるわよっ!」

「了解であります」

「朝から元気でございますわね」

「そういう貴方はどうなの? ちゃんと疲れは取れた?」

「まだ少しダルいのでございます」

「それはいけないわ。ダメよ、ちゃんと休まないと」

「兄様成分が不足しているのでございます。ああ、今なにをしていらっしゃられるのでございましょう」

「ん? モナカくんなら今、朝御飯を食べてるわね。もー、時子さんったら、貴方が居ないことをいいことに――」

「わたくしが居ないことをいいことにでございますか?! 一体シャコはなにをしていやがられるのでございますかっ!」


 相変わらず食いつきがいいわね。


「いや、その。んー、どっちかっていうと、モナカくんね」

「兄様が一体なにをしてしまわれておられるのでございますか?」

「貴方の席に座って――」

「はうっ!」

「えっ? なに、どうしたの?」


 いきなり卒倒しそうになって……本当にちゃんと寝られたのかしら。


「そんなっ。いくらお寂しいとはいえ、わたくしの温もりを少しでもお感じになられたいということなのでございましょう」


 ああ、そういうことね。

 はぁー……頭痛い。


『モナカくん』

『うおっ……な、エ、エイルか?』

『そうよ。あのね……』

「ですがもう既にその席は冷えっ冷えなのでございます。わたくしとしたことが、兄様をそのような境地に追いやってしまうとは、なんたる失態なのでございましょう。ああ、わたくしの温もりを、今すぐお届け致したいのでございます。それがわたくしの生きる意味というものでございます。それ以外に存在意義など無いと言っても過言ではないのでございます。エイル様、今すぐお暇を頂きたく存じるので――」

「却下よ却下。そもそもそういう話じゃないもの」

「それ以外に兄様がわたくしの席にご用があるはずございません」

「時子さんがモナカくんと離れたいから、席を離してるのよ。貴方は関係ないの」

「そんなはずございませんっ!」

「そんなはずございますの。貴方がダラダラ話してるときに聞いたら、そうだってさ」

「〝聞いたら〟でございますの?」

「あ……タ、タイムちゃんがね、聞いたのよ。私じゃないからね」

「タイム様が……でございますの?」

「そうよ。文句ある?」

「いえ、ございません……」


 そんな目で見たって、モナカくんと話させられないからね。

 ……やろうと思えばやれなくもないけど。

 絶対に恨まれるわ。


「とにかく、さっさとやればさっさと帰れるわよ」

「エイル様、なにをグズグズしておられるのでございますかっ。さっさとやるのでございます」


 本当に扱いやすくて助かるわ。


「やるのは貴方なんだけどね」


 私は……実はやることがない。

 燃料をある程度入れたら、発電機が動くか試すんだけど。

 結局点検も修理も、今の私じゃできないのよね。

 歯がゆいわ。


 なので、今日は昨日の続き。

 ナームコさんが燃料を合成。

 ロローさんがそれを運んで給油口から入れる。

 私は……なんとか点検できないものかと見て回ってはいるけど、できることがない。

 かといって戦利品をいじり回すこともできない。

 他の部屋を見て回っても、これといったものが無い。

 というか、電気が来てないから、なにも動かない。

 動いたとしても、今の私に使えるかどうか……

 なので、私はなにをしているかといえば、お茶くみと食事の用意。

 なんで私が?!


「さ、食べてちょうだい」

「ありがとうなのであります」

「エイル様、お手数をおかけして申し訳ございません」

「あんたは素直に〝ありがとう〟って言えないの?」

「そうではございませんが……」

「ま、いいわ。いただきます」

「いただくのであります」

「いただくのでございます」


 食事の用意といっても、干し肉と根菜のスープだから、適当に刻んで煮ただけだ。

 ご飯も炊いたけど、ちょっと焦げてるかも。

 んー、炊飯器を持ってくればよかったかしら。


「午後は試運転に向けて、点検をするわよ」

「存じたのでございます」

「了解であります」


 素直に回ってくれると助かるんだけど。

久しぶりにモナカが出てきました

一言だけど

次回はエイルがタッチパネルを弄り倒します

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