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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第3章 貿易センタービル
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第26話 バカにできない

「もーいや。早く明日になってー」

『エイルさん、分かっててやろうとしてたんじゃないんですか?』

「完璧に忘れてたわ……これじゃモナカくんのこと、バカにできないじゃない」


 魔素と元素は相容れない。

 そんなことはモナカくんで十分分かっていたはずなのに……

 いざお宝を目の前にしてしまうと、頭からスコーンと抜け落ちてしまった。

 いつものようにやろうとしても、そりゃ無理よね。

 だって私は魔素人で、持ち合わせてる工具や薬品から材料に至るまで、全ては魔素だ。

 元素をどうにかできるはずがなかったのよ。

 汚れは水で流せるけど、水で溶かして落とすなんてできない。

 本当に汚れを……いや、埃を流すことくらいしかできない。

 油溶性の汚れも、クリーナーで落とせるはずもない。

 錆だってそうだ。

 錆落としも役に立たない。

 大体錆とか言ってるけど、こっちの世界の錆は酸化じゃないしね。

 木材や石材が錆びるって聞いた時は、耳を疑ったわ。

 まぁ燃えることを酸化というなら、木も酸化するわよ。

 だけど石材が錆びるって……え、酸化玄武岩なんてあるのかしら。

 ハンダの剥離を直そうと、いくら熱を加えてもハンダが溶けない。

 そもそも熱くならない。

 当たり前よね。

 モナカくんがフブキの冷たさを感じられないのと一緒よ。

 私にできることは、精々ネジを回して分解するだけ。

 その肝心のネジも、殆どが固着してて回りゃしない。

 無理に回せばネジ山が崩れてしまう。

 やってられないわ。

 結局、ミスリルとかアダマンタイトとかでないと、扱えないのか。

 そんなもの、ここでは見たことも聞いたこともない。


「おかわりっ!」

「おい、要らないのではなかったのか?」

「うるさいわね。細かいことを気にするナームコさんは、モナカくんにモテないわよ」

「なんだその限定的な言い草はっ」

「モテないわよ」

「ぐっ……少し待っておれ」


 はぁー、もうやけ食いくらいしかすることないじゃない。

 お宝を目の前にして、なにもできないなんて。

 はっ、まさかアレもなんてことは……

 十分考えられるわね。

 こうなると、加工は全てナームコさんに?

 元素の加工は元素で……か。

 父さんの言ってた意味が分かったかも知れない。

 あの頃から魔素の存在を、両素の在り方を知っていたのね。


「ほら」

「ありがとう。これからもよろしくね」

「な、なんだ急に」

「今言っておかないと、忘れそうだからよ」


 とにかく、食べてシャワー浴びて寝るわよ。

魔素の扱いと元素の扱い……難しい

次回は爽やかな朝? です

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