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携帯は魔法杖より便利です 第3部 親子  作者: 武部恵☆美
第3章 貿易センタービル
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第24話 給油してみよう

 えっと、グラインダーは……あった。

 替え刃は……これでいいかな。


「ナームコさん、ダイヤはどのくらいできた?」

「今、でございますか?」

「今必要なの」

「まだ1カラットくらいなのでございます」

「そんな大きいの、要らないわよっ!」


 なに考えてるの?

 〝もう少し〟って言ったじゃない。


「えっ? そうなのでございますか?」

「あーあ、砂粒くらいの物が沢山欲しいのに」

「そんな小さなものでよろしいのでございますか?」

「当たり前よ。なんだと思ってるの!」

「わたくしはてってり、指輪にするものだと思っていたのでございます」

「あー、確かに指輪も悪くないわね」

「でございましょう!」

「でも指輪だとガラスが切りにくいわ」

「……なんだと?」

『ナームコさん』

「ああ、失礼致したのでございます。なんと仰りやがれたのでございますか?」

『ナームコさん……』

「ん? 指輪じゃガラス切りくらいにしか使えないでしょ。使いにくいけど。とにかく、砂粒大にして、この替え刃に固着してちょうだい」

「ぐくくくっ。わ、わたくしが、錬成したダイヤを、い、一体、なっ、なんだと思って、るんだっ! ……なのでございますかっ!」

「え? ダイヤなんて切削材以外のなんの役に立つっていうのよ」


 後はダイヤモンドコーティングくらいかしら。


『ナームコさん、押さえて押さえて。だから言ったじゃないですか』

「こっこのような屈辱! わたくし初めてなのでございます」

「いいから、早くしてちょうだい」

『エイルさん、少しは自分が女だってことを自覚してくださいっ。それは酷すぎますっ』

「? 急にどうしたの。私は女よ」

『そういう意味ではありませんっ!』


 どういう意味よ。

 タイムちゃんが怒るなんて、珍しいわね。

 なにかあったのかしら。


「タイム様。もうよろしいのでございます。あなた様のそのお優しさがあれば、耐えられるのでございます」

『でも!』

「さ、エイル様。替え刃にどのように固着させればよろしいのでございますか?」

「そうね……」


 こういうものは作ったことはないけど、既製品は見たことがある。

 でも魔素の土台に、元素が上手く付くのかしら。


「分かったのでございます。それでは、施術致すのでございます」


 相変わらず、綺麗な魔力の輝きね。

 どれだけ鍛錬すれば、これほどの輝きを手に入れられるのかしら。

 私には無理だ。

 父さんでも、ここまで繊細で濃密な輝きを放っているところを見たことがない。

 それほどまでに、錬金術は神秘的に見える。

 錬金術だから特別なのだろうか。

 使えぬ者に、分かるはずもない。


「さ、できたのでございます」

「ありがとう」


 刃の部分に触れてみる。

 懐かしいザラつきだ。

 軽く撫でてみても、しっかり固着してるように感じられる。

 よし、これなら給油管も切れるでしょ。

 保護メガネを取り出して、装着する。

 忘れたら大変だ。

 ディスクグラインダーに魔力を通すと、軽快にディスクが回転を始める。

 軽く管にディスクを当てると、チリチリチリと鳴きながら火花が飛んだ。

 懐かしい花火の匂い。

 線香花火が恋しくなる匂いね。

 よかった。

 ダイヤモンドカッターはちゃんと機能してるみたい。

 確認は済んだので、本格的にしっかりと刃を当てる。

 高速回転していたディスクが、僅かに回転速度を落とす。

 勢いよく火花が飛び散っていく。

 工房で研磨に使うことはあっても、こんな風に切断することはない。

 そもそも、切断が必要なほど大きな鉱石なんて、父さんが生まれた頃にもなかったらしい。

 石材屋や木材屋くらいだろう。

 ましてや金属なんて……


「綺麗なのであります」


 普通は初めて見る光景だろう。

 鉱石は勿論、石材や木材……いや、この世界のものでは見られない現象だ。

 存分に堪能しなさい。

 うーん、裏側が切りにくいわね。

 ま、切断する必要は無いんだから、見えるところを四角く切り取れば、燃料を入れられるでしょ。

 ダイヤの質がいいのか、ものの数分で穴を開けられた。

 これで入れられない、なんてことはない。


「ロローさん、ここに入れてちょうだい」

「どうやって入れるのでありますか?」


 そっか。

 携行缶なんて使ったことないわよね。

 お手本でも見せますか。

 えーと、注ぎ口のホースはっと……げ!

 経年劣化でボロボロじゃないの。

 となれば、ナームコさんの出番ね。


「はいはい、お貸しするのでございます」


 分かってらっしゃる!

 モナカもこのくらい物わかりがいいといいんだけど。

 そしてサクッと直してしまうのも凄い。

 よし、これで入れられ……あら?


「ホースが短くない?」

「劣化して損失したものは、補填できないのでございます」

「え。なら重油からなんとかならないの?」


 プラスチック製品の原料は、石油だったはずよ。


「わたくしには不可能なのでございます」

「そうなの?」

「はい」


 まぁ、多少短くなっても、入れられなくはないからいいか。


「いい、ロローさん。まずは……」


 実演をして使い方を見せる。

 なんか、路上販売を思い出してしまうわ。

 携行缶の路上販売なんて、見たことないけど。


「……分かった?」

「了解なのであります」

「じゃ、次からお願いね」

「了解であります!」

「じゃあ、チャキチャキやるわよっ!」

「申し訳ございません。今日は力を使いすぎてしまったのでございます」

「あら?」

『エイルさん、もう日が沈んでるよ』

「んー、じゃあ今日はここまで。続きは明日にしましょう」


 仕方ない。

 手に入れた戦利品でもいじってますか。

燃料1つ入れるのも一苦労

次回は右腕の封印が……

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