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第142話 結界の外へ

 船の中に戻って席に着く。

 2人とも、エイルを見ている。


「なんともないのよ」


 それを感じて、エイルが答えた。

 なんともない、か。

 無理してなければいいんだけど。


「鈴ちゃん、シールドの魔力パターンを送るから、それに合わせて」

了解(いょうかい)。データ受信しました。パターン変更を行います」

「なにをするんだ?」

「ただあそこに突っ込んでのよ、弾かれるだけなのよ。強引に行くのよ、結界がまた壊れるのよ」

「つまり壊さないように通るってことか?」

「そういうことなのよ」


 なるほど。

 同じ過ちはしないってことか。


「エイルはなにをしたんだ?」

「………………風船にセロハンテープを貼ったようなものなのよ」


 風船?

 セロハンテープ?


「なんだそれは」

「モナカには難しかったのよ」

「悪かったな」


 仕方ないだろ。

 魔力のことなんて分からないんだから。

 ※科学です


「更新が終わ()ました」

「ありがとう。みんな、行くわよ!」

「おう!」

「「はい」」

「結界外2時の方向に敵影を確認したのでございます」

「なに!」

「時子様、レーダーをご覧になりやがるのでございます」

「えっ……あ、これか。えっと……」

「モニターに映せ」

了解(いょうかい)


 モニターの映像が切り替わる。

 黒い塊がうごめいている。

 原初だ。

 あんなに足が速かったっけ。

 いや、足のようなものが何本も生えてやがる。

 それで走っているんだ。

 しかも足並みが揃ってやがる。

 結構デカいぞ。


「時子様、次からはあなた様がやりやがるのでございます」

「ごめんなさい」

「微速前進」


 お、エイルが船長っぽいことしてるぞ。


「主砲、限界まで出力を絞って発射用意。目標は百足(むかで)の幼体」

了解(いょうかい)

百足(むかで)の幼体?! あれがか?」

「成長するごとに足が増えていくわ」

「魔物……なんだよな」

「当たり前でしょ」

「けど、こんなところで主砲使って大丈夫なのかよ。山1つ消せるんだろ」

「それは最低出力で撃った場合よ。限界は更に下のはずでしょ」

「はあ?! それって安全マージンを無視した操作じゃないのか。やるのは鈴なんだぞ」

「パパ、11260いちまんいっせんにひゃくよくじゅう号は頑張るよ(ゆお)

「鈴、お前の名前は11260号なんかじゃない」

「あ()がとうございます。11260いちまんいっせんにひゃくよくじゅう号は(うえ)しいです」

「鈴……」

「結界を越えます。衝撃に備えてください」

「えーと、距離600……550……」


 時子がカウントダウンを始めた。

 それっぽいことをしているな。

 俺はなにをすれば……

 操縦席だから、操船?!

 フライトシミュレーターとかしたことないぞ。

 下手に動かして鈴ちゃんの邪魔をしないようにした方がいいな。

 船を覆っているシールドが結界に触れると、なんの抵抗もなくヌルリと通り抜けることができた。

 通り抜けた後も元通りになっていて、穴は開いていない。


「300……250……」

「主砲、発射!」

「発射了解(いょうかい)

「うっ」

「「きゃあ!」」

「うわっ!」


 閃光と共に……いや、閃光でなにも見えない。

 左目(スマホのカメラ)の露出補正が効いていてもモニターは真っ白のまま。

 なにが起こったんだ?

 いや、主砲を撃ったのは分かっている。

 その結果がこれなんだろうけど……

 百足(むかで)はどうなった?

 倒せたのか?

 爆音もなにも聞こえない。

 山1つ消し飛ばせる威力なんだから、それなりの音がするものじゃないのか。

 衝撃波だって凄いはずなのに、全く揺れを感じなかった。

 重力制御装置(GCデバイス)のお陰なのか?

 あ、モニターに色が少しずつ戻り始めたぞ。

 視界が徐々に鮮明になっていく。

 原初はどうなった?

 モニターにはなにも映っていない。

 山1つ消せるくらいだからチリすら残らないってことか。

 というか、そもそも地面がない。

 ぽっかり穴が開いている。

 底が見えないほどではないが、かなり深いぞ。

 音も無しにこれかよ。

 ただ陽炎のようにユラユラ揺らいでいるのはなんでだ?


「時子、状況は?」

「ごめんなさい、眩しくて……」


 無理もない。

 俺も右目はまだ回復していないからな。


「鈴、どうなってる」

「対象の消滅を確認。船体への被害無し」

「……回りへの被害は?」

「生命体の反応は元々あ()ません」


 魔物って生命体じゃないの?

 カウント外ってことなのか。


「あーそうでなくてだな。環境への影響? てヤツはどうなんだ」

「周囲約300メート()が消失」

「300?!」

「船外気温813℃まで上昇」

「800……」

「結界への影響は、シー()ドで抑えたためあ()ません」

「そ、そうか」

「汚染物質の発生はあ()ません」

「そうなんだ……」


 ……え、なにそれ。

 それだけのことが起こってて無音? 無衝撃?!

 〝シールドで抑えた〟……音と衝撃波もってことか?

 この至近距離なのに?

 だとしても、だ。


『威力は申し分ないけど、使えないことに変わりはなさそうだな』

『……そのようね』

「偉いぞ、鈴。よく抑えた」

「えへへ。11260いちまんいっせんにひゃくよくじゅう号は頑張()ました」


 山1つと比べたら、よく抑えた方だよ。

 褒めてもいいよな、うん。

 使えないけど。


「それじゃ行こうか、エイル」

「ええ。鈴ちゃん、全速前進!」

了解(いょうかい)。全速前進」


 モニターに映し出されている景色がいきなり走り出した。

 なのに衝撃は一切感じられない。

 凄いな、異世界の船。

 この速度なら魔物に会ってもわざわざ戦う必要も回避行動も要らなさそうだ。

 むしろ体当たりでなぎ倒せそうな勢いすらある。

 これなら安心してノンビリできそうだ。


「間もなく目的地です」

「はやっ!」


 ノンビリしている暇が無かった。


「「え、もう?!」」

「そんなに近かったんですか?」


 ははっ、これじゃ本当に日帰りができそうだ。

 トレイシーさん、夕飯に間に合うかも知れませんよ。

船の移動速度はどうなっているのでしょうか

第3部、終了です

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