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第13話 鬼の居ぬ間にやりたい放題

 日が沈み、夜も更けた頃に漸く中央省に着いた。

 試験のときに来た場所でいいのか不安だけど、他に知らない。

 前回みたいな出迎えは……無いようね。

 となると、城門横のインターフェースに身分証を当てるしかないか。

 当てると、城門が開いた。

 どういうこと?

 誰かが応対に来るのだと思ったんだけど。

 部外者である私の身分証で開いてしまうなんて、セキュリティがなってないわね。

 中に入ると、城門が勝手に閉まった。

 ナームコさんを引き渡すだけなのに、面倒ね。

 とりあえずバイクから降りて、前回と同じく脇の建物に入る。

 また転移門で移動しないといけないのか。

 というか、なんで案内人が居ないのかしら。


「随分慣れてるな」

「1度来たことがあるだけよ」


 まさかまた来ることになるとは、思っていなかったけどね。


「ほう」

「そのときは案内の人が居たんだけど、今日は居ないのよね」


 転移門まで来たのはいいけど、使い方なんて知らないし。

 かといって誰かが来る気配も無いのよね。

 そもそも何処へ行けばいいのか分からないから、使えても意味が無い。

 仕方ないな。

 えーと、これが操作パネルね。

 読み取り機は……ここか。

 侵入用のカードを置いてっと。

 後は手元の端末からチョチョイノチョイっと。

 っはは、相変わらずセキュリティがザルね。

 折角玄関に鍵を掛けたのに、鍵を挿しっぱなしで出掛けてるのと同じだわ。

 トラップも……無し。

 さて、なにが見えるかなー。


「おい、なにをしている」

「ん? ちょっとねー。メインシステムにハッキングでもしようかと思って」


 省員名簿があるわね。

 やっぱり、レイモンドさんは死亡扱いになってる。

 身分証も壊されていたし、連れ去られた後のことは分からないか。

 私たちのことは……

 予想はしてたけど、私のこと、バレてるみたいね。

 ま、いいわ。

 とりあえずバックドアでも仕掛けておきますか。

 これでいつでも侵入できるようになるし。


『エイルさん、転送門の構造図を見つけたよ』

『お、サンキュー』


 さすがタイムちゃん。

 仕事が早いね。

 これが復元できれば、移動が楽になるわ。


『大丈夫なの? 充電が少ないんでしょ』

『外には出られないけど、中を移動したりする分には、そこまで負担は高くないから』

『私は嬉しいけど、モナカくんはいいの?』

『フブキさんも居るし、時子のことはマスター自身が解決しなきゃダメだから』

『そう』


 っと、今はそんな場合じゃないわね。

 ここの見取り図は……これだ。

 えーと、転送できる場所は……ふむ、全ての都市に繋がってるじゃない。

 でも全部建物の中か。

 都市間の移動には、各都役所長の許可が必要なのか。

 ふーん、ま、私には関係ないけど。

 あ、これは……

 これを使えば、出入りが自由になる。

 ふふっ、これが欲しかったのよ。

 もう用はないわ。


「ナームコ、帰るわよ」

「なんだと?!」

「帰るって言ったのよ」

「それは分かっている。どういうことだ。わたくしを引き渡すんじゃなかったのか?」

「本気でそんなことするわけないでしょ。貴方には私の役に立ってもらわなきゃならないんだから」

「お前の役にだと?」


 錬金してもらいたい物が、沢山あるのよ。


「嫌なら、置いていくだけよ」

「くっ、取引という訳か」

「どうする? モナカくんと一緒に居たいなら、悪い話じゃないと思うけど」

「ふむ、そうだな。不本意ではあるが、乗っておくことにしよう」


 よし、これで手駒は揃った。

 後は取りに行くだけね。

 データを改竄(かいざん)して……うん、これで私たちは出入りが自由になった。

 問題は、ナームコさんの身分証か。

 いくらデータを改竄(かいざん)できても、身分証そのものは改竄(かいざん)できないからね。

 仮身分証から本身分証に変更しなきゃならないわ。


「帰る前に、貴方の身分証をどうにかしないとね」

「身分証をか?」

「ええ、取りに行くわよ」

「何処へ?」


 そう。

 何処へ取りに行くのかが問題だ。

 単純に窓口へ行って用件を言い、交換してもらう。

 元々その予定だ。

 それが一番簡単なはず。

 だが、そもそも案内人が居ない以上、無理だろう。

 どうやってここまで来た、と問題になるはずだ。

 となると、その窓口から盗み出すこと。

 本身分証は用意されているだろうから、可能だ。

 それが一番無難だが、窓口には人が居るだろう。

 そもそも窓口は何処だ?

 見取り図にそれらしきものはない。

 そもそも来客は想定されていない作りだ。

 省員も全寮制。

 外部との接触はほぼ考えられない。

 となると、どうして私たちが侵入できたのか……ということだ。

 バカ正直に入ってしまったからな。

 既に侵入は感知されていると思うのだが、何故誰も来ない。

 出張所で保安部に囲まれたときだって、あっという間だった。

 にも拘わらず、そこより一応セキュリティが高いであろうここは、静かなものだ。

 いや、静かすぎる。

 省内のカメラをハックして覗き見をしてみるが、誰かに襲撃された後……とかではないようだ。


「なぁ、仮の身分証を本来の身分証にすれば良いのであろう?」

「ええ、そうよ」

「なら、お前の身分証を見せてみろ」

「私の? いいけど、どうするの?」

「まあ見ていろ。この程度の大きさなら、大したことはなかろう。術式の方は任せたぞ」

「術式?」


 私の身分証をテーブルに置くと、なにやら呪文のようなものを唱え始めた。

 タイムちゃんにも翻訳は出来ない言語のようだ。

 両手の間に魔力の力場を発生させている。

 ふむ、私の身分証をスキャンでもしているのか。


「ほう、結構複雑だな。だが、足りないものは無さそうだ。これを使って仮身分証を再構築するぞ」

「そんなことが出来るの?」

「錬金術師を舐めないでほしいな。とはいえ、魔素の錬金はあまり経験がない」

「大丈夫なの?」

「なあに、失敗しても爆発はしない。だから安心しろ」

「全然安心できないんだけど……」

「っはははは。っと、少し黙ってろ。ちょっと厳しそうだ」


 ちょっとちょっと。

 失敗しないでよね。


「よし、なんとか成功したみたいだ。調べてみてくれ」

「本当に?」


 見た目は……問題なさそうね。

 中身はっと……


「ね……これ、私の身分証と全く同じなんだけど」

「ほう、成功したってことだな」

「大失敗よっ! 中身まで私の身分証をコピーすることないでしょ! あーもう」


 そもそもコピー不可能なはずの身分証をコピーするって、どんな能力よ。

 異世界の力、恐ろしいわ。


「だから前もって言っただろう。術式の方は任せたと」


 あれって中身のことだったの?!


「呆れた。あのね、いくら私でも、元のデータがなければ復元できないの。分かる?」

「ふむ、つまりお前では直せないってことだな」


 ぐっ、言いたいこと言ってくれるわ。


「舐めないでちょうだい。手元になくても、中央のデータバンクにはあるはずよ。貴方に渡される身分証のデータがね」

『エイルさん、はいこれ』

『もう見つけたの?!』

『ん? バックドア仕掛けたときからずっと漁ってたからね』


 本当に仕事が早くて助かるわ。

 このまま連れて帰りたいくらいよ。

 じゃ、このデータを使って上書きしますか。

 ただ、1つ問題があるとすれば、渡されるはずの身分証がここに残ってしまうことね。

 ここからアクセスできれば、初期化してしまえるんだけど。


『あ、あっちの身分証は初期化しておいたから、誤魔化せると思うよ』


 1年前と比べて、成長したなー。

 もう私より早いんじゃない?


『ありがとう』


 よし、これで問題は全て解決。

 あーもう、ギュッて抱き締めたいわっ。

 これで、後は脱出するだけね。

 長居は無用よ。

約束どおり、中央省に行きましたw

次回は狩猟協会です

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