第126話 パパが選んでくれたんだもんっ
とにかく、知っている言葉を総動員してなんとかひねり出さなきゃ!
「パパー」
「えっと、似合ってるよ」
「パパー」
「少し大人っぽいね」
「パパー」
「元気な男の子みたいだね……明るい感じがいいね……文学少女みたいだね……お姫様みたいだね………………」
こんな感じでいいのかなー。
というより、全然選んでいる時間がない。
今度は「あなたも少しは選びなさいよ」とか言われるんだろうか。
ああ、脳が疲れる。
でも鈴ちゃんは元気だな。
時子は時子でテキパキと服を選んでは持ってきて着替えを手伝って脱いだ服をきちんと元に戻してと、めまぐるしく動いている。
俺はひとつも選べてないのになー。
凄くパワフルだ。
「どう、気に入ったのはあった?」
「ん? 鈴、どうなんだ?」
「もう。あなたに聞いてるのよ!」
「俺に聞いてどうするんだよ」
「はぁー」
あれ、頭抱えられちゃったよ。
「鈴、どの服がよかった?」
「えっとねー」
どの服がいいって聞かれてもなー。
どれもこれも可愛いんだよ。
中にはちょっと背伸びしすぎではってのもあったけど。
そうだなー、あえて言うなら……今は冬だし、暖かいものがいいな。
こういう厚手のコートなんかいいよな。
それと……これこれ、毛糸のマフラー。
あとこの鍋掴みみたいな手袋、これが可愛いんだ。
下は……んー、スカートとズボンで悩むな。
暖かさはズボンなんだけど、スカートの方が可愛いよなー。
「選んだの?」
「ん? いや、冬だから暖かい格好が良いかなって」
やっぱりズボンかなー。
けど……んー、悩む。
「ふーん。いいんじゃない。貸して」
「あ、ああ」
なんとなく手に取っただけのものを時子に渡す。
あんなんでいいのかな。
結局ズボンかスカートかは選べなかったから、コートとマフラーと手袋の3つだけだ。
「パパー!」
着替え終わった鈴が姿を見せる。
気のせいか、一番元気よかったような気がする。
どれどれ。
あー、コートが少し大きかったかな。
膝下まであるぞ。
袖や裾のモコモコが暖かそうだ。
手袋は丁度いいみたいだな。
手首に付いている丸いフワフワの玉が揺れて可愛い。
赤い手編み風マフラーで首元も華やかだ。
んー?
膝下が素足だ。
ズボンじゃなくてスカート?
はいてないってことはないだろうけど。
まさかコートの下は……ははっ、まさかまさか。
時子がそんなことするわけないよな。
「パパ?」
「ああ、ごめん。ちょっと見とれちゃったよ」
「本当?!」
「本当だぞ」
「わぁーい! ママー!」
「ふふっ、よかったわね」
「うん!」
んー?
よかったのか?
「少しコートが大きいんじゃないか?」
「なら同じヤツのサイズ違いに変える?」
「鈴、これがいい!」
「いいのか?」
「うん! ふふっ、暖かーい」
「気に入ったみたいね」
「いいのかな。暖かそうなのを選んだだけなんだけど」
「それでいいのよ」
「ふーん」
よく分からんが、喜んでいるならそれでいいか。
こうやって見てみると、いろいろなデザインがあるんだな。
子供服といえど、侮れないってことか。
選んでくれたことが嬉しいんだよね
次回は瞬殺です