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第123話 着替えるだけなのに……

 ナームコに差し入れもしたことだし、出掛けるとしますか。


『時子、玄関を開けてくれ』

『ちょっと待ってて』


 玄関が開いて中に入ると、鈴ちゃんが迎えてくれた。

 どうやら時子の代わりに開けてくれたらしい。


「ありがとう」

「えへへ」


 鈴ちゃんが食堂に入っていく。

 そっちにいるのか。

 後に続いて中に入る。


「どうだった?」

「クッキングシートごと食べようとした」

「あはは」

「それじゃ買い物に行こうか。トレイシーさん、いいですか?」

「ええ、お昼の荷受けも終わりましたし、大丈夫ですよ」

「よし、じゃあ行こうか」

「待って、その格好で行くつもり? 着替えてから行くわよ」

「ああ、そうだな」

「オバアさんも着替えてくるわね」


 トレイシーさんが自室に入っていく。

 俺も部屋に戻って着替えるか。

 時子に部屋の扉を開けてもらって中に入る。

 ……なんで2人とも入ってくるんだ?


「時子?」

「ん?」

「いや、着替えるんだけど」

「分かってるわよ。さっさと着替えてよ」


 えー、2人が居るところで着替えるのかよ。

 エイルの部屋と違って、ウォークインクローゼットなんかないのに。

 なんて思っていると、時子が服を脱ぎ始めた。

 お前も一緒に着替えるの?!

 って、鈴ちゃんまで!

 いや鈴ちゃんはまあ良いとして、俺が居るってのになんなんだ。

 あれだけ覗かないでねって言っていたのに。

 だからというわけじゃないけど、見ちゃいけないのは頭で理解しているけど、驚きで目が離せなかった。

 あのとき、チラリとだけ見えていた姿を堂々と見ることができる。

 いや、だから見ちゃダメなんだって。

 なのに、釘付けになって目が離せない。

 エイルやアニカで飽きるほど見ているにもかかわらず……だ。

 服を脱ぐ衣擦れの音が、心臓の音でかき消されそうだ。


「ちょっと、見てないであなたも着替えなさいよ」

「あ? ああ、ごめん。つい……」


 しまった。

 見惚れていたのがバレてしまった。

 恥ずかしい。

 なのに、ちょっと頬を膨らませている顔が少し赤らんでいるところが可愛いなって思った。


「パパ、お着替えできないの? 鈴が手伝おうか?」

「ほら鈴、前のボタンがズレてるわよ。こっちいらっしゃい」

「はぁい!」


 なんだろう。

 本当の親子みたいじゃないか。


『マスターのエッチ』

『はあ?! タイムだって時子の盗撮ビデオを見せようとしてたじゃないか』

『そうだけど、それとは違うもん』

『いいから、着替えを出してくれ』

『ぷぅー、はい』


 服を脱ごうか……と思ったら、着ている服がそのまま外出着に変わったぞ。

 どういうことだ。


『タイム?』

『これで最後なんだから、もういいかなって』

『もういいかなってなんだよ。最初っからできたってことなのか?』

『……黙秘します』

『肯定とみなすぞ』

『…………黙秘しますっ』


 こいつは……

 やっぱり俺を着せ替え人形にして遊んでいたのか。

 まったく。

 これならわざわざ部屋に移動しなくてもよかった。

 それじゃ後は時子の着替えを……いやいや、見るんじゃなくて待たなきゃ。

 いやそれも違う。


「時子、鈴は俺に任せて着替えなよ」

「そう? じゃお願いね」


 くっ、全く恥ずかしがる様子を見せないじゃないか。

 もしかして、男としてみられていない?

 その辺の石ころと同じ?

 ははは、まさかそんな。

 ……だから下着姿に見蕩れていないで鈴ちゃんの面倒を見ろよ、俺!


「さ、鈴、ちゃんとボタンは閉じられたか?」

「うん!」


 ばっと両手を広げて前ボタンを見せてくる。

 どれどれ。


「ほら、袖のボタンが留まっていないぞ」

「あぅ……」


 落ち込むな落ち込むな。


「どうだ、できるか?」

「うー、頑張る」


 そうやって鈴ちゃんの面倒を見ていた所為で、時子の耳が赤く染まっていることに気づけなかった。

ぱぱっぱぱっじゃっまじゃまじゃま……いや違うか

次回はバスで移動します

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