第122話 差し入れ
お昼ご飯を食べ終え、一息吐いたら買い物に出掛けるか。
っと、その前に。
残っているご飯とおかずを利用しておにぎりを握ろう。
海苔が無いのは残念だ。
川海苔って無いのかな。
「おにぎり握ってるの?」
「ああ、ナームコに持っていってやろうかと思って」
「そう」
「鈴もやるー!」
「そうか? じゃあ――」
「鈴、邪魔しちゃダメよ」
「えー?」
「おいおい、邪魔じゃないぞ」
「バカね。ナームコさんが喜ぶのは誰が握ってくれたおにぎりなの?」
「あー、そういうことか。ごめんな、鈴。これはパパがやらないとダメなんだ」
「んー、分かった!」
なるほどな。
そんなの全然考えてなかった。
別に喜ばせようとか思っていないけど、こんなことで喜んでくれるならそうすればいい。
「はい」
「ん?」
「そのままだとくっついちゃうでしょ。クッキングシートを間に挟んだらいいわ」
「ああなるほど。ありがとう」
「これくらい気にしないで」
さすが気が利くな。
うん、確かにこうすればくっつかない。
クッキングシート、便利だな。
ラップがあればいいんだろうけど、石油製品は存在しないからな。
よし、4つも作れば十分だろ。
後は飲み物を用意して……っと。
時子に玄関を開けてもらい、外に出る。
階段を降りると、トレイシーさんが配達業者に搬入の指示をしていた。
お昼に搬入があるって言ってたっけ。
これがそうなのかな。
いつもなら敷地内に入って搬入しているんだけど、今日は船が止まっているから無理だ。
その船だが、昨日は暗くてよく見えなかったけど壊れているらしい。
水滴を寝かせたような形をしていて、丸い方が船首のようだ。
砲塔のようなものが付いているけど……もしかして戦闘機?
で、その反対側の細くなっている方がエンジンか。
魔導反応炉だっけ。
ジェットエンジンみたいなものかな。
確かに破損しているように見える。
それはそうと、ナームコの姿が見えないぞ。
『ナームコ? 何処だ』
『船の中に居るのでございます』
中か。
扉は開いているから、入れるな。
タラップを上がって中に入る。
姿か見えない。
何処だ。
「おーい、ナームコ!」
「兄様?!」
少し待っていると、右側の扉が開いてナームコがやってきた。
「ああ居た居た。ほら、おにぎり持ってきてやったぞ。後飲み物も。キリがいいときに食え」
「ああ、わたくしのような者のために兄様の手を煩わせてしまうなんて、なんて罪深いのでございましょう」
「気にするな。したいからしただけだ」
「寛大なお心遣い、ありがとうございます。その、もしかして兄様が?」
「はは、あんまり上手く握れてないかもだけど、勘弁してくれよ」
「ううっ」
「ぅわっ、どうした?!」
急に泣き出したぞ。
「兄様の手料理が頂けるなんて、ナームコは幸せ者なのでございます」
「大袈裟だな。手料理っていっても、ご飯を炊いたのも中の具を作ったのも、俺じゃないぞ」
「そんなことは些細な問題なのでございます」
些細なのか。
結構重要だと思うけど。
「これは家宝としておくのでございます」
「するな! 食えよ」
「勿体なくて食べられないのでございます」
腐るから止めて!
「また作ってやるから」
「本当でございますか! また没収などということに」
「しないしない! ほら、ちょっと持ってろ」
おにぎりの載ったお盆をナームコに持たせる。
っていうか、元々ナームコに渡すものなんだから持ってろもなにもないか。
よし、これで手が空いたぞ。
「ん、これで満足か?」
没収は可哀想だからな。
頭くらい撫でてやるか。
って、また泣き出しやがった。
「あんたなー、俺が泣かせたみたいじゃないか」
「まぢがっでいないのでございまず。うわーん!」
大の大人が頭を撫でられたくらいで大泣きするな!
大体初めてじゃないだろうが。
まったく。
「これでいいか。ちゃんと食えよ」
「いまだべるのでございまず。ぐすっ」
「じゃ、俺は仕度したら買い物に行ってくるから」
「あい、いっでらっじゃいまぜ。ひっく」
「ああ、いってあっこら! クッキングシートごと食べるんじゃない!」
まったく。
世話の焼けるヤツだ。
おにぎり、握ったことありますか?
次回はお着替えです




