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第119話 こんな時くらい、いいよね

 台所ではナームコと一緒に時子が仕度をしている。


「フブキちゃん、どうだった?」

「大丈夫なのよ」

「本当に大丈夫なのか?」

「モナカは心配しすぎなのよ」

「だけどさー」

「少しはフブキを信じるのよ。あの子は大丈夫なのよ」


 うーん、心配だけど、飼い主のエイルがそう言うなら、構い過ぎるのもよくないか。

 あ、そういえば鈴ちゃんはどうしたんだ?

 時子が台所に立っているんだから……


「時子、鈴は何処に行ったんだ?」

「え? えーと、大丈夫だから、ご飯ができるまでアニカさんと遊んでてちょうだい」

「そうか? じゃあアニカ、部屋に行こうか」

「うん」


 といっても、特にすることがないんだよな。

 エイルの部屋にはオモチャとかは無い。

 そもそも俺はエイルがなにかで遊んでいるのを見たことがない。

 あの小型端末(パソコン)にゲームが入っているとも思えないし。

 俺も今は遊び道具を出すバッテリー残量(余裕)が無い。

 アニカも精霊を呼び出せない。

 だから最近はボーッと一緒に居るだけが多い。

 元の世界の話も、俺は思い出が無いし、アニカは精霊の話になるからしたくないみたいだし。

 案の定会話も無く、お互い椅子に座っているだけだ。

 エイルはエイルで既にベッドに潜り込んでいる。

 俺が思っている以上に悪いのかな。


「身体は大丈夫なのか?」

「明日までにはなんとかなるのよ」


 エイルは今日出発したかったみたいだけど、結局無理だったんじゃないか?

 なんとかなるんじゃなくて、なんとかなった振りをするんだろうな。

 急ぎたい気持ちは分からなくもないけど。


「本当か? 無理はするなよ。なにかしてほしいことは無いか?」

「無いのよ」

「そうか。遠慮無く言えよ」

「あ……」

「ん?」


 なにかあるのか?


「な、なんでもないのよ」

「いいから言えよ」


 たまにはエイルに甘えられるのも悪くない。

 いつも世話になっているからな。

 プチ恩返しってとこか。


「……じ、じゃあ。モナカくん」

「なんだ?」

「手を握ってほしい……かな」

「え?」


 なんかエイルらしくないことをお願いされたような気がするんだけど。


「なんでもないわ。忘れて」


 それだけ弱っているってことかな。

 心も身体も。

 布団の中に手を入れ、握ってやる。


「これでいいか?」

「あ……う、うん。ありがとう」

「気にするな」


 エイルの手を握っていると、アニカが抱き付いてきた。


「アニカも手を握ってほしいのか?」


 そう聞いてみたが、返事が無い。

 ただ頭をグリグリと擦りつけてくるだけだった。

 素直じゃないのかなんなのか分からないけど、頭でも撫でてやるか。

 頭を抱えるように、優しく撫でてやる。


「パパー」


 扉を開けて鈴が入ってきた。


「こら、入る時はノックをしなさい」

「あ……ごめんなさい」

「いいのよ。モナカは細かいのよ」

「細かくないよっ。鈴、なにかご用かい?」

「えっと、朝ご飯ができたか()呼びに来たの」

「お、そうか。ありがとう。アニカ、行こう。エイルはどうする?」

「私は寝てるわ」

「食べなくていいのか?」

「後でなにか摘まむわ」

「そうか。ゆっくり休め。起こして悪かったな」

「気にしなくていいよ」


 エイルを残し、部屋を出て食堂に向かう。

 ご飯を食べる元気が無くても、フブキのところへ行く元気はあるのか。

 それだけフブキが大切ってことだよな。

 心配だけど、エイルが大丈夫と言う以上、俺もフブキを信じるしかない。

 2人とも、無理はするなよ。

沈黙が支配する部屋ほど恐ろしいものは無い

次回は朝ご飯です

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