表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/142

第11話 ナームコを乗せて、サイドカーが揺れる

「それじゃ母さん、行ってくるのよ」

「はい、気をつけて行ってらっしゃい」

「大丈夫なのよ。今回は外には行かないのよ」


 食卓を片付けて早々、エイルは中央省に行くようだ。


「兄様、しばしの別れなのでございます。その間、これをわたくしだと思って可愛がってやってほしいのでございます」


 と言って、手のひらサイズの人形を渡してきた。

 そういえば、勇者の(ほこら)の通路でも、人形を作っていたっけ。

 んー、随分と不細工な人形だな。

 もしかしてこれ、ナームコ?

 というか、待てよ。


「これ、人形じゃなくて、石人形(ゴーレム)じゃないだろうな」

「そ、そんなわけないではございませんか」

「本当に? 嘘だったら妹の権利を剥奪するぞ」

「申し訳ございませんっ」


 土下座すんの、はやっ。

 そんなに俺の妹でいたいわけ?

 間違いなく他人なんですけど。


「それは兄様の護衛用石人形(ゴーレム)なのでございますっ」

「護衛用?」

「兄様になにかないか監視して、もしなにかがありますれば、この石人形(ゴーレム)がお守りするのでございます」


 なにかねぇ。

 というより……


「監視?」


 そういえばあのとき、石人形(ゴーレム)を通して俺たちを見ていたんだっけ。

 なるほど、監視ねえ。


「ひぃぃ! 決して兄様の日常を覗き見したいなどというのが目的ではないのでございます」

「俺、そんなこと言ってないんだけど」


 なるほど、それが目的なのか。


「ひぃぃぃぃっ! 決して、決して、決っっっして、そのような目的で使ったりは致しませんので、何卒、お納め頂きたく存じるのでございますっっっ」


 うわ、頭が床にめり込むんじゃないかというくらい、(ひたい)をこすりつけているな。

 なにをそんなに必死になっているんだか。


「分かった分かった。ありがたくいたぶ……頂いておくよ」

「ありがとうございます、ありがとうございますっ。ふふっ、これで……」

「これで?」

「な、なんでもないのでございますっ」


 本当になんでもないんだろうな。

 んー、タンスにでもしまっておくかな。


「ま、中央省でも達者で暮らせよ」

「兄様?! どういう意味でございますか?」

「ん? ドナドナされるんだろ」

「ドナドナ……でございますか?」


 あれ、通じないのか。

 言語相互翻訳(マルチリンガル)、仕事しなかったのかな。

 まあいいや。


「エイル、ナームコのこと、よろしくな」

「モナカも、さっさと時子と元に戻るのよ」

「あーそれは難しいな」

「難しくのよ、やるのよ」


 また無茶を言う。

 言われなくても分かっているけれど、一筋縄じゃいかないんだよね。

 問題なのは、原因が分かっていないこと。

 先輩が絡んでいるらしいのは分かるんだけど……

 タイムも教えてくれないしなー。

 「タイムじゃ説明できないんだよ」とか言って、答えてくれないし。

 少しずつ、関係を戻していくしかないか。

 とにかく、悪態だけど会話をしてくれるようになった。

 好きになってもらうにしても、嫌われるにしても、関心を持ってもらわないと始まらない。

 だから今はこれでいい。


「善処する。それより、エイルこそ気をつけるんだぞ」

「なにをなのよ?」

「なにをって、中央省に行くんだぞ。取り入れられるなよ」

「くだらない心配のよ、するんじゃないのよ。自分の心配をするのよ」


 くだらない、か。

 ま、エイルはお父さんの件で、中央を毛嫌いしているから大丈夫か。

 いつものようにバイクで移動するようだが、いつの間にか後ろの荷台が無くなり、サイドカーが取り付けられている。

 鉱石採取に行くわけじゃないから、荷台は必要無いってことか。


「エイル、気をつけてな。ナームコ、達者で暮らせよっ」

「行ってくるのよ」

「兄様?! どういう意味なのでございますか?」

「そういう意味だ」

「兄様ーっ!」


 ナームコの叫び声を置いて、バイクは中央省に向けて出発した。

ドナドナを翻訳するには、どうすればいいのかね

翻訳できても、あの内容を知らなければ意味不明か

次回から主人公が変わります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ