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第103話 よく食べて、よく寝る

「パパ、パパ! 辛い、辛いはどれ?」

「え、辛い? えーと……」

「モナカさん、はい」

「ありがとうございます」


 オオネズミの生姜焼きか。

 これも辛味と言えば辛味か。

 んー、これだと一切れが大きいな。

 少し噛み切って小さくしてやろう。

 うーん、これはどちらかというと匂いがきつい。

 大丈夫かな。


「ほら、あーん」

「あーん、モグモグ! んー!」


 あれ、辛かったか?


「鈴、辛かったらペッてしてもいいんだぞ」

「んーん。モグモグモグモグ……ゴクン。ふあー、凄い臭い! これが辛い?」

「匂いは違うぞ。舌がピリピリするような感じが、辛いだ」

「ピリピリ、辛い……辛い!」

「どうだ鈴、美味しいか?」

「美味しい? んー、美味しい……うーん?」

「あれ、美味しくなかったか?」

「分かんない!」


 え?

 不味いから遠慮して言っている感じじゃない。

 本当に分からないみたいだ。


「分かんないけど、これ好きー!」

「そういうのを美味しいっていうんだぞ」

「んー、分かったー! 美味しい!」

「もっと食べたいか?」

「んー、こっちがいい」


 生姜焼きよりハンバーグの方がお好みらしい。

 小さく切ったものを小皿に乗せてあげる。

 今度はフォークを持たせてやる。


「これもスプーン?」

「それはフォークっていうんだ。先っぽが割れているだろ。それで刺して取るんだ」

「フォーク! えいっ!」


 フォークで小皿のハンバーグを勢いよく刺す。

 当然フォークが小皿に当たってカツンと音を立てる。


「鈴、もっと力を抜いて刺すんだ。じゃないとお皿が割れちゃうだろ」

「あう、ごめんなさい」

「次から気をつけるんだよ」

「はい、気をつけます」


 んー、こういうところは子供っぽくないんだよな。

 素直過ぎるっていうか、言葉が子供らしくないというか。

 無邪気にしていたかと思えば、急にシュンとなる。

 どういう教育を受けてきたんだろう。

 ……あれ、動きが止まっちゃったな。


「どうした、食べないのか?」

「食べてもいいんですか?」


 う、受け答えが硬い……

 やっぱり子供っぽくない。


「いいもなにも、誰も食べちゃダメって言ってないぞ」

「分かりました。食べます。フー、フー、あーん、んー、甘い? 塩っぱい? んー、美味しくない!」


 え?!

 自分で食べたいって言ったのに、美味しくない?

 美味しくないといわれたショックなのか、トレイシーさんが箸を落として固まっている。


「鈴?! 美味しいから食べたいって言ったんじゃないのか?」

「鈴、さっきのよりこっちの方が好き! でもこれは辛くない! だから美味しくない!」


 ん?

 辛くないから美味しくない?

 でもこっちの方が好きな味なんだよな。

 んー、もしかして、美味しいの関連付けが間違っているのかも知れない。


「鈴、好きな味を美味しいっていうんだぞ。辛いから美味しいんじゃないんだ」

「うゆ? んー、じゃあ美味しい! こっちの方が美味しい!」

「こっちじゃなくて、ハンバーグだよ」

「ハンバーグ? これ、ハンバーグ! 鈴、ハンバーグ好き! 美味しい!」


 よかった。

 トレイシーさんも胸をなで下ろしている。

 なんとか名誉は保たれたぞ。

 でも、こんなに1つのことを教えるのが難しいとは思わなかった。

 その後も料理の名前や味とか食べ方を一つ一つ教えながら、普段以上に時間の掛かった食事も終わりを迎えようとしていた。

 時子は早々に食べ終わると、部屋に引き籠もってしまった。

 席を立ってから食卓を出るまでの間、鈴ちゃんは食べるのを止め、ジッと見つめていた。

 その視線に気づいているはずなのに、気にすることもなく出て行った。

 俺と同じで本当のママじゃないはずだ。

 鈴ちゃんも〝ママ?〟という感じで、確証があるわけでもなさそうだ。

 みんなは食べ終え、いつものように俺だけがせっせと食べている。

 鈴もゆっくりだけど、まだ食べている。

 よくそんなに入るなってくらい、食べてないか?

 けど、そろそろ限界らしい。

 お腹が……というより、眠気が……である。

 こっくりこっくりと頭を揺らし、凄く眠そうだ。


「鈴、眠いのか?」

「うゆ……平気だよ、うにゅ、鈴、眠くないよ。ふあ……あぅ」


 いやいや、大きな欠伸をしているじゃないか。

 それにやっぱり食べすぎだよ。


「もう食べるのはそのくらいにして、寝なさい」

「にゅ……ダメなの、うあ……あぅ、残したら、捨てられちゃうの。うゅ……」

「大丈夫だよ。後はパパが全部食べておくから、ね」

「んーん……ふぁ、鈴が……自分で、うゆ…………食べ……うがっ……な……すぅ」


 あ、寝ちゃった。

 力尽きたかー。

食べながらはないけど、寝落ちは時々します

次回からは今後どうするかです

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