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裏路地一騒動

 プレイヤーは死んでもリスポーン地点か最も近いリスポーン地点(中央区にある転移門前等)に復活しますがNPCは死んだらおしまいです


 さてこの差をNPC達はどう見るか

 バロイル武具店

 それは営業日不定期・開店時間不定期の完全に俺の気分によって開けたり開けなかったりする害悪客お断りの俺の店だ


 内装は入り口横に甲冑が一つずつ、端に武器が飾られたガラスケース達を配置しただけのシンプルな内装だ。後々追加予定、しかし予定は予定


 ファリア王国のマップをボーっと眺めて暇潰しをしているとやっと初めてのお客さんが来た。その客は『ウェルバー』と言う重装鎧に大剣を背に着けた男だった

 頭の上に名前が表示されてるってことはプレイヤーだな、NPCなら表示されないし


「いらっしゃいませ。ようこそバロイル武具店へ」


「本当にお店を開いたのか……!女装メイドてぇてぇ……。っといけない、尊さで目的を忘れるところだった。大剣を見せてもらっても?」


「こちらになります、どうぞ」


 なんか不審なことを呟いてたが無視してメイドロールプレイをしながら大剣のリストが乗っているホログラム画面を渡す。と言っても大剣は銀級と金級がそれぞれ四つ、しかも特に素材も加えず作ったから補正も無い。ちなみに金級装備は鍛冶スキルLv4で追加された


「あれ?斬属性ダメージが上がるやつは無いんですか?」


「それは私が気が向いた時にしか作らないので、今はございません」


「そうか……それじゃあ金級の大剣を買おうかな」


 6万Gの金級の大剣お買い上げェ!この店の初の売上だから少しテンション上がるわ


 それからも客は結構来た。大体五十人ぐらいか。途中で商品が無くなったから一旦閉店したけどな。それと漸くリアからメイド服を脱ぐ許可が貰えたが今週末にはリアルの方で着てとせがまれた

 妹よ、そんなに兄を女装させて楽しいですか?楽しいって答えるんだろうなあ、いやまあリアが楽しいなら良いんだけど


「お姉ちゃん、また武具作るの?」


「ん~、いや、なんか気分乗らないしソーガとソロモはダンジョンに突撃しに行ったし……んー、図書館にでも行くか」


 確かリアルと同じく入場無料でルールも大体同じだって公式サイトに書いてたしな


「図書館?今更なんで図書館なんかに行くのよ?」


「ほら、俺とリアって異界の旅人じゃん?だからこの世界の詳しい法律とか知らないから知っときたいなって。異界とここじゃ細かい違いがあるかもしれないし。それと伝承とか英雄譚とか読みてえ」


 メチャクチャどうでもいい細かい理由で犯罪者の烙印押されたくないしその法律を使ってクソ害悪なプレイヤーを牢屋送りにできるかもしれない武器になるしな。つまり六法全書は武器である。現実と同じだな!


 後、民間伝承とか割と興味深いものもあったりするしな。それに案外レアスキルへのヒントがあったりするかもしれないし




 と言うわけでやってきたのは王城がある東区画にある王立図書館。なんと三階建てで年中無休入場無料の施設だ。一階の壁際は本が収納された本棚ばかりだな


「んじゃ各自自由行動とする。重要そうな情報はメモっといて後で共有な。それじゃ解散」


 早速法律関連の棚に向かった。適当な一冊を取り出して備え付けの椅子に座って読み始める。ペラペラっと読んでみたが現実と大差無いな……ただ緊急時以外街中での戦闘系スキル及び魔法の使用は厳禁ってのは知れてよかった

 それじゃ次は伝承だ。ワクワクするな~


 読んでた本を元の場所に戻して次に取り出したるは【原初の三英雄】。内容は遥か昔、未だこの星に国どころか安息の地すら無かった原初の時代、突出した力を持つ者が人間族・鉱人族・獣人族からそれぞれ一人現れファリア王国・ブローイン王国・サファル王国を作るまでの物語だ

 ただ後書き的な脚注として物語の中で三英雄と同格の存在が居たことが遠回しに示唆されてるがその証拠は見つかってないらしい


「三英雄と同格の存在ねえ……隠しボス的な感じでどっかにあるのかね」


 また読む本を変えた。これの題名は【スライムより上の知性が有れば分かる歴史書】だ。スライムに対するディスが酷すぎる


 ただ内容は結構分かりやすく確かにスライムより上の知性が有れば分かるだろう。スライムは泣いていいよ、全身液体だからどう泣くのか知らんけど


 さて次の本を読むかと思ったが何となく時刻を確認してみるともう昼に差し掛かる頃だ。そろそろログアウトして昼飯食おうか


 リアにメッセを送ってフローティアを探しだして合流し、リアとも合流した。中々面白かったしまた来ようかな




「なあリア、バックミラーの点検はしたか?」


「勿論してるよ」


「???」


 リアも気付いてるか。図書館から自宅への帰り道の途中で俺達は誰かに付けられていた。バカ正直に振り返ったり直球でやり取りをすると追跡者に感付かれる可能性があるから簡単な暗号でやり取りをしいつも通りの事をすることにした


 裏路地に差し掛かったらフローティアを抱えてダッシュそして直ぐ様連続壁キックで屋根の上へ。下を覗いてみれば追跡者が一瞬で消えた俺達を探すようにフードで隠れた頭を振っていた。そろそろ降りるか


「俺達に何か用か?追跡者さん」


 そこまで高くない屋根からコツっと靴音を鳴らして軽やかに追跡者の背後に着地してフローティアを下ろす


「ちょ、ちょっと!いきなりあんな事しないでよ!ビックリしたじゃない!」


 あーそんなビックリすることか?ディザクロで追跡者や野次馬を撒くときによく使ってる手なんだが……フローティアが居るときは使わないようにするか


「はい逃げちゃダメだよ~」


 逃げようとした追跡者の正面にリアが降り立つ。前門のリア後門の俺とフローティアの挟み撃ちだ

 ハハハハハ!!ディザクロプレイヤーの俺達を追跡したのが運の尽きだ!なんせディザクロでは追跡者はシメて装備を強奪するのが作法だからなァ!え?ここはクリオンだって?知りませんね

 にしてもこいつ小さいな?身長低めにアバター作ったのか?


 まあいい。硬直してる追跡者に素早く近付きフードを脱がす


「ひっ!?」


 フードの下から出てきたのは今にも泣きそうな顔をした綺麗な白金色の髪の少女だった


「い、いや……殺さないで……!」


 うーんどうしようこれ。暗殺目的では無いっぽいな。わざと無防備に硬直しているように見せかけているが襲ってくる気配無いし。ネーム表示が無いことからNPCみたいだが


「とりあえず、なんで俺達を付けてたんだ?」


「えっと、異界の旅人を見たかったのと、貴女が綺麗、だったから……」


 そんな理由でNPCから付けられるとはな。嬉し恥ずかしって感じだな。いやディザクロだと私怨で付けられることが結構あったからなあ。その度にディザクロ流作法でおもてなししたけど


「暗殺しに来たとかそんな訳でも無さそうだし、まあお咎め無しって事で。お嬢さん、お家はどこかな?」


「えっと、あそこ」


 少女が指差した先には王城が……いやさすがに王城に住んでるとか無いだろ、あーでも住み込みで働いてる誰かの娘って可能性があるのか


「そっかそっか、それじゃ行こうか」


 少女の手を引いて王城を目指して歩き始めた




 ……の筈だったのだが


「次あそこに行きたい!」


「待ってよアリシティアちゃんー!お姉ちゃんとフローティアちゃんも早く!見失っちゃうよー!」


 何故か西区の露店街に居た。あれはそう、確か少女改めアリシティアが帰る前に露店街に行きたいって言ったのが原因だったな。数々の露店を巡っては多かれ少なかれ自前のお金で買っていき自分のアイテムボックスに詰めている

 この買い歩きはいつまで続くのか……そろそろ昼飯食べたいんだけどな~、でもあんなワクワクしてるアリシティアの手前言えないし。……ん?


「あれ?おい、アリシティアは?」


「え?あれ?居ない……?」


 ……誘拐!?まだそこまで遠くには行ってないと思いたい


「リアとフローティアは露店街の表を!俺は裏路地を探してくる!」


 誘拐犯の心理的に人が大勢いる表は使わないと思うが念のため二人に探させて俺は屋根上から裏路地を探している。あークソ!全然見つからねえ!!!この騒動が終わったら索敵系スキルを取得してやる……!


 そうして屋根を飛び回りながら裏路地を見下ろしていると遂に下手人とそいつに抱えられているアリシティアを見つけた。それと同時に屋根上から飛び降り誘拐犯の進路上に立ち塞がる


「ほう、それなりに離れたと思ったが」


「ハッ、誘拐犯の捜索はそれなりに慣れてるもんでね」


 報酬の良いクエストで繰り返しやったからな。とは言えそのクエストの誘拐犯と目の前の覇気を放つおっさんは比べ物にならないけど


「とりあえずアリシティアを返してもらおうか。お前をボコるのはその後だ」


「ハッハッハ!この儂を倒すとほざくか!久々に意気の良い小娘に巡り会えたものだ。よかろう!!」


 誘拐犯にしては丁寧にアリシティアを下ろした後背中に背負う飾りっ気のない無骨な大剣を抜き構えながら獰猛な笑みを浮かべる。それに対し俺も剣を抜く


 緊迫した空気が流れる。薄暗い裏路地が一瞬で戦場に塗り変わる

 初手を取ろうと足に力を込めた瞬間思わぬ横槍が入ってきて危うく転びかけた


「ま、待って二人とも!ウルドロスもバロイルも武器を納めて!」


 なんとアリシティアが間に入って体を張って止めに来たのだ


「え。あれ、そいつ誘拐犯じゃ……?」


 今のは戦う流れだったろうに。少し納得いかないがまあいいかとおっさんと俺は武器を納めた


「この人はウルドロス・グレイ。私の護衛騎士なの」


 護衛……騎士?


「アリシティア様のご紹介の通り、儂は現国王ヴィスター・ファリア様より妹であるアリシティア様の護衛の命を賜ったウルドロス・グレイである」


 ん?現国王の妹がアリシティアってことは……?王女!!!?


「あー、はいはい、なるほどなるほど……。とりあえずこれまでの非礼に対する最大限の謝罪として直立土下座した方がいいか?いやよろしいですか?」


 国の一つや二つ滅ぼせる戦力を持ってたディザクロの俺ならともかく今の俺はLv的にも装備的にも雑魚でしかない。そんな俺が王国に目をつけられたら今後のプレイに支障をきたす恐れがある。それだけは回避したい!牢屋暮らしは嫌じゃー!せめてこの国を滅ぼせるぐらいの力を持つまで待って?


「そんなことしなくていいわよ!?そもそもウルドロスが正体を明かさずに戦おうとしたのがいけないんだから」


「ハッハッハ、何をおっしゃいますかアリシティア様。アリシティア様が王城を抜け出さなければ儂は街にまで探しには来ず、この小娘と剣を交えかける事になることも無かったと思いますぞ!」


 アリシティアが図星を突かれたような苦しげな声を上げる


「と、とにかくね!城に帰るまでの護衛はウルドロスにやってもらうからバロイル達はもう帰っていいわよ。それと後でウルドロスに報酬を届けさせるから。確か北区の生産職ギルド前だったわよね」


「ああ、そうだが……良いのか?」


「私の正体を知らなかったとは言え護衛してくれたんだから報酬を支払うのは当然でしょ?」


 まあ貰えるもんは貰っとくか。それとリアに解決したってメッセ送らないとな


 そうしてアリシティアとウルドロスは去っていった。裏路地から表に出ればリアとフローティアが手を振って駆け寄ってきた


「無事合流できたことだし帰って昼飯食うか!」


「そうね。あの娘に振り回されて昼食を食べてなかったわね」


「それじゃあ早く行こう!お姉ちゃんの手料理食べたくって待ちきれないよ~!」




 フローティアと昼飯食って更に現実でも食ってログイン。VRだから満腹感は有っても実際食べてる訳じゃないしログアウトしたらその満腹感も消えるの良いよな。ダイエットにオススメ!


「お、ソーガからメッセが来てる。『ディスティア大平原の西にあるカラド村で防衛クエストが発生した。出来る限り準備して来てくれ』か」


「行ったら良いんじゃない?バロイル達の実力なら余裕でしょ」


「私ポーションとかトラップに使えそうなの買ってくるね!」


 仕方ない、行ってやるか

 弟か妹がいる男の娘は母性を持ってる派

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