幕間 竜姫と研究者
前回の投稿から約三ヶ月経ってるってマジ?時間の流れって早いっすね。数日かけて長考したりデュエマしたりスパロボ30やってたらメッチャ遅くなりました……
「……よし、理論上はこれでテレポートが発動するはずだ」
古今東西の様々な研究資料やレポート、魔道具のパーツが散らばる机に試作品の完成品を置く
この試作品で46番目か、今度こそ成功すると良いが。最近は部屋に籠りっぱなしだからな、そろそろ親父達に顔見せないとまた泣かれるかな。特に妹のセイラは一日中抱きつかれたまま過ごすハメになるからなあ……セイラがまだ小さい頃は良かったが今はもう15になる。当然胸も成長してるわけで、しかもそれを押し付けてくるんだから本能とも言うべきそれを理性で抑えるのに必死で一睡もできなくなる
っと、こんな事を考えている場合じゃ無い。そろそろこの魔道具のテストをしよう。このテストが無事成功すれば長年の夢が叶う。そう、前代未聞の完全な個人携行用テレポート魔道具だ
そもそもテレポート自体が数ヶ月程前に世界神様が起動なされた各王国の中央にある転移門とダンジョンとフィールドの脱出用魔方陣しか無いのだ。しかも転移門は異界の旅人が居なければ転移できないと言う
そんな中、この魔道具が完成すれば俺の名声は上がる筈だ。そうすれば権力やら何やらも整うだろうしもう一つの夢、神界への転移の研究に必要な設備や金も貯まるだろう
「さて、起動するか」
行き先は自室の前の廊下。魔道具に魔力を込め起動!
「お兄様!新しい魔道具が完成したわ!!」
「うおわっ!?──あ」
◆
「うっ、眩し!……あれ、お兄様?」
光が収まった室内は居るはずの人物が消え、静けさに満たされた。机の上の資料とパーツと湯気を立てるホットココア、魔道具の研究資料等が入れられた本棚やホコリの被っていないベッド
直前までこの部屋の主が居た形跡は幾つもあるがその姿は何処にも見当たらない
「お兄、様?何処かに隠れてるのよね、お兄様?……いや、いやあ!あぁ、あああああああ!!!」
この日、ヴェルテクス家長男リュディア・ヴェルテクスが行方不明となった
◆
やべ、魔力込めすぎた。突然やってくるもんだからビックリしてしまったな。反省は後にして現状確認だ。魔道具は……無残にも壊れてしまったか。しかしテレポートは成功した。そう!成功したのだ!!
「ふはっ、ははははは!!俺の理論は正しかったんだ!長年の夢が叶う瞬間とはこうもスカッとするものなんだなあ!!!」
「うるさいぞ貴様」
「え?」
え、誰。声がした後ろ側に振り返ってみたら機嫌が悪そうな美女が居た。長く紅い髪に凛々しい真紅の瞳、そして主張がすぎるでかい胸。しかし一番目を引いたのは彼女から生えている翼と角だ。確か竜人だったか、特徴的には当て嵌まるがとっくの昔に滅びたと言われてた筈。いやしかし美しいな
「聞いているのか貴様、嬲り殺すぞ」
「あ、ああ、すまない、見惚れていた。えっと、自己紹介からかな?」
「見惚れていた?変な奴だな貴様。この火竜の女王種たる私の前でそのような余裕を見せるなど」
「いや余裕とか無いぞ。今君に襲われたら直ぐに殺されるだろうさ」
護身用魔道具とか持ってないし。魔法も使えるし体も鍛えてはいるが竜人相手には無意味だろう
◆
眠っていたらやけにデカい笑い声に叩き起こされた。誰だ私の眠りを妨げたのは
どうやら私の眠りを妨げたのはこの男のようだ。しかし妙な事にこのダンキテンド火山の最奥たるこの私の領域に来るにはあまりにもこの男の装備は貧弱すぎる。まあどうでもいい、結局殺すのだから
……いや、飼ってみるのも一興か?最近は起きて食べ時折やってくる馬鹿な輩を処し寝るの繰り返しだからな。飼うのに飽きたら殺せば良い。よし、飼おう
その男、リュディアを飼ってからの日々は中々に楽しかった。作ってくれる飯は美味いし私の知らない話を聞かせてくれるし戦闘も適度にできる。しかも最近はリュディアを抱きながら寝ると何故かとても心地が良い
「よし!出来た!」
「ほう、今度はどんな魔道具を作ったんだ?」
「リアと初めて合った時に持ってた魔道具だよ。テレポートの魔道具。これで実家に帰れるはずだ」
………?かえ、る?何を言っている、お前の家はここだろう?お前がここから、私のそばから、居なくなる?今更、今更私のそばから消えるだと?お前が消えたら私は独りになってしまう。もし、もしもそうなってしまったら
途端に体から力が抜けて凍てついていく錯覚が起きる。嫌だ、そんなこと絶対に嫌だ。どこにも行かせるものか。お前が去ってしまったらお前が来る前なら耐えれた孤独も、今の私では耐えきれない。寒くて辛くて寂しくてお前を求めて狂うだろう。なのに、なのに!私の元から去ろうなどと
そんなの、許せるわけないだろう
「ど、どうしたリア、そんな怖い顔して。あ、おい!その魔道具は他の魔道具みたいに雑に扱うな、って待って!待って!!そんなに力込めたら壊れああああああああ!!!?おまおまお前!それ直すの「【スタン】」」
気絶したリュディアの体を抱え上げた。今更お前を離したりなんかしてやるものか。お前の全てを私の物にしてやる。代わりに私の全てをお前にくれてやる。だからこの温もりも、お前の未来も全て貰うぞ
お前だけは誰にも渡すものか。ふふっ、ははははは
◆
目が覚めると目の前に覆い被さっているリアの顔があった
「やっと起きたか、リュディア」
「あ、ああ、おはよう、リア。ところでなんで俺縛られてんの?」
そう、今現在の俺の四肢には枷が嵌められ、固そうな鎖でそれぞれベッドの四隅に繋がれている
「お前が私のそばから去ろうとしたからだろう、バカ者め。その鎖はお仕置きの意味も込めてあるがお前に無駄な抵抗をさせないために付けた」
何故かリアの目から光が消えて妖艶に微笑む
「リュディア、私はお前を愛している。だから今からお前の全てを貰うぞ、私の全てと交換でな。それからもうお前をどこにも行かせはしないからな。ここでずっと私と一緒に暮らすんだ、これから産まれる子供達と一緒にな」
「待て待て待て脱ぐな!!このっ!は?魔法が使えない!?」
「その鎖は魔力の動きを阻害する魔力封じの鎖だ。今のお前にピッタリだろう?ふふ、さて、準備完了だ。私も初めてだが、まあ何とかなるだろう」
リアと夫婦になってから二ヶ月ぐらいか、大体それぐらい経った。今は家の中なら歩き回れる自由はあるが、やっぱり外に出たいんだよな。軟禁状態だし。親父達に結婚の報告したいし
「なあリア、そろそろ外に出してくれないか。親父達にも紹介したいしさ」
「嫌だ。外に出たらお前が逃げるかもしれないからな。そうなったら私は辺り一帯を破壊してでもお前を捕まえてより厳重に監禁するぞ」
リアの重い愛がのしかかる。こうも愛してくれるのは今となっては嬉しく思うがそれはそれとして日の光を浴びたい
「でも最近はずっとこの家に居るからいい加減外に出たいんだよ。それに今更逃げたりするかよ。お前の愛情がメチャクチャ重いのは分かってるし、それももう受け入れてる。ただそれはそれとして家族が心配なんだよ、傍から見れば突如失踪した様に見えてるだろうしな」
「家族が心配、か……仕方ない、一度だけお前の家族に会いに行くぞ。そう言えば人間族の風習に互いの両親に挨拶に行くとか言う変な風習があったな?それも兼ねるとしよう」
外出中は常にそばにいること等の制限が課されたものの、俺はやっと外に出ることが出来た
こうして俺達はダンキテンド火山から故郷のエリュシデトラにある自宅に向かうため小規模な旅を始めた
この時の俺は知らなかった。俺がリアと一緒に帰ることでまさかあんな事になるなんて
この幕間は本編のエリュシデトラ大戦争編に続くからそっちも是非読んでくれよな!(リアル時間の何年先の話になるんですかね)
拙僧、人外娘が人間を飼って結果絆される展開すこすこ侍、癖によって描写致す。……描写、できましたか?如何せん過程を詳しく書こうとしたら長くなりそうだし、かと言って抜いて書こうとしたら短すぎるしこれが中々、難しいねんな




