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大地を揺らす大剣、空に放つ

【幽霊】大きく別けて二通りある。その地にこびりついた負の感情がモンスターになったタイプと、死後もその地に残り続けた誰かの想いがその魂と共に具現化したタイプ。前者は襲ってくるが後者は襲ってこないしNPC扱い


【カルマ値】行動によって上下する隠しステータス。この値が高ければ高いほど悪となり低ければ低いほど善となる。敵意を持って待ち伏せしてる奴をコロコロしてもカルマ値は上昇しないので安心。要は正当防衛ですからね、先制気味ですけど


【プレイヤーアイコン】プレイヤーに視線を合わせるとそのプレイヤーの上に出現する角ばった三角錐。基本薄緑色だが犯罪者等は黄色、殺人犯は赤色に変わり更にHPバーの上にドクロマークが追加される

 ちなみにプレイヤーネームとドクロマークはプレイヤーアイコンに紐付けされている


 最近独占欲マシマシヤンデレドラゴン娘の妄想が止まらないのでヤバイです。どっかの部屋のベッドに手錠か単純な腕力で拘束されて覆い被さられて更に翼でも覆われるシチュが最高ですね。二人だけの閉じた世界って所が刺さりポイントです

「いやー、サービス開始記念イベント、今のところ好評な様で良かったっすね、長瑠(ながる)先輩」


「そうだな。イベントキャラクターと言う名目で俺達もVRとは言え久々に海を楽しめたしな」


 ここは現実側の運営室。そこで二人の男が談笑している


「確か次のイベントでは新要素導入するんでしたよね。開発段階で提案されてたあの要素は確定として、装備の汚れとかも実装予定なんでしょ?不具合修正担当の俺とグラフィック担当の松山君の苦労が溜まりそうっすねえ」


「いや、装備の汚れは実装しない事になったぞ。要望も特に無いし今のところ需要も無いからな」


「はー、そうなんすねえ」


『大変です!準ワールドエネミー級モンスター【破天竜ヘヴン・ディカロス】の封印が破壊されました!!』


「「はあ??」」


 ゲーム内運営室から告げられた報告は二人の思考を少しの間フリーズさせるのには充分すぎた


『主犯は強欲魔王!目的はおそらくいつものだと!それとヘヴンディカロスは強欲魔王を撃退後、真っ直ぐにクエイン大陸に向かってます!』


「あ、ああ、うん、ヘヴンディカロスか。あいつの経緯を考えればクエイン大陸に向かうのはまあ当然だな。はぁ、到達予想時間は?」


『ユラちゃんと他の神格からの妨害込みでおよそ三日後です!』


「分かった、この事態はレイドイベントとして処理する。急いでイベントページの制作とレイドシステムの最終チェックをしてくれ!」


『了解!』


「いやー、大変な事態になったっすねえ。現在のプレイヤーの最大レベルはディスティアのLv74でしたよね。対しヘヴンディカロスは封印の影響とユラちゃん達からの妨害込みでも多分Lv160前後。英雄級NPCに参戦するよう神託出します?」


「その必要は無い。今回はレイドバトルだしそれにあのディザクロランカーが五人、それも一位と二位が居るし倒せるだろう」


「あー、剣王と悪逆っすね。確かにあの二人なら倒しかねないっす」


「もし倒せなかったら最悪の場合あの最終兵器を使うことになるから、不安要素を減らすためにも是非とも勝ってほしいものだな」



 現実の方でソーガこと健生を女装させて街を歩かせた翌日。俺達は観光を兼ねてサファル王国を歩き巡っていた


 サファル王国は主に獣人と言うファンタジー物でよくある動物の特徴を持った人種で構成された国だ。んでもってこの国の主な産業は農業と畜産業だな。この国が主に米を栽培してるのでプレイヤー達からは大変感謝されている。実際ゲーム内でも米を食えるのは有難い。ありがてえありがてえ


「ねえバロイル、次フィールドに行きたいのだけど良いかしら?」


「フィールド?良いぜ行こうか。ソーガ達はどうする?」


「俺は食い歩きしてくる。さっきから色々美味そうなものばかりで耐えきれなくなってきてんだよな」


「じゃあ私もソーガ君と一緒に食い歩きしてくるね」


「私も行く」


「私は勿論お姉ちゃんと一緒にフィールドに行きますね」


 ソーガとソロモとアルベルスは食い歩き、フローティアと俺とリアはフィールドか


「んじゃ解散!分かってると思うが俺達の分も買うのを忘れるなよー!」


 こうして俺達はサファル王国から【リュリュイエ草原】に足を運んだ


「そういやなんで急にフィールドに来たがったんだ?今更ここら辺のモンスター倒したって経験値はあんま良くねえだろうし」


「うっ。その……引かないでよ?血が飲みたいの。新鮮なやつ。ほら、私って吸血鬼だから一ヶ月の間に一滴以上は血を飲まないと暴走しちゃうから」


 ?……あー、フローティアって吸血鬼だったな。太陽光に当たっても平気そうだし今は羽根を仕舞ってるからすっかり忘れてた


「んじゃあ俺の血でも吸ってみるか?」


 プレイヤーだから死んでもリスポーンするし何かヤバい状態異常になったらリアが首をスパンっと斬ってくれるだろうしな


「え?いいの?その、他種族から見たらかなり気持ち悪い行為だと思うんだけど……」


「今更んな事で気持ち悪いだなんて言わないし思わねーっての」


「じゃ、じゃあ、首元出して。そこが一番吸いやすいから」


 そう言われて大人しくしゃがんで頭を右に傾けた。今更ながら注射を受ける前のような緊張感が沸いてきたな


「やっぱり、すごく美味しそうな良い肌ね。いただきます」


 ん。まんま注射打たれた時のような痛みだな。そして多分血であろう何かが吸い出されていくのを感じ……


「おいフローティア、そろそろ良いんじゃないか?おい?ちょっと!?フローティアさん!?あ待ってHPが減ってるんだけど!!?」


 急いでポーションを飲んだがフローティアが吸い続けてるため回復したそばから減っていく


「リア!」


「分かった!ていっ!」


「あいたぁっ!?」


 リアが放ったチョップによる衝撃で牙が外れた。良かった~、吸血されて死ぬところだったわ


「うぅ~、痛い~。あ、ごめんなさいバロイル!貴方の血が美味しすぎてつい、吸いすぎちゃったわ」


 そんなに俺の血って美味いのか……?


「何て言えばいいのかしら。極上の美酒?うーん、言葉にするのは難しいけどとにかく最高に美味し……」


「おいどうしたフローティア。一気に顔が赤くなったが、酔ったか?」


「よ、酔ってないわよ!はあ、まさか異界の旅人か相手なんて……。よし!ねえバロイル、今後も定期的に吸血しても……良いかしら?」


「ああ、別に良いけど吸いすぎるなよ?HPが減るみたいだから」


「分かってるわよ、いくら異界の旅人だからって吸血死させるのは申し訳ないもの」


 気まずそうに目を逸らす。まあ別にHP全部吸われたってリスポーン地点で蘇るだけだから良いんだけどな。あ、でも家の倉庫に金を置かせてからにしてほしい。Lv25からデスペナで所持金から一万Gが引かれるみたいだからな




 それから折角フィールドに出たんだしということでリュリュイエ草原に出てくるモンスター【オイルボア】を何体か狩ってソーガ達と合流した

 ちなみにオイルボアからのドロップ品【万能オイル】は食用オイルや住人達が使う炉等の火力を上げるのにも使われ木に撒いて火を起こしやすくするのにも使われるらしい。わけがわからない


 んでもって俺は今、自宅のソファーに座って歯車の形に加工したレッサーグリネタル鉱石を適当な素材で動きを阻害しないように挟んだテスト機を作って動かしていた

 結果はご覧の通りグルグル回ってるし速度も自由に操れる。MPが二分につき5減ってるけど

 まあそんな些細な事はどうでもいい。MPポーション飲めば解決することだ。それよりもこの歯車が回るってことのほうが重大だ。これが回るってことはこれに関するギミックが作れるってわけで。鍛冶設計図を起動して形を作っていってっと


「はい、チェーンソーのかんせ~い」


 一人言が静かな空間に反響してやけに空しく響く。だってソーガとソロモは三日後に行われるレイドイベントに向けてダンジョンアタックしてるしリアとフローティアもソーガ達とは別のダンジョンに行ってるしアルベルスはどっかのフィールドでモンスター狩りしてるし俺はこれを作るために戻ってきたし


「俺も試し切りがてらダンジョンに行くかな」


 ギュインギュインと唸りはしないが高速で回るこの刃をモンスターの体に食い込ませてその命を切り刻みたい

 場所は……推奨Lv45の【クランゼ大樹海】だったか、サファル王国から東にあるダンジョン。そこにするか


 と言うわけで大樹海にやってきた。ダンジョン内は木々に覆われ薄暗く、うっすらと霧が出ていて視界不良だ。だがこの手のダンジョンは大抵……


「後ろか上から不意討ちが来るんだよな」


 【スプラッタチェーンソー】で尻尾が剣みたいになってる猿モンスター【ソードエイプ】の尻尾を受け止めると同時に魔力を流し内部に仕掛けてある歯車を回す


「ギギャァァァァァ!?」


 たった一秒で高速で回り始めた刃がソードエイプの尻尾を切断した。そして痛みに悶え転げ回るソードエイプの左胸を突き刺し刃が肉を抉り、ポリゴンに還す

 うん、これ魔石がある場所に当たると魔石をかなり削っちまうみたいだな。手に入れた魔石がランクEになってるし。このチェーンソーは部位破壊用に使うか


 そのまま森を進んでモンスターを倒しながら途中宝箱から性能としては微妙な大剣を手に入れたりHP・MPポーションの詰め合わせとかを入手しながら大分奥まで来たが……


「もう少し推奨Lvの高いところに行けば良かったかなあ」


 今の俺のLvは43だからここを選んだんだが別の場所にすれば良かったなあ。この扉の先にいるボスを倒したらもう少し上のダンジョンに行ってみるかね


「【オーバーモード・ギガントゴーレムLv55】……固そうだな」


 ダンジョンのド真ん中に聳え立つ巨木の根本にある大扉を開けると壁全てに無数に咲いている明るく光る謎の花が照らす内部の中央に赤く脈打つラインが走る樹で構成された体に刀身全てが紅い木刀を握るデカいゴーレムが無機質な目で俺を見下ろしていた

 弱点は額にくっついてる結晶か?あからさますぎて罠の可能性もあるがまあ良いか。罠だったとしても突破すりゃいいし


 そして音も無く巨人が木刀を掲げ振り下ろす。それをスレスレで避けると同時にチェーンソーで切りつけてみたが見事に弾かれ刃が欠けた。チェーンソーーーー!!!!


「許さねえ……ぜってー許さねえぞテメェ!!クイックチェンジ!クイックチェンジ!【トライ・ショット】!あ」


 やっべ大剣番えて弓術Lv3のスキル射っちゃったけど……ファンブルするかと思ったが、いやこれファンブルか?MPは本来のトライ・ショット分減ってるくせに射出されたのは一本だし。仕様通り三本射出されるなら時限爆弾埋め込んだ剣でも作って射つのにな

 それはそれとして、また振り下ろされた木刀を避けてゴーレムの腕に突き刺さった大剣を中継地点に肩までジャンプ


「っと、うわ!?この!揺らすんじゃねえ!」


 肩に乗った途端に激しく揺らし始め、不意にバランスを崩してしまいそのまま地面に──


「落ちるわけねえっての!!」


 腰に付けたホルダーから素早く短剣を取り出し鋼鉄糸に絡めることで簡易的なピックにしゴーレムの腕に突き刺し巻き取る事で落下死は免れた

 でもゴーレムが腕を揺らすの止めないからなあ。こんな揺れる腕にいつまでも居られるか!俺は降りるぞ!3!2!1!ファイッ!


 体制を整えゴーレムの腕に足を突き立て蹴っ飛ばして広大なる空中へ飛び出す。視界が逆転して天地も逆転してゴーレムの顔が遥か下に見える


 とりあえず着地に関しては簡易ピックを壁に突き刺して落下速度を殺すので問題無い。なので落下してる間にとある考えを元に実証をしてみようと思う。本当に馬鹿げた頭のイカれた考えだが、成功すればとてつもない切り札になりうる考えだ


「【リロード】……!」


 弓術Lv3で取得するスキルの一つ、リロード。効果は単純でアイテムボックス等から矢を弓に番えるだけのスキルだ。ただここで注目すべきは指定されている【矢】がカテゴリされたそれなのか、と言う点だ

 矢以外にも対象となる物。例えば剣、例えば爆弾入り小瓶、例えば西洋のお城によくある屋根の先端が尖った塔、例えば──


「大地を揺らすほどデカイ大剣とかなァ!」


 ポリゴンが集まってパニッシャーが構成され柄が引き絞った弦に番えられている。目論見の成功に高揚が止まらない。この結果が何を意味するかと言うと、使用者が【矢】と認識した全てが対象になるから何らかの方法で遥か上空に飛び爆弾を詰めまくった塔を射ち落とすということなどが出来るって訳だ!人間サイズの戦略兵器か?


「そこにもう一工夫、【エンチャント・バースト】!」


 これまた弓術Lv3スキルの一つ、エンチャントだ。このスキルは少し特殊で取得する際にエンチャント効果が決定されるという、つまりはガチャ。エンチャントガチャだ。Lv6以降の魔導スキルと同じ感じだな

 ちなみにバーストの効果は単純に威力上昇を付与するだけ


 後は弦を引っ張っている指を離せばシステム的に矢として扱われているパニッシャーは飛び出し、ゴーレムの防御体制を取った両腕すら粉砕しそのままの勢いで額の結晶諸とも頭を砕いた


「よし、ダンジョンボス撃破か」


 着地後、ボスのドロップ品を確認してから宝箱開封っと、ん?ドロップ品にスキルオーブがあるな。獲得スキルは【オーバーモードLv1】効果は現在HPの半分を削って二分間攻撃力・攻撃速度上昇、リキャストタイム五分。うーん、まあ悪くはないな。HP半分以下で効果が上昇するスキルとシナジーがあるが生憎と持ってないわけで。だがそれを差し引いても使えるスキルだな


 早速使って取得っと。早速使ってみるか


「【オーバーモード】」


 使用後軽く剣を振ってみる。ちょっと早くなったかな。次に弓にクイックチェンジして普通に矢を放つ。こっちも少し早くなったかな。スキルLvが上がれば効果も上昇するみたいだしこまめに使ってくか


 さて最後はパンドラの箱の如く希望と絶望が詰まっている宝箱開封タイムだ。いざやオープン


「【劣化竜血樹】×20か。これってあのゴーレムを構成してたやつか」


 【魔力視認】を起動して見てみると物凄い密度で魔力が流れているのが分かった。ビンゴ。素材名に【竜】とあるからもしかしたらと思ったが当たりみたいだな。大抵のファンタジー系では竜は強大な存在だからな、この世界も多分そうみたいだし


 これ使ったらすごい武器が作れるんだろうなあ

【吸血鬼の特性】強靭な肉体と凄まじい再生力によるゴリ押しを売りにしているが基本温厚な種族。四肢欠損程度は直ぐに再生するので継戦力が高い

 色々と相性の良い人物の血は最上級の味に感じるため婿・嫁探しに血を飲むのは吸血鬼族の中では一般的


【スキルオーブ】スキルが込められた神秘的な珠。道具屋で買うか推奨Lv40以上のダンジョンボスからのレアドロップで入手


【結晶】主に地下洞窟型ダンジョンの中層上部から発掘されるようになるアイテム。色々な効果を持つ結晶があるもののその効果の強さを決定する純度がランダムな為、発掘時はガチャの神にお祈りをしましょう


 例え剣だろうが塔だろうが矢と言えば矢なんですー!


 ちなみにオーバーモード・ギガントゴーレムの額の結晶に傷ができたら即座に行動停止し再生活動を開始するのでそれが終わるまでに新たに傷を入れることでハメ殺しが可能になります

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